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“DIY女子”を応援するシェアオフィス、雑貨問屋などが並ぶ東京・浅草橋に誕生

2016.10.11
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部屋の模様替えや、ちょっとした小物を自作する「DIY(Do It Yourself)女子」が増えています。そうした中、東京・浅草橋に先頃、DIY女子の“ものづくり”を支援する空間が誕生しました。ビルのワンフロアーをリノベーションした「EDITORY浅草橋」がそれです。プラント向け工具などを取り扱う千葉産業(千葉県市原市)がDIY女子向けに立ち上げたCANDIY事業部が、コンセプト作りから参画。女性目線での“メイカーズ・ムーブメント”を後押ししたい考えです。

雑貨問屋街の特性を生かしたシェアオフィスに

EDITORY浅草橋は、JR浅草橋駅東口から徒歩1分の少し年季の入ったテナントビルの1フロアをリノベーションしたシェアオフィス。フロアの広さは150平方メートルで、その一角に、のこぎりや電気工具、配管パーツ、ペンキなどのほか、ミシンや衣類を着せるトルソー(胴体部分のみのマネキン)が置かれています(写真1)。他には、作品を展示できる共有スペースを設けているほか、撮影のための部屋や会議室も用意されています。

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写真1:EDITORY浅草橋のオープンスペース

シェアオフィスの運営主体は不動産事業を手がける安富(東京都千代田区)。1924年(大正3年)に内装業として創業した老舗です。2013年4月には、東京千代田区の“本の街”神保町でシェアオフィス「EDITORY神保町」をオープンしています。安富が手がけるシェアオフィスは、「単なるリノベーションにとどまらず、地域の特性を活かして、何か新しいことを始められる環境を作る」(安富の久保 彩さん)のがモットー。そのためEDITORY神保町は、編集者やライターが集う空間として設計されています。

では、EDITORY浅草橋は、どんな空間に設計されているのでしょうか。ここ浅草橋は、デジタルとアニメのメッカ、東京・秋葉原から東に一駅のところ。ですが、こちらは文具や雑貨、人形などの卸売店が軒を連ねる問屋街です。総合プロデューサーの笹野 美紀恵さんは「周辺には、革のハギレや紐、ボタンなど服飾に使う各種パーツ、ビーズなどのアクセサリーパーツなどを扱う店が所狭しと並んでおり、ハンドメイド好きな人なら一度は訪れるという街。EDITORY浅草橋は、そんな地域特性を生かした“ものづくり”のためのシェアオフィスです」と説明します(動画)。

動画:コンセプト立案者が自ら説明する「EDITORY浅草橋」の紹介

B2BからB2Cへのビジネス拡大策としてのDIY女子事業

そんなEDITORY浅草橋のコンセプト立案から参画したのが、荒尾美穂子さんらが率いる千葉産業のCANDIY(キャンディー)事業部。CANDIYは「can(できる)」と「DIY」をつなげた造語です。荒尾さんと総合プロデューサーの笹野さんは、2人がラジオ番組のレポーターをしていたときからの知り合い。そして笹野さんは、荒尾さんがものづくりが好きなことを知っていました。荒尾さんがCANDIYで掲げた「都会に住む大人な女性が一人でもできるDIY」というコンセプトが、浅草橋に立ち上げるシェアオフィスのためのコンセプトと合致したことからEDITORY浅草橋が誕生したのです。

CANDIY事業を展開する千葉産業は、千葉県市原市に多数ある工業プラントに、機械工具や溶接材料、配管材料などを販売するB2B(企業間)が中心の会社。同社も約50年の歴史があります。B2Bの工具/材料分野でもECサイトによるオンライン取引が増えてきたこともあり、B2C(企業対個人)に向けた事業としてCANDIY事業部を立ち上げました。B2C事業のために荒尾さんたちをリクルートしたところ、荒尾さん達の発想から女性のDIYにターゲットを絞り込んだと言います。

