三井物産が出資したインド発のヘルスケアベンチャーGOQii、 運動の習慣化に工夫

2019.04.02
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高齢化が進む日本では、医療費の増加が国の財布を圧迫しています。その解消策として期待されるのが病気にならないようにするヘルスケアです。そうした中、三井物産が2018年11月、インドの医療ベンチャーであるGOQiiに出資しました。GOQiiは、どんなサービスを展開しているのでしょうか。

GOQiiのサービス内容や考え方について、同社のCEO(最高経営責任者)兼創業者のVishal Gondal(ビシャール・ゴンダル)氏が、「ウェアラブル + ゲーム + カルマ = Health 3.0」と題して講演しました(写真1)。2019年1月の『第5回ウェアラブルエキスポ』(主催:リードエグジビションジャパン)でのことです。同講演からGOQiiの取り組みを紹介します。


写真1:インド発ベンチャー企業、GOQiiのCEO(最高経営責任者)兼 創業者のVishal Gondal(ビシャール・ゴンダル)氏

薬に代わる予防医療の実現に取り組む

GOQiiが提供するのは、活動量を図るウェアラブルデバイス類と、そこから得られたデータを管理・分析するためのクラウドサービスです。CEOのGondal氏は、同社の目標を「予防医療だ」と宣言します。


写真2:GOQiiのウェアラブルデバイスとスマホ用アプリの例(同社ホームページより)

同氏によれば、「今の医療システムは課題を抱えている。健康ではなく病気をケアするシステムだからだ。加えて、データやソリューションが不足し、組織が縦割りになり、摩擦と利害の対立が起こっている。医療コストは、どの国でも膨らんでいるのが実状」です。

さらにGondal氏は、「医療業界は病気を治す医薬品を、すべて開発したいと考えていますが、それは無理です。本質的には、生活習慣を改める、つまり病気を予防するという観点が必要になる。それこそが、当社のウェアラブルとAI(人工知能)が創り出す未来だ」と強調します。

ただウェアラブルデバイスのベンダーなどが提供するスマートフォン用アプリケーションはいくつも提供されています。その中でGOQiiの特徴は、独自のポイント制度を持つことです。健康状態の向上が認められればポイントがもらえ、そのポイントを使えば提携サイトでプロテインやサプリメント、エクササイズツールなどを割安に購入できるのです。

「健康的な活動をすればポイントが得られ、それを使って、さらに健康を増進できる。『Beyond the Pill(医療品を超えて)』として、薬に代わるソリューションを提供することで、人々をより健康に、よりアクティブにできる」とGondal氏は話します。

Gondal氏は「ヘルスケアは医師や医薬品の問題ではない。モチベーションの問題だ」と続けます。「世界最大のヘルスケアアプリは『ポケモンGO』。他のすべての健康アプリよりも、ポケモンGOは人々を歩かせることに成功した。健康の動機付けにゲームの要素を取り入れば、『もっと野菜を食べよう』『もっと水を飲もう』といった行動の改善ができるはずだ」(同)というわけです。

そのうえでGOQiiのサービスでは、医療機関とも連携し、生活習慣をどう変えてけば良いのかを医者と直接に話し合える仕組みも用意しています。たとえば血糖値の測定器は、ヘルスコーチ、糖尿病のコーチ、そして医師とつながっていると言います。計測後すぐに判断を問うたり対策を聞いたりができるのです(動画1)。

動画1:コーチや医師と連携するGOQiiの紹介ビデオ(2分4秒)

将来的には、「ウェアラブルとインプラント(身体に埋め込むデバイス)を組み合わせることで、より多くのバイタルデータを把握できるようになる。今から5〜10年も経てば、血糖値から脂質、心電図的なデータまでが得られ、そのデータ量は1年缶に1人当たり1テラバイトほどになる」(Gondal氏)という。

ただ、それだけ大きな情報にねれば、個人では把握し切れませんし、医師も1人ひとりを確認できなくなります。そのため「ヘルスデータや医療データの多くがインターネット上を流れ、何千万人がヘルスデータでつながっていく。さまざまなデータや電子カルテなどが統合され、そこに保険も統合されていく」とGondal氏は予測します。

人の行動を変えられる仕組みが重要に

「Uber Technologiesが位置情報を利用しタクシー業界を変革したように、新しい情報の活用で医療やヘルスケアも変わっていく。予防と対策が組み合わさったヘルスケア制度が誕生するだろう。それこそがHealth 3.0、つまりスマートヘルスだ」というわけです。

日本市場に向けては、出資を受けた三井物産とともにサービス投入を計画している。Gondal氏は、「ゲーム好きな日本人には、当社のアプリもゲームの1つだと認識されるようになりたい。そのためのエコシステムを作っていく。すでに日本の保険会社とも話をしている」と明かします。

日本の高齢化社会に向けても、「日本は生活の質は高いが高齢化に伴う医療費の高額化が問題になっている。70歳・80歳になるのを待つのではなく、予防的なヘルスケアを30代・40代から始めるべきだ。そうしれば、より健康になり病院に行かなくてもよくなるだろう」と提案します。

症状が出てからの治療よりも、元気なうちから取り組める予防が国の財政負担を軽くすることは明らかです。ただ、予防を定着させるためには、ウェアラブルなどを仕組みも重要ですが、予防に向けて人の行動を“週間化”するためには、ゲームに見られるような心を動かす仕組みもまた重要な要素のようです。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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