恋愛相談の相手はAI?!、Q&AサイトがAIで恋愛相談に乗る理由

2016.12.06
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恋愛相談の相手といえば、気心の知れた友人や街頭の占い師、冊子やラジオの相談コーナーが一昔前の定番ですが、最近はネットのQ&Aサイトでの恋愛相談も増えています。さらに今ではAI(人工知能)が回答するQ&Aサイトも登場してきました。AIはブームですが、なぜ恋愛相談なのでしょうか。

尋ねたいことがある人が投稿した質問に対し回答が得られるQ&Aサイト。専門家が答えるサイトだけでなく、一般のサイト閲覧者が知識や経験を書き込むコミュニティ型のQ&Aサイトも人気です。最近ではブラウザーによるアクセスだけでなく、スマートフォンの専用アプリケーションから質問を投稿したり回答を閲覧したりが可能です。相談内容も多岐にわたりますが、恋愛相談も人気コーナーの1つです。

AIの回答が“ベストアンサー”に選ばれるケースも

その恋愛相談に新たな回答者が現れました。AI(人工知能)です。「Yahoo!知恵袋」は2016年8月に「これって付き合える? 脈ありチェッカーβ」(以下、脈ありチェッカー)と呼ぶサービスを開始しました(図1)。利用しているAIは、米IBMが提供するコグニティブコンピューティングサービスの「Watson」。2016年2月から取り組んでいるWatson活用に向けた実証の一環で、脈があるかないかについて、回答の確からしさを示す「確信度」とともに回答します。

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図1:「Yahoo!知恵袋」の「これって付き合える? 脈ありチェッカーβ」アプリのプロモーションページの例

教えてgoo!」も2016年9月から「オシエル」というAIが回答するサービスを開始しています(図2)。過去に投稿・回答されたQ&A情報から回答を用意するのは、脈ありチェッカーと同じですが、脈ありチェッカーが“脈アリ度”をパーセンテージで表示するのに対し、オシエルは教えてgoo!の一般的な回答スタイルである文章で回答を示してくれます。

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図2:「教えてgoo!」の「オシエル」のプロモーションページの例

例えば、2016年11月15日 19時37分に投稿された「好きな人に振り向いてもらいたいんですがどうすればいいですか?」という質問に対しては、「相手に直接聞いてみた方が良いと思います。・・・」という回答が一般の方からの回答と並んで表示されています(当該ページ)。

質問者の評価も高いようです。「3回ご飯に行った女性に告白しました。そしたら、「今はそうゆうのは休憩中だからごめんね」と言われました。再度告白するべきでしょうか。」と言う相談には、7つの回答が寄せられましたが、オシエルの回答が“ベストアンサー”に選ばれています(当該ページ)。2016年9月29日までにオシエルが出した713の回答のうち、好評価の「good」は255件(35%)、ベストアンサーも35件(6%)ありました。

Yahoo!知恵袋や教えてgoo!が、AIの適用対象に恋愛相談を選んだ理由はなんでしょうか。実際の質問と回答がサイトに公開されていることと、教えて!gooを運営するNTTレゾナントの担当者が2016年10月5日に東京・台場で開かれたイベントで概要を説明していることから、以下では教えて!gooのオシエルの場合を見てみましょう。

人による回答は答える側の行動時間や質に依存してしまう

まずNTTレゾナントが目指しているサービスは、人々の疑問をネットを通じて解決し次のアクションを起こす手助けをする行動支援にあります。検索エンジンの「goo」は、私たちが能動的に調べるための支援策、教えて!gooは受動的に“教えてもらう”ための支援策という位置付けです。

ただし、教えて!gooには人が回答するが故の課題があります。「いつ回答されるか分からない(即時性)」「必ず回答が得られるか分からない(回答率)」「最適な回答が得られるか分からない(満足度)」の3つです。回答の中身やタイミングが、答える側の行動時間や質に依存してしまうのです。これらの課題を解消するために、人に代わってAIによって回答する仕組みの検討が始まっているのです。

現状のオシエルは、相談の文脈を理解したら、過去のQ&Aのデータベースから「共感」「結論」「理由」の3要素と、「励まし」と「名言」のそれぞれについて、一定以上の評価を得ている回答から適切なもの抽出し、それらを組み合わせて「回答」としています(図3)。その回答に対する質問者や閲覧者からの評価を学習することで、より良い回答を作れるよう“成長”していきます。

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図3:「オシエル」の回答例。5つの要素の短文を組み合わせている(出所:NTTレゾナント)

この成長過程で重要になるのが大量のデータです。データが多いほど、学習の精度が高まるからです。実際、教えて!gooは全体で3000万件以上のQ&Aのデータを、恋愛関係だけで250万件のQ&Aのデータを保存しています。この点は、Yahoo!知恵袋の脈ありチェッカーも同様で、約450万件ある過去の質問への回答データを利用しています。

より自然な回答文を生成することも研究テーマ

もう1つ、話し言葉や書き言葉の自然言語を処理するための技術研究にも恋愛相談が適しているという面があります。例えば「富士山の高さは何メートルですか?」という質問に対する答えは「3776メートル」と1つに特定され、短文で単純な文章で十分です。これを専門用語では「Factoid QA」と呼びます。これに対し、恋愛相談における回答のように、回答が多様で文章も長文で複雑になるケースがあります。これを「Non-Factoid QA」と呼びます。AIを用いて、どれだけ最適なNon-Factoid QAの回答を生成できるかは、技術開発の大きなテーマなのです。

オシエルでは、過去の回答データベースから文脈を解析・抽出し、複数の回答から自然な回答を生成して新たな回答を作り出していると説明しました。この手法は、質問と回答のペアから優れているものを選び出す従来の手法より精度が高まると期待されています。世界初となる、この手法についてNTTレゾナントは特許を出願しています。

分析対象にできるデータは十分にあるか

恋愛相談におけるAIの活用で一定の評価を得ているオシエル。教えて!gooでは今後、次のような点にチャレンジしたいとしています。(1)短文の組み合わせのみではなく短文そのものの自動生成、(2)利用者の反響をAIへリアルタイムに反映させるアクティブラーニング、(3)回答文をより長く、よりきめ細やかにする長文化、(4)悩みを対話形式でヒアリングし回答の精度を高める対話化、(5)旅行やヘルスケア、育児など適用領域の拡大です。これらが実現できれば、回答は、より適切で、自然な表現になっていくことでしょう。

現在、様々な領域でAIの期待が高まっています。脈ありチェッカーやオシエルのケースは、膨大な過去のQ&A情報が分析対象として存在していたことが、実サービス化に幸いしたようです。逆に言えば、デジタルイノベーションにAIを適用する際には、分析対象となる満足な量のデータが存在するのか、あるいは、それをどうやって獲得していくのか。そうしたところから目をつけていくことが成功の鍵を握っているのかもしれません。

執筆者:廣田 佳祐(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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