2016年3月に立ち上げたWebサイト「CANDIY」では、女性が扱いやすい商品をセレクトしたり企画したりして販売するほか、DIYの手順を説明するレシピを発信しています。公開しているレシピはすべて、荒尾さんたち女性スタッフが製作したものです。荒尾さんは「都会に暮らしている女性がチャレンジしやすいファッショナブルなDIYにこだわる」と意気込みます。最近は女性を狙った工具なども発売されていますが、荒尾さんによれば、「女性=ピンクという発想からか蛍光色のピンクを使った製品が増えていますが、DIY女子が“かわいい”と思う感覚とは異なっている」ことも少なくないようです。

女性スタッフだけでプロジェクトを推進

EDITORY浅草橋のもう1つの特徴は、総合プロデューサーはもちろん、設計士や店舗デザイナーなど、コンセプトの立案から運営までのプロジェクトが女性チームで進められていたこと。結果として、できあがった空間も女性ならではの、おしゃれで温かみのある空間に仕上がっています。EDITORY浅草橋の完成と同時に、CANDIY事業部もここにオフィスを移転しました。

また一般にシェアオフィスは、オフィスをシェアしている人たちだけが共有する空間ですが、ここEDITORY浅草橋では、多くの人と人とが交流できるようオープンスペースが設けられています。そこには、カフェラウンジ「CANDIY CAFE」が併設されており、CANDIY事業部のスタッフでコーヒーにも造詣が深い箱崎 菜海さんが、ハンドドリップのコーヒーも淹れてくれるそうです。

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写真2:オープンスペースに設けられた「CANDIY CAFE」

CANDIYとしては、このオープンスペースを活用し「週末などに定期的にDIYイベントを開催する予定です。CANDIYで扱っている製品の使い勝手を紹介するだけでなく、ものづくりに関心がある女性のコミュニティを充実させたい」(荒尾さん)考え。その延長として「ここを活用するクリエイターと“共創”により、新たなレシピが生まれるはず。そうした活動を通して、ものづくりを盛り上げたい」と荒尾さんは意気込みを語ります。

千葉産業はさらに、CANDIYとEDITORY浅草橋での経験を基に2016年9月からリノベーション事業に進出し、新事業部「CaeteQ(かえテク)」を立ち上げ、専用サイト「CaeteQ」を開設しました。こちらも、建築士やデザイナーなど全スタッフが女性で、顧客が持つ「空間の困りごと」を“女性ならでは”の視点で解決するといいます。その過程では、もちろんCANDIYとも連携を図る計画です。

セレクトショップ的な“ものづくり”のための場の可能性

個人やベンチャー企業がものづくりに参入する「メイカーズ・ムーブメント」は、3Dプリンターといった技術の発展や、クラウドファンディング(Crowd Funding)といった資金調達手法の広がりにより、新たな産業革命を起こすための起爆剤としての期待が高まり、大手企業の参入も始まっています。例えば富士通が米TechShopと戦略的パートナーシップを結んで東京・港区に開設した「TechShop Tokyo」もその1つ(関連記事)。1500平方メートルのワークスペースには、高価な3Dプリンターをはじめ、金属加工から溶接、木工、電気製作、裁縫、カラーリングなど本格的な工作機械が設置されています。

TechShop Tokyoと比べれば、EDITORY浅草橋は小さな空間ですが、TechShop Tokyoがものづくりのあらゆる分野を対象にしているのに対し、EDITORY浅草橋は、ここまで紹介してきたように、女性の住空間に対象を絞り込んでいます。いわゆる“セレクトショップ”的な位置付けです。こうした形でメイカーズ・ムーブメントを後押しするのであれば、その主体は大企業に限られるわけではありません。街の特徴を生かしながら“ものづくり”や“空間作り”に取り組むEDITORY浅草橋から、どんな成果が誕生してくるのか楽しみです。

執筆者:中村 仁美(フリーランスライター)

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