本体50万円以上のプロ向け3Dプリンター、2020年に国内で2300台超が稼働

2016.08.30
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デジタル化によるビジネス変革を体現するハードウェアの1つが3Dプリンター。ドローンやロボット、コネクテッドカーなどと並び、技術開発が進んでおり、製造や医療の現場に大きな変革をもたらすとして日本でも大きく期待されています。実際、どれだけの3Dプリンターが日本で出荷されているのでしょうか。それに対する答えを調査会社のIDC Japanが2016年7月に発表しました。同社によれば、個人向け製品は一時の盛り上がりを過ぎて伸び悩む一方、高額な企業向け製品が拡大していくようです。

IDC Japanの調査では、3Dプリンターを本体価格によって、個人向け製品などを含む「デスクトップ」タイプと、企業ユースを想定した「プロフェッショナル」タイプとに大別しています。本体価格50万円未満が「デスクトップ」、50万円以上が「プロフェッショナル」です。プロフェッショナルタイプはさらに、本体価格3000万円未満を「スタンダード」、3000万円以上を「プロダクション」に分けています。

拡大が予測される企業ユースのプロフェッショナルタイプの出荷台数は、2020年に 2354台にまで増えそうです(図1)。この台数が十分に大きいのかどうかは分かりませんが、出荷台数は2015年に一度、1589台にまで落ち込んだものの、その後の年平均成長率は8.2%が見込まれています。造形材料の多種化が進み、3Dプリンターの適用範囲が広がることが、成長を後押しすると見られるためです。

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図1:日本における「プロフェッショナルタイプ(本体価格50万円以上)」の3Dプリンターの出荷台数(出所:IDC Japan)

一方で個人向けが主体のデスクトップタイプの3Dプリンターの出荷台数は、年平均10.2%のマイナス成長が見込まれます。2015年の出荷台数は企業ユースを大きく上回る6336台でしたが、2016年以降は微減を続け、2020年には3701台にまで落ち込むとみられています(図2)。

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図2:日本における「デスクトップタイプ(本体価格50万円未満)」の3Dプリンターの出荷台数(出所:IDC Japan)

デスクトップタイプの出荷台数が落ち込む理由をIDC Japanは、「2014年に注目を集め出荷台数が急増したものの、その後、造形物の限界が明らかになったことなどから、一般消費者の購買意欲が一気に低下したため」(3Dプリンターの動向を見ているイメージング、プリンティング&ドキュメントソリューションのアナリストである菊池 敦 氏)としています。

個人向けデスクトップ製品の出荷台数減少の影響は、3Dプリンターの販売総額、すなわち市場規模にも大きな影響を与えています。3Dプリンター全体の販売額は、2014年には前年の115億円から208億円と1.8倍にまで伸長したものの、翌2015年には前年比32.5%ダウンの141億円に留まっています。出荷台数でみれば、2013年が3861台、2014年は2.6倍の 9927台、2015年は20.2%ダウンの7925台です。

ただ今後は、上述したように高額なプロフェッショナルタイプの出荷増が見込まれるため、販売金額全体を押し上げ、2020年には200億円にまで増加すると予測されています(図3)。年平均成長率は7.3%です。

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図3:日本における3Dプリンターの販売額(出所:IDC Japan)

最近は日本でも、ものづくりのためのワークショップ拠点「ファブラボ」の開設が相次いでおり、3Dプリンターはファブラボの目玉ハードウェアの1つになっています。能力に限界がある個人向けの3Dプリンターを自前で購入するのではなく、ファブラボなどにある高性能な企業向け3Dプリンターを利用するという形態が、今後も広がっていくのかもしれません。

3Dプリンター本体の市場規模だけをみれば小さくみえるかもしれません。しかし3Dプリンティングを考えれば、印刷材料である造形材料や3Dプリンターの保守サービス、あるいは3Dプリンティングの受託サービスも、3Dプリンターの出荷増に伴い成長していくことになります。これらを加味した市場規模は2020年に700億円を超えると見られます(図4)。

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図4:周辺市場を加味した日本における3Dプリンティングの市場規模(出所:IDC Japan)

ここには含まれていませんが、3Dプリンターを利用するためのソフトウェアも見逃せません。無料のソフトウェアも出回っているももの、企業用途では、製造業向けのCAD(コンピューターによる設計)ソフトウェアやCG(コンピューターグラフィックス)ソフトウェアのベンダーなどが、3Dプリンターへの対応を進めています。IDC Japanの菊池氏も「3Dプリンターで造形物を作るためのデータを生成する3Dソフトウェアは今後、3Dプリンターの新たな市場として注視していく必要がある」としています。

企業における3Dプリンターの適用分野は、製造業における部品制作などが主流です。ですがIDC Japanの菊池氏は、「歯科の歯科技工物や医療分野の人工骨といった事例も増えてきている」と話しています。台数増が見込まれる企業向けの3Dプリンター。それらを導入する企業では、どんな対象物を3Dプリンターで印刷しようとしているのか興味は尽きません。

執筆者:杉田 悟(IT Leaders)

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