次世代システムのグランドデザインはこれだ!

次世代システムのグランドデザインはこれだ! “Digital Disruption”時代の情報システム像とは

2015.07.13
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Digital Disruption(デジタルディスラプション)――日本では馴染みの薄い言葉ですが、米国では一般紙の見出しにもなる、ITのパワーを象徴するキーワードです。デジタル化の波がこれまでのビジネス秩序を覆し、破壊する(Disruption)ことを意味しています。そんなデジタルディスラプションが進行する時代において、企業が生き残り、勝つためには、やはりデジタル=ITを武器にするほかありません。
ではそのために企業は自らのIT、つまり情報システムを、どんなグランドデザインのもとでどう進化させるべきなのでしょうか。あるいはどんなIT基盤が求められるのでしょうか。
Fujitsu Forum2015では、本サイトの読者の皆さんにとって関心のある、そんなテーマを真正面から取り上げたパネルディスカッションが開かれました。
参加者は
アイ・ティ・アール 代表取締役 内山 悟志氏
東京海上日動システムズ 代表取締役社長 宇野 直樹氏
本田技研工業 IT本部IT戦略企画室 宮下 学氏
富士通 執行役員専務 インテグレーションサービス部門長 谷口 典彦氏
司会 インプレス IT Leaders編集主幹 田口 潤氏
の5名です。ここでは、その模様をお伝えします。

これからのITをひも解く3つの方向性と4つのトレンド

冒頭、企業情報システムを専門とするトップアナリストの一人である内山 悟志氏(ITR代表)が「今、企業ITは大きな転換期にあり、3つの方向性でイノベーションが起きている」と指摘し、デジタルディスラプションの現状と問題を提起しました。 3つの方向性とは「社会・産業のデジタル化」、「顧客との関係のデジタル化」、「組織運営・働き方のデジタル化」です。「これらのイノベーションに向けて、既存の企業ITをどう進化させていくのかが重要かつ喫緊の課題である」と内山氏は語ります。

さらに企業ITの進化のトレンドとして、内山氏は4つのキーワードを提示しました。一つ目はSoR(Systems of Record)とSoE(Systems of Engagement)を区別して情報化を進めること。SoRとは業務効率化や合理化を目指してきた既存の情報システム群、SoEは従来、不可能だったことを最新のITで可能にする新たな情報システム群を意味します。「SoRは主に社内向け。多少使いにくくても開発に時間をかけても、利用者が社員なので大きな問題はない。一方のSoEは外部とのつながりで成長し、拡大するシステム。利用者は消費者だったり、機械だったりするので、ともかくスピーディな対応が優先され、常に進化させる必要がある。特性が違うので開発や運用に違うアプローチが必要だ」(内山氏)。

残る3つのキーワードはいずれもSoEを意識したものであり、2つ目のキーワードはオープンイノベーション。自社技術だけでなく、他社や大学などが持つ技術やアイデアを組み合わせて、革新につなげることです。「変化の速い今は、自前主義では限界。周囲を巻き込んで変革につなげるのがベスト」と内山氏は語ります。3つ目はコ・クリエーション。内山氏は「お客様を商品開発やイノベーションに巻き込むことで、これまで以上にダイナミックな動きが可能になる。今後、顧客参加型のコ・クリエーションはますます増えていく」と指摘します。
最後の4つ目はAPIエコノミー。アプリケーションやサービスのAPIを公開し、他社がそのAPIを使って新たなサービスを提供することで、元のアプリケーションの価値を高めるような経済活動のことです。もちろん他社のAPIを利用して自社のサービスを構築することもあります。
これら4つのトレンドから、デジタルディスラプションが進む時代における企業情報システムのグランドデザイン、そのうちのSoEの要件が見えてきます。「事前の不確定要素が多い」、「要件は常に変化する」、「外部の知恵やリソースを活用する」そして「すべてを作り込まない」いうことです。「ビジネスの最前線では今後、この4つの要件に対応したシステムが増え、従来のシステムと両方を動かせるプラットフォームが必要になる」と内山氏は指摘しました。

デジタルイノベーションと企業ITの関係
図:デジタルイノベーションと企業ITの関係(出典:ITR Corporation)

すでに始まっているデジタルディスラプションへの対応

一方、もう一つのSoRはどうでしょう。東京海上日動システムズの宇野 直樹社長は「既存の情報システム群であるSoRも進化させなければならない」と語ります。ホストからクライアント・サーバーの時代までは、企業がIT活用の主体であったが、モバイル活用はお客様の方が進んでいる。この「企業からお客様へのパワーシフトにどう対応するのかが大きな課題」になっているからです。
この変化に対応するため、消費者主導の時代を見据えた新たな保険商品を他社に先駆けて投入しています。一例が2010年に発売した携帯電話から手軽に保険に入れる「ワンタイム保険」。2012年には、実家の車を一日乗るためなどに利用できるワンコイン(500円)の「ちょいのり保険」を発売しました。これらは保険商品の開発/販売、契約管理を行うSoRに分類されるシステムを進化させてきたからこそ実現できたものです。
同時にSoEに分類されるシステムにより、代理店とお客様向けに“次世代モデル”を提供していると言います。お客様向けには、お客様自身が操作するスマートフォンアプリ「モバイルエージェント」を開発。万一の事故の際にGPSで事故場所を特定し、迅速な対応ができるようにしました。代理店向けのタブレットシステム「TNetタブ」でSoRと連携させ、お客様と保険内容の契約内容を確認しながらその場で保険の申し込みが完了できます。ご加入一覧というアプリでは「他の保険を含めた全体像が一覧できるので、お客様の納得感は高い」(宇野氏)というメリットがあります。
お客様自身が使う次世代モデル
図:お客様が使う次世代モデル(出典:Tokio Marine & Nichido Systems Co.,Ltd)

宇野氏は、情報システムを進化させる際の技術的な課題として、開発と運用を分離しないインテグレーションが必要だと話し、「小さく始められるSOAやオープンソースを生かした設計が重要だ」と指摘しました。ITRの内山氏の話と一致している内容です。
続いて本田技研工業の宮下 学氏は、自動車メーカーにとってのITの意味をこう説明しました。「今までのITは企業活動を効率化するためのもの。これからはお客様個々の車の使い方や、要望・期待を把握するために IT を活用していくことも重要な役割になる」、「車は次のモデルが出るまで5年かかる。その間、基本的な使い勝手の機能は進化しない。アップデートも難しい。
しかし、お客様は進化を望んでいるし、継続的な満足を提供することは日々必要。ITを使って競争力を高めていくことに、トップを含めて危機感を持っている」。宮下氏は、ITで競争力を高める要件として3つを提示しました。事業部門の壁を超えた情報の共有と見える化、すべての製品が情報でつながる IoT の拡大とそれを支える IT インフラの整備、そしてお客様自身のプライバシー情報を担保しながら、お客様にとっての利用価値は何かを見極めることができる情報活用の仕組みです。「要件をクリアするために、企業風土の改革、業種を超えてコラボレーションできるサービスの進化、そしてプライバシー情報の運用管理レベルの統一化が必要になる」と宮下氏は語りました。SoE、特にIoTベースにして事業に貢献しようとする意思が伝わってきます。

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