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第7回 先行例に学び、事業を創出しよう

2016.02.15
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インターネットやデジタル技術を活用した新規のデジタルビジネスを創出することに商機を見出す--あらゆる企業に今、求められることだが、既存事業で成功を収めてきた大企業においては大きな困難を伴う。過去の成功体験や既存の事業が新たな取り組みを阻害するからだ。そこで今回は、この問題を乗り越え、デジタルビジネスを創出するアプローチを考察する。

デジタルビジネスを創出するといっても、何から始めていいか雲をつかむような話と感じるのが率直なところだろう。既存の大企業が、自らのビジネスを破壊しかねないUber(自動車配車サービス)やAirbnb(民泊仲介サービス)のようなデジタルビジネスを考え出すことは誰にもできることではない。ではどうすればいいか。

前回は、つながりに着目したビジネスの先行例からデジタルビジネス創出のヒントになり得る基本パターンを紹介し、システム面の必要条件を解説した。今回はそれを一歩深めてビジネスモデル・パターンを網羅的に整理し、事例を研究することから着想を得るアプローチを紹介する。

デジタルビジネスをパターンによって分類する

まずはビジネスモデルのパターンによるデジタルビジネスの分類を見てみよう(図1)。まず、データに着目したビジネスモデルには、連続的データの活用、コンテンツのデジタル化および無形価値のデジタル化の3つに分類され、小分類では7つのモデルが存在する。また前回も述べたつながりに着目したビジネスモデルには、サービスの連携・横展開と情報仲介の2つに分類される7つのモデルがある。

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図1.ビジネスモデルのパターン(出典:ITR)

ここで示した14の小分類から成るビジネスモデルは普遍的なものではない。1年もすればここに追加しなければならない新しいビジネスモデルがいくつか生まれている可能性は高い。そうであっても、まずは14のモデルを参考にそれぞれの事例を研究し、ヒントとしてアイデア創出に着手することを推奨したい。

例えば、前述のUberやAirbnbは、自動車や部屋という有形価値を共有し、利用者が必要な時に利用できるようにすることから、シェアリング・エコノミーの代表事例である。多数の金融機関の口座と連携し、資産管理や家計簿サービスを提供するマネーフォワードは、アカウントアグリゲーションと呼ばれるビジネスモデルあり、アグリゲーション・サービスに分類される事例ということがわかる。

とはいえ、あるビジネス事例が14のうちのどれか1つのビジネスモデルに当てはまるとは限らず、複数のビジネスモデルの組み合わせである場合も多い。

組み合わせによって新たなビジネスモデルを生み出す

ビジネスモデルの分類と異なる視点の分類として、マネタイズ(収益化)モデルがある。具体的には定額制、従量制、フリーミアムを含む提供価値課金モデルと、アフィリエイトを含む広告モデルの大きく2つに分類される。フリーミアムは、「フリー」(無料)と「プレミアム」(特別割増)というビジネスモデルの2つの面を組み合わせた造語であり、基本的なサービスや製品は無料で提供し、さらに高度な機能や特別な便益を対しては料金を課金する。
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図2.収益モデルのパターン(出典:ITR)

フリーミアムの無償提供には、期間制限、機能制限、容量制限などのパターンがある。期間制限の場合、無料であるため気軽に日常的に利用し、慣れ親しんだ頃に期間切れとなり、継続して使いたいことから有償版に誘導される。BOXやiCloudのようなデジタルコンテンツ活用基盤では、一定容量までが無償で提供されるが、利用者が文書や写真・映像などのファイルを続々と保管し、他に移動することが困難と思われる容量に達したところで有償版への移行が促される。フリーミアムの無償・有償の制限の設計は、このようなスイッチング・コスト(現在使っている製品やサービスを別の代替財に乗り換える際にかかる手間を含む総コスト)を考慮することが重要となる。

実際のビジネスは、前述のビジネスモデルのパターンとマネタイズモデルを掛け合わせただけの種類になる。しかも日々、変化させる必要もある。例えばApple社が2015年6月に始めた定額制音楽配信サービス「Apple Music」は、従来のダウンロードによる従量制課金を定額制に変えたという点で新たな要素が加わっている。さらに、ユーザーごとにパーソナライズして再生する「For You」機能、アーティストとファンが交流する場としての「Apple Music Connect」機能、音楽エディターやDJなどが選別したプレイリストなどを具備しており、ソーシャルやキュレーターズ・セレクションといった要素も組み込まれている。このように、既存の価値を組み合せることで新たなビジネスモデルが創出されることも珍しくない。

1939年に大学院の講義で紹介され、1965年に初版が刊行された半世紀の歴史を持つ不朽の名著である「アイデアのつくり方」で、著者のジェームス・W・ヤング氏は「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と述べている。そして、「新しい組み合わせを作り出す才能は事物の関連性を見つけ出す才能に依存する」と付け加えている。まずは、さまざまなパターンのビジネスモデルの事例を、見て、試して、そして、そこから新しい組み合わせを見つけ出すことから始めてみるべきだろう。

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