PLY、HAB -YUに見る「共創の場」 本音の議論、斬新な発想に工夫凝らす

2017.08.16
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会議室での議論では、自由な発想が生まれにくい──。こう言うと「そんなことはない」という反発があるかもしれない。でも想像して頂きたい。役職や経歴で座る場所が決まっている、議論に使うのはたいていホワイトボードだけ、飲み物を取りに行くのも自由にはならない…。会議室は情報の伝達や共有には適していても、発想の場ではないことは明らかだ。これは日本に限った話ではなく、事実、北欧では”フューチャーセンター”が生まれた。自由闊達な議論や斬新な発想を促すには、まず環境から変えることが大切という発想である。

何よりも、議論したりアイデアを生み出したりする方法は多種多彩だ。上下関係のない議論、グループによるブレスト、輪になってのアイデア出し、付箋紙による意見の可視化、模型を使っての表現、演劇形式の発表…役に立つものは何であれ、できるだけ取り入れる。すると空間=場を工夫するのは必然になる。富士通では、そんな場をいくつか作ってきた。

FUJITSU Knowledge Integration Base