儲かるAPI、米Salesforceの収益の50%を生みだすAPIとは

2016.09.15
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近年、自社で保有するシステムやプログラム、あるいはデータなどを「API」として公開する企業が増えています。何と言ってもAPIは、企業にとって大きな収入源になるからです。例えば、CRM(顧客関係管理)のクラウドサービス最大手の米Salesforce.comは収益の50%をAPIによって生み出しています。さらには、オンライン旅行代理店の米Expediaのように90%の収益をAPIで得ている企業もあります。このAPIとは一体、どんな仕組みで、なぜ公開した企業に収益をもたらせるのでしょうか。

機能を呼び出すための方法を決めているAPI

APIは「アプリケーション・プログラミング・インタフェース:Application Programming Interface」の略です。基本ソフト(OS)やアプリケーションソフトウェア、あるいはWebアプリケーションなどが備える機能を外部のソフトウェアやWebサイトから簡単に利用できるようにするための方法を取り決めたものです。機能の呼び出すための手順や、それを記述する方法などを定めています。これにより、APIを公開している基本ソフトやアプリケーションなどが実際に、どのように動作しているのかを意識する必要がなくなります。

PC上で動作するアプリケーションソフトウェアを考えてみてください。PCというハードウェア自体は、同じCPUを搭載していても、その構成はメーカーによって異なります。しかし、基本ソフトのWindowsに対応しているアプリケーションは、どのメーカーが開発したPCであってもWindowsが搭載されていれば動作します。アプリケーションがWidowsのAPIを使って開発されているからです。これはスマートフォンのAndroidなどでも同じです。

さらに、APIを使えば、ソフトウェアの開発効率を高められます。アプリケーションソフトウェアやWebサイトは非常に大きなプログラムの塊ですから、すべてを1から開発するのは、とても大変です。ですが、既存のアプリケーションソフトウェアの機能がAPIとして公開されていれば、その機能を使って新しいソフトウェアを作れます(図1)。複数のAPIを活用すれば、既にあるソフトウェアの機能から“良いとこ取り”をすることも可能です。Webサイトの機能を提供するAPIは「Web API」とも呼びます。

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図1:APIを利用すれば、ソフトウェアやWebサイトの“よりとこ取り”をしたソフトウェア/サービスを開発できる

Windowsの例が示すように、API自体は決して新しい考え方ではありません。先のSalesforce.comは2000年前後からWeb APIを公開しています。同時期にWeb APIを公開した企業に米eBayがあります。同社は、インターネットオークションを世界で最初に始めた企業で、現在では世界最大規模を誇っています。そのeBayは収益の60%をAPI経由で生み出しています。ここ数年はさらに、APIの適用領域が従来にも増して広がり、APIを公開する企業が増えています(図2)。米経済誌フォーチュン誌の「Fortune 1000」に掲載されている企業のおよそ75%がAPIを公開しているとされています。

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図2:一般公開されているAPIの数(出所:米Nordicapis.com)

APIは重要な集客チャネルである

では、なぜ今、APIを公開する企業が増えているのでしょうか。その理由の1つが、B2B(企業間)のコラボレーション(連携)においても、インターネット上での取り組みが重要になってきていることです。そこでは、パートナー企業とデータやアプリケーションを安全かつ簡単に共有できる仕組みが必要になり、それを可能にするのがAPIなのです。IT関連の調査会社大手の米Gartnerは、B2Bコラボレーションの50%がAPI経由になってきていると予測しています。

例えば、ネットでの“つぶやき”として今やお馴染みの「Twitter」ですが、そこへのアクセス数の75%は、Twitterの公式アプリではなく、サードパーティーが開発したアプリケーションからだと言われています。TwitterのデータにアクセスするためのAPI経由での利用がほとんどだというわけです。つまり、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)やeコマース(電子商取引)などの運用元にすれば、APIは集客チャネルとして非常に重要な役割を果たしていることになります。

同様の狙いから、米配車サービス大手の米Uber Technologiesは2015年12月に、SNS大手の米Facebookが提供するメッセージングサービスである「Messenger」との連携を発表しています。MessengerはLineのような会話型のやり取りができるソフトウェアです。両社の連携により利用者は、Messengerの画面の中から、Uberの配車サービスを呼び出せるようになりました。MessengerのアプリケーションにUberのAPIを組み込んだのです。UberはMessengerの約7億人の利用者にサービスを提供できますし、FacebookにはMessengerのサービス強化につながるというメリットがあります。

API公開の差が企業の成長性に影響?!

このようにデジタルな世界での企業活動において重要な役割を果たすAPIですが、新興企業と老舗企業ではAPIの公開数に大きな差があります。2015年のデータですが、調査時点で米Amazon.comが公開していたAPIの数は329。これに対し、世界最大の家電量販店BestBuyの公開数は9つ、百貨店のsearsと小売りチェーンのTargetは3つ、百貨店のMacy’sと世界最大の小売業者であるWalmartは、いずれも1つしかAPIを公開していませんでした(図3)。一方で、売上高成長率では、Amazonの約20%に対し、Walmartは1.93%です。すべてがAPIによるとは言えませんが、顧客とのエンゲージメントという意味で、APIが企業の成長戦略に大きく影響していることは確かです。

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図3:老舗企業と新興企業ではAPIの公開数に大きな開きがある(出所:The Center for Global Enterprise、2015年9月、http://thecge.net/2015/09/)

APIの普及により、企業は今後、成長のためのプラットフォームのすべてを自前で用意する必要はなくなってきました。必要なデータの収集・分析も容易になっています。同時に、自社で構築したプラットフォームの機能は、APIとして公開することで、他社が持つ顧客との接点を広げることも可能です。APIは単にシステムの開発効率を高めるためのテクノロジーという領域を超え、事業戦略そのもと言えるまでになりました。より収益性の高いビジネスを素早く展開するためには、APIの活用と自社サービスのAPIの公開の両面を検討し推進することが不可欠でしょう。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、漆畑 慶将(OKメディア)

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