女性向け普段着を月額制でレンタルするairCloset、データを武器にマッチング精度のさらなる向上に挑む

2018.04.26
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airCloset」は、プロのスタイリストが選んだ洋服が自宅に届くという月額制のレンタルサービス。その名前やサービス内容を聞いたことがある読者は少なくないでしょう。クリーニング不要で返却すれば次の洋服が届き、気に入れば購入もできます。同種のサービスでは国内最大級だとされるairClosetですが、その裏側ではどんなデジタル化を図っているのでしょうか。

多忙な女性への普段着のレンタルに特化

airClosetのサービスを提供するのは、同名のエアークローゼット。2014年7月に創業(当時の社名はノイエジーク)し、2015年2月にairClosetのサービスを開始しました。同社はミッションに、「発想とITで人々の日常に新しいワクワクを創造する」を掲げます。

同社のデジタル活用について、代表取締役社長 兼CEOの天沼 聡 氏自らが説明しました(写真1)。東京・目黒で開かれた「データマネジメント2018」(主催:日本データマネジメント・コンソーシアム)での講演が、それです。洋服のシェアリングビジネスを支えるデジタル化について、同氏の講演内容から紹介しましょう。


写真1:エアークローゼットの代表取締役社長 兼CEOの天沼 聡 氏

現在、airClosetで借りられるブランドは300種類にも上り、在籍スタイリストは150人を超えます。中には海外在住者のスタイリストもいるそうです。利用者数は15万人を超えており、「その70%以上は20代後半から40代前半。仕事を持つ人が90%以上、子供がいる人が40%以上」(天沼氏)といいます(動画1)。こうした数字からは、仕事と家庭の両立で多忙な女性から評価されていると言えそうです。

動画1:働く女性を意識した「airCloset」の紹介ビデオ(31秒)

着用後のフィードバックをサービスに活かす

プロのスタイリストが洋服を選ぶことを前面に押し出すairClosetですが、スタイリストの知見だけに頼っているわけではありません。「airClosetは、利用者と、スタイリスト、そして倉庫がデジタルにつながっている」と天沼氏は説明します。すべての洋服1点ごとにIDを振ることで、倉庫の在庫を含め、洋服の状況が常に把握できるようになっているのです。

さらに、利用者が着用した後のフィードバックを積極的に収集することで、サービスの向上を図っています。このフィードバックからは、「利用者の丈の好み、色合いの好といった傾向がつかめる」(天沼氏)と言います。フィードバックはデジタルとは限らず「洋服を受け取ったり返却したりの“コミュニケーション”があるため、スタイリストへの感謝の手紙といった形でも得られる」(天野氏)のだそうです。

これらのデータは経営情報として、同社が「カード」と呼ぶ単位にまとめ、社内の情報共有を積極的に進めています。それにより「資料作成の無駄を排除すると同時に、約80人いるチームメンバーにも仮説を立ててもらい、その仮説から、どう対応し作業すれば良いかを決めていくスタイルを徹底している」(天沼氏)と言います。同チームを天野氏は「「パーソナルスタイリングを届けることを世界で一番考えているチームだ」と高く評価しています。

カードは株主にも公開し、経営陣が株主に事業状況を説明するのに必要な時間乃短縮を図っています。気になる点があれば、遠慮なく聞きに来てもらうスタイルを採っているそうです。天沼氏は「経営者は事業に集中することが一番大切だ」強調します。

実は天沼氏は、IT業界の出身。そこからアパレル業界に参入しました。チームメンバーの3分の1もIT技術者が占めています。「顧客にサービス提供するためのシステムの改良は、1分、1秒でも早くリリースできたほうが良い」(天沼氏)との方針があるためです。アジャイル開発の手法を採り入れ、「ユーザー体験を重要視したシステムづくりを意識している」(同)と言います。

これまでの取り組みをプラットフォーム化し特許を取得

これまでのシステム開発の成果の1つが、2017年2月に特許を所得した「スタイリング提供システム」です。利用者の好みを分析し、その結果に基づいてプロのスタイリストがコーディネートを提案するまでの一連プロセスを処理する仕組みとして登録されました。

この仕組みをベースに、2017年10月には新サービス「pickss(ピックス)」を開始しました。購入を前提にスタイリストが選んだ洋服5着を自宅で試着し、気に入ったものだけを購入するというサービス。1着でも購入すれば、スタイリストによるスタイリング料2800円が無料になり、2着以上購入すれば代金が割引になります(動画2)。

動画2:洋服の販売を前提にした「pickss(ピックス)」の紹介ビデオ(34秒)

さらに他業種とのコラボレーションも積極的に展開しています。化粧品や飲料乃ほか、航空会社や旅行代理店などとも連携しています。たとえば、全日本空輸(ANA)とは、旅行先に合わせたコーディネートを提案するキャンペーンを展開。近畿日本ツーリストとは、社員旅行などの法人需要を対象に社員旅行用のコーディネートを提案するサービスを展開しています。

今後は、アクセサリーやバッグ、靴、帽子など洋服以外を取り扱い、対象も男性や子供、シニア層などに広げたい考えです(図1)。海外展開も視野に入ります。


図1:特許取得した「スタイリング提供システム」による事業展開の概念(プレスリリースより)

マッチング精度が高まれば環境にも経済にも影響は大

事業拡大のためにも、「マッチングの精度をさらに高めていきたい」と天沼氏は強調します。たとえば、「スタイリストのA群と利用者のB群のマッチング精度が高い、C群とD群のマッチング精度は低い、といった切り口でデータを確認できれば、利用者の属性を推定し、よりマッチング精度が高まるスタイリストを選定することが可能になる」(天沼氏)とみています。

さらに、「利用者個人の好みを縦串に、その時々の流行を横串にとらえれば、将来の生産に必要な情報として活用したい」(同)と言います。というのも、「洋服は年間、数十億着が生産され、その半数程が廃棄されている。マッチング精度を高め全体の生産数を減らせれば、環境にも経済にも与える影響は大きい」(同)ためです。

とはいえ天沼氏は「データを見ることが目的ではない」と断言します。「データは手段。洋服との“感動する出会い”を徹底して追求するという目的を見失ってはいけない」(同)と続けます。その背景には、「ネットなどを媒体にさまざまな情報があふれかえる今、自分の目だけで確かめてすべてを取捨選択してくのは不可能」と天沼氏は考えるからです。

デジタルの力の適用先を人々の暮らしや社会環境にまで視野を広げることは、自社のビジネスにおけるデジタルの活用方法も明確にするのかもしれません。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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