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第2回  IoTがもたらすビジネス変革 アイデアとスピードが勝負を決める

2015.11.18
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業界のリーダー企業や専門特化したベンチャーによるIoT/M2Mへの取り組みが活発化しており、事業や業種の垣根を越えて多くの企業に影響を及ぼしつつある。

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)という言葉が専門誌だけではなく、一般の新聞でも頻繁に取り上げられるようになった。具体的には何を指すのだろうか。公的な定義は現時点では存在しないが、ITRでは「機械やモノに取り付けられたセンサーなどのデバイスが、インターネットなどのネットワークを通じて通信を行うテクノロジや概念」と定義している。ここから明らかなように、通信媒体は必ずしもインターネットである必要はない。またモノとモノが通信することを「M2M(Machine to Machine)」と呼ぶが、IoTはM2Mを内包する概念である。

そうはいっても、個々の機器が独立して動作するだけでなく、何らかの形で相互通信を行うことはいまに始まった話ではない。なぜことさら今、IoTと言われるのか?そこには理由がある。従来はEthernetをはじめとする有線通信を前提としていたため、接続範囲は工場や倉庫や店舗の内側といった狭い空間に限られていた。

ところがセンサーなどをインターネットにつなげる技術やWi-Fiをはじめとする無線通信が一般化し、離れた場所にある機器同士の通信が可能になって状況は一変した。インターネットと無線通信を使えば、さほど費用をかけずに遠隔地を走行する自動車の位置や燃費などを把握できる。一方、機械同士の通信に、人間との通信も加わるようになった。この通信形態を「M2P(Machine to Person)」と呼ぶが、様々なモノ、ヒト、コトを連携することが可能になったのだ。これは従来の閉じられた空間での機器接続とは、まったく次元が異なるものと言っていいだろう。

拡がるIoTの適用分野

第1回のコラムでデジタルイノベーションを解説した。IoTが企業のそれを加速させる重要なエンジンであることは論を要しない。IoTと親和性が高いのは機械や機器が必須の製造業、運輸業、エネルギー・公共分野などと言われるが、すでに医療・ヘルスケア、流通・小売業、農業、保険業など多くの業種に広がりつつある(図1)。RFIDと呼ばれる無線タグ、遠隔制御可能なビデオカメラ、スマホに内蔵される加速度センサーを上手く活用すれば、これらの業種でも従来は不可能だったことが可能になるからだ。

例えば設備保全や物流管理に適用すれば、資産効率の向上や業務効率の改善がもたらされる。IoTで収集したデータとアプリ/サービス構築を通じて、新規ビジネスを開発することも可能となる。気象データの定点観測に基づく農業向け保険サービスは、その一例である。このように企業にとってIoTは、既存/新規のビジネスを支える「道具」としての価値を持っている。

ITR図1
図1.IoTの適用分野(出典:ITR)

ビジネスに貢献するIoT先進事例

ここでIoTを活用した先進事例をいくつか紹介したい。全米で約7100店舗のスーパーマーケットを展開するFamily Dollar Store社は、店舗に据え付けたカメラからの動画で顧客の動きを収集し、また商品陳列棚に設置したセンサーにより商品の動きを逐次収集した。これにより、棚割の最適化が可能となり、売上増、購買率向上、顧客の店舗滞在時間増加につながったと報告している。

国内企業におけるIoTの活用で最も有名な事例の1つは、コマツの「KOMTRAX」である。同社はGPSやセンサーを搭載した建設機械を世界で約30万台稼働させており、このすべてを機械稼働管理システム「KOMTRAX」で管理している。GPSにより、すべての機械の位置を把握することで、以前は頻発していた建設機械の盗難を激減させ、盗難保険も安くすることに成功した。同時に稼働状態や燃料レベル、稼働時間なども詳細に管理する。これにより、効率的な利用手法を顧客に指導したり、機械が故障する前に部品を交換する予防保全を可能とし、顧客満足度を高めた。さらに、IoTによって蓄積された大量のデータを分析し、利用者や販売代理店に提供することで新たな付加価値を創出している。

米国ラスベガスにある「Aria Hotel Resort and Casino」ホテルもユニークな取り組みで知られる。約4500ある客室にそれぞれ10個以上のIoTデバイス(ドアロック、照明、窓の陽よけ、エアコン、テレビ、ラジオ付き時計、リモコンなど)を設置していることだ。これによって、例えば宿泊客がテレビ画面で希望の設定を選択するだけで、照明やエアコン、カーテン開閉などの自動制御ができる仕組みになっている。

IoTが加速するデジタルイノベーション

とはいえ、実際にインターネットにつながっているモノはまだまだ少ない。つまりIoTの取り組みはまだ始まったばかりだ。その分、アイデア次第でどの企業にも有望な機会がある。例えば自社ビジネスプロセスの成熟度向上や顧客サービスの充実のためにIoTを考える場合は、IoTでより多くのフレッシュな「事実データ」を収集し、「データに基づく経営」に邁進すべきである。ビッグデータ、BIなどデータを分析する手法の性能は飛躍的に向上し、必要なコストは大きく低下している。このような時代にあっては、「事実データ」をより多く持っている企業が勝ち残っていく可能性が高い。

一方、IoTによりイノベーションを創出しようと考えている企業の場合は、「これまで不可能と考えられていたビジネス」や「いままで誰も気がつかなかったビジネス」に果敢に挑戦することが重要なポイントとなる。リスクのある試みを行うためには、クラウド・コンピューティングとの組み合わせが最適だ。ユニークなIoTを駆使したビジネスを検討する場合、構成するテクノロジや製品/サービスを、自社で準備する必要はまったくない。現在、ほとんどのコンポーネントやサービスは外部企業から短納期で調達可能である。IoTを活用したビジネスは「アイデア」と「スピード」が肝であり、「スモールスタート」でいち早く始めることがポイントである。

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