ブロックチェーンは金融のためだけではない、適用範囲の広さが注目集める

2016.07.26
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FinTechの中でも注目度が高いのが「ブロックチェーン」です。「改ざんが極めて困難」「実質ゼロ・ダウンタイム(システムが停止しない)」「システム構築が安価」という3つの要件を満たせる技術として期待が高まります。本サイトでも、ブロックチェーンがなぜ注目されているのかの理由を紹介しました(関連記事『“FinTechの次”の技術としての「ブロックチェーン」、注目理由を知るための4つのキーワード』。

ブロックチェーンは元々、仮想通貨の「Bitcoin(ピットコイン)」を実現している技術として世間の注目を集めました。そのため金融分野での応用が先行し、同分野での取り組みを伝えるニュースも多いため、金融に特化したインフラ技術であるというイメージが強いことは否定できません。しかし欧米では、金融分野だけでなく、むしろ金融分野以外での活用の可能性に対し注目が集まっています。

FinTech関連の調査や業界動向を伝える米Let’s Talk Payments(LTP)のまとめによれば、ブロックチェーンの適用範囲は多岐に渡っていることが分かります(図1)。そこには、デジタルコンテンツの管理や個人の認証、マーケットプレイスなどネット上での各種取引関連分野のほか、不動産やダイヤモンドの所有権管理といった分野での利用が始まっています。

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図1:ブロックチェーンの適用範囲が広がっている(出所:https://letstalkpayments.com/blockchain-use-cases-part-ii-non-financial-and-financial-use-cases/

こうした動きに気づかず、「ブロックチェーン=金融のための技術」だと考えていては、デジタルイノベーションの方向性を見誤ってしまうかもしれません。そうならないためにも、ブロックチェーンの非金融分野での利用例をいくつか紹介しましょう。

ケース1:太陽光パネルによる自家発電電力の直接売買

米ニューヨーク市のブルックリンでは、市民が自宅の屋根に設置した太陽光パネルで発電した電力を隣人と直接売買するための実証実験が行われています。「ブルックリン・マイクログリッド」と呼ばれる取り組みで、電力が誰から誰に、どれだけ供給されたかと言うトランザクション(取引)を記録するためにブロックチェーンの技術を利用しています(動画1)。エネルギーサービス会社のLO3 Energyと、交通システム特化のITサービス会社である米 Consensus Systems(ConSys)の合弁会社 Transactive Gridが開発しています。

動画1:「ブルックリン・マイクログリッド」の取り組みを紹介する動画

マイクログリッド(MicroGrid)は、電力を発電している家と電力を使いたい家とで直接に電力をやり取りするためのもの。一般には電力供給会社から家庭へ送電する一方通行とは異なり、少量の電力のやり取りが多数発生します。ここにブロックチェーンの基本的な構造であるP2P(ピアツーピア)の仕組みを適用することで、電力供給のトランザクションを記録するわけです。中央集権型のシステムで管理するよりも運営コストが大幅に安くなると期待されています。

ケース2:不動産や土地取引の記録

不動産や土地取引には高額な取引コストがかかっています。その要因の1つが、各種の権利の照合や確認です。台帳や権利証などが紙で保存され、ほとんどの作業を人手で処理しているだけに、コストが高いだけでなく、人為的なミスを犯す可能性も少なくありません。テレビドラマなどで見る土地の不正売買なども、こうした仕組みの欠点を利用したものだと言えるでしょう。

そこにブロックチェーンの技術を使えば、オリジナルなデータがどのように更新されたかの履歴が確実に残せるほか、その変更履歴は誰もが検証でき、誰も改ざんができません。人手による照合なども減らせるため、コストや人為的ミスを減らせるのです。こうした用途にブロックチェーン技術を適用しているのが米Factomです。オープンソースのソフトウェア「Factom」をベースに、用途別の基盤ソフトウェアを開発・提供しています(動画2)。中国各地で展開されているスマートシティプロジェクトにも採用されているそうです。

動画2:土地の権利証管理へのブロックチェーン技術適用のメリットを紹介するビデオ

ここで使われている仕組みは、出生や転居といった新規登録や変更などがたびたび発生する様々な権利の変更履歴の管理においても有効だと言われています。

ケース3:日本のガイアックスによる本人確認サービス

日本でも、ソーシャルメディア事業などを手がけるガイアックスが、ブロックチェーンを使った本人確認サービスの実証実験を始めています。シェアリングエコノミーといったC2C(個人間)の取引において、個人情報のような重要なデータの管理にブロックチェーンの技術を適用することで、より安全な管理と、より簡単に近い勝手を両立するのが目的です(図2)。

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図2:シェアリングエコノミーを支える本人確認にブロックチェーンの技術を適用する

タクシーの配車サービスの「Uber」や民泊サービスの「Airbnb」などで話題になっているシェアリングエコノミー。こうしたサービスを使う際に問題視されているのが、提供者や利用者が本当に、その人自身なのかといった本人確認です。それぞれが個人情報を明かしたり身分証を提示したりしているのが実状ですが、そのための確実な仕組みを構築することはサービス事業者にとっても負担ですし、そこで不備があれば、利用者の個人情報が悪用されるかもしれません。ガイアックスは、そこにブロックチェーンの技術を使った共通基盤を構築することで、双方の負担やリスクを軽減できるとしています。

いかがでしたしょうか?ここで紹介したのは、ブロックチェーンの技術を使った一部の試みに過ぎません。実証実験の段階のものも少なくありませんが、これまでの常識を覆すほどに十分な可能性を秘めていることは、ご理解いただけたのではないでしょうか。ブロックチェーンが世界で注目を集めているのは、金融分野への影響が大きいからだけではないのです。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、高橋 ちさ(ジャーナリスト)

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