炭素繊維で高強度な耐熱品を造形するMarkforged、知っておきたい3Dプリンターの最新動向

2016.12.01
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工業製品に利用される高強度かつ軽量の素材といえば、なんと言っても炭素繊維でしょう。比重が1.8前後と、鉄の比重7.8の4分の1以下。アルミの2.7やガラス繊維の2.5よりも軽いのです。逆に強度は引張強度を比重で割った「比強度」が鉄の約10倍、引張弾性率を比重で割った「比弾性率」が鉄の約7倍もあります。そんな炭素繊維の利点を生かし、様々な物体を製造する時の材料に使えないか−−。このテーマに挑戦しているベンチャー企業が米国にあります。

炭素繊維(カーボンファイバー)には、上記の軽量かつ強靱なことに加え、金属のように疲労がない、錆びない、化学的・熱的に安定しているといった特性もあります。半面、加工やリサイクルが難しく、物理的性質が方向によって異なる「異方性」があるといった使いにくさもあります。そのため現時点の用途は、航空機のボディや翼、高性能車の外板パネル、ゴルフクラブのシャフトなどがメインです。

こうした欠点を解消しつつ、炭素繊維の利点を“ものづくり”に生かそうとしているのが、2013年に設立された米Markforgedという3Dプリンターの専門企業です。2015年に1号機の「Mark One」を発表。2016年には速度を改善し、使える素材も増やした主力機種の「Mark Two」と、より大きなものを造形できる「Mark X」をリリースしました。

Mark Twoの大きさ(幅×奥行き×高さ)が320mm × 132mm × 154mmで、レイヤー解像度は0.1mm。Mark Xは大きさが330mm×250mm×200mm、レイヤー解像度は0.05mmになります。いずれも、炭素繊維以外にケブラー繊維や耐熱ガラス繊維、ナイロンなどを素材に使用できるという特徴は同じです。強度が求められる機械部品や治具、工具などを生産できます(動画)。

動画:ドローンの本体を3Dプリンターで製造。軽量で強靱という炭素繊維の特徴を生かせる

Mark TwoにせよMark Xにせよ、見た目は他の3Dプリンターと似ています(写真1)。X軸とY軸方向に自在に動くヘッドがあり、Z軸は印刷物を置く板が上下する構造です。ユニークなのはヘッド部に素材を供給する管が2本あること。上側の太い方が樹脂、下側が炭素繊維です。写真2のような部材を作る場合、炭素繊維を長方向に往復させながら、樹脂で固定していくことで造形します。“3本の矢”の例えにもあるように、繊維は1本1本が脆くても何本も束ねることで強度を上げるわけです。

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写真2:Mark Twoのヘッド回り。2本のチューブで素材を供給する

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写真3:スパナのような工具を製造する用途に向く

「メカニカルな仕組み自体、特許を多数取得している」(同社のMichael Caineエンジニアリング担当ディレクタ)のですが、実のところMarkforgedの優れた点は、設計ソフトウェアの「Eiger」にあると考えられます。「ブラウザベースで提供されるEigerは、3Dのデザインから繊維の配置パターンを最適化し、(材料の)無駄な使用を減らしながら最大の強度を生み出す」(同社)といいます(写真3)。つまりEigerは、炭素繊維をどの方向に、どのように積層プリントすればいいかを設計できるのです。

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写真3:設計ソフトウェア「Eiger」では、工具を透視するかのように見ながら炭素繊維の配置を設計できる

Markforgedの実績ですが、「販売台数は数千台としか言えないが、まだ小さな会社ということもあり急成長している。2015年の成長は150%だったが、2016年は、それを上回るだろう」(同社のDan Monetteチャネル販売担当ディレクタ)といいます。3Dプリンターの動向はもちろんですが、Markforgedの動きにも要注目と言えそうです。

ちなみにMark Twoには、使える高強度の素材(Onyx、HSHT Fiberglass、Kevlar)や使えるノズルによって、Standard、Professional、Enterpriseの3種類があります。価格は、それぞれ5499ドル、8799ドル、1万3499ドル。すべて炭素繊維を使えます。日本ではミルトス(東京都千代田区)が代理店となり展開していくようです。

執筆者:田口 潤(IT Leaders)

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