多様化するカーシェアリングサービス、乗りたいときに乗りたいだけ使いたい

2018.01.11
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自動運転に並び、自動車メーカー各社が研究に力を入れているのがカーシェアリングです。クルマを移動手段という“サービス”としての提供を模索しているからです。日本でもいくつかの実証実験が進められています(関連記事)。ですが欧米では以前から取り組みが始まり、すでに長い歴史をもっています。独立系や自動車メーカー傘下の企業、自動車メーカーと提携した企業などプレーヤーもさまざまです。いかでは、さまざまなカーシェアリングを整理し、特徴的なサービスを紹介しましょう。

カーシェアリングは決して新しい利用形態ではありません。レンタカーがその代表例で、旅先で移動や引っ越しなどで利用した読者も多いはずです。現在、試行錯誤が続くカーシェアリングは、このレンタカーの仕組みで不便な点を解消し、より「利用したいときに利用できる」サービスの実現を目指しているともいえます。その点で、カーシェアリングを分類する際の最大の視点は、「クルマをどこで受け取れ、どこで返せるか」にあります。

レンタカーに近い受け取りと返却場所が固定のカーシェアリング

カーシェアリングの最も基本的なサービスは、クルマを受け取る場所と返却場所が特定の場所に固定されているものです。海外では「Stationed car Sharing (駐車型カーシェアリング)」や「Round-trip Car Sharing(往復型カーシェアリング)」などと呼ばれています。

 受け取り/返却の場所は、大きく次の3つに分けられます。

①レンタカー事業者の駐車場

レンタカー事業者が、自社のスペースをそのまま利用して、より柔軟なサービスを提供しようとするケースです。レンタカー大手の米Hertzが提供する「Hertz ULTIMATE CHOICE」が、その1例です。メンバー登録していれば、空港などの駐車場で好きな車を選んで利用できます(動画1)。

動画1:「Hertz ULTIMATE CHOICE」の紹介ビデオ(15秒)

②一般の駐車場

路上の有料駐車スペースや、商業施設の駐車場などでクルマを貸し出すサービスです。クルマのロックを専用のICカードやスマートフォン用アプリなどを使って解除する仕組みなどにより、クルマの貸し出しを管理するスタイルです。米Zipcarが代表例です(動画2)。Zipcarは、駐車スペースを持つ企業などと契約し、そのスペースを自社専用として提供してもいます。

動画2:「Zipcar」の紹介ビデオ(2分22秒)

③個人の駐車場

個人が自分のクルマを貸し出すサービスです。配車サービス「Uber」のドライバーなし版、あるいは民泊サービス「Airbnb」の自家用車版と言えるかもしれません。代表例である米Turoのサービスでは、クルマの所有者が貸し出せるクルマの車種や、貸し出し料金、貸し出せる期間などを登録し、利用したい人とのマッチングを図ります(動画3)。場合によっては、駐車場だけでなく、待ち合わせ場所での貸し借りも可能です。

動画3:「Turo」の利用方法の紹介ビデオ(2分)

乗り捨てを可能にする受け取りと返却場所が自由なカーシェアリング

クルマを借りる場所と返す場所が固定され、かつ同じ場所に返すサービスは、クルマの利用方法によっては自由度が制限されます。レンタカーでも借りたところとは別の営業所などに返せるオプションサービスがありますが、この仕組みを標準的なサービスにしたのが、場所に縛られないカーシェアリングです。「Free floating car sharing(自由回遊型カーシェアリング)」あるいは「One-way car sharing(ワンウェイ型カーシェアリング)」と呼ばれます。

Free Floating型カーシェアの先鞭を付けたのは、ドイツのダイムラー(メルセデスベンツ)が2008年に開始した「Car2Go」です。独BMWも同様のサービス「Drivenow」を2011年に開始しています。いずれも、都市圏の公共駐車場などに車両を配置しておき、利用者が最寄りのクルマを探し、使い終わったら近くの公共駐車場などに乗り捨てられます(動画4)。

動画4:「Drivenow」の利用方法の紹介ビデオ(57秒)

乗り捨てたクルマは原則、回収されることなく、その場に停めたままになります。そのクルマの近くにいる次の利用者が利用するわけです。ただ、利用状況によっては一定地区に偏ることも起こるので、その場合はクルマの再配置が必要になることもあります。クルマを自由に停められるエリアを、Car2Goは「Home Area」、Drivenowは「Business Area」と呼んでいます。

場所を固定しないサービスでは、利用できるクルマがどこに止まっているかを地図上に示す機能が用意されています(図1)。利用料金は時間単位で課金されるのが一般的です。Car2Goの場合は分単位です。時間単位の使用料はレンタカーなどより高めですが、そこには保険料やガソリン代も含まれています。


図1:Car2Goの「Home Area」で利用可能なクルマを示す地図の例

予約した車を届けてくれるカーシェアリングサービスも

このようにカーシェアリングは、貸し借りする場所の自由度を高める方向で発展してきましたが、いずれも「クルマのある場所を利用者が探して、そこに移動する」という点では同じです。この点を解消しようするカーシェアリングが2014年創業の米skurt が提供するサービスです。利用者が指定した場所にクルマが届きます。

利用者は、Skurtのスマホ用アプリを使って、クルマを予約します。その際に指定した時間と場所に、Skurtの担当者がクルマを届けます。使い終わったら乗り捨ててしまえば良く、クルマはSkurtの担当者が回収します。この仕組みを機能させるためにSkurtは、ドライバーではなくクルマを届けたり回収したりする担当者を募集しています。

同様のサービスは日本でも提供されています。DeNAが2015年に開始した「Anyca」です。ただAnycaの場合は、クルマの所有者と利用者のマッチングがメインで、受け渡し場所を決めて双方が、そこの集まる形です(動画5)。クルマを届けたり回収したりするのは基本的にクルマの所有者であり、Skurtのような配送・回収の担当者は存在しません。むしろ個人の駐車場で貸し借りするTuroのようなカーシェアリングに近い形態かもしれません。

動画5:「Anyca」の自動車オーナーに向けた紹介ビデオ(1分33秒)

カーシェアリングのサービスを分類しながらみてきましたが、クルマの利用方法はさまざまです。利用者によっては、同じ場所に返すほうが便利なこともあれば、本当に必要な時に必要な区間だけ利用できるほうが便利なこともあるでしょう。飛行機や鉄道など、他の交通機関との併用を考えれば、また違った利用形態があるかもしれません。シェアリングの概念そのものが広がっているだけにカーシェアリングにおいても、新たなサービス形態が登場するのではないでしょうか。

執筆者:丁晟彦(Digital Innovation Lab)、志度 昌宏(DIGITAL X)

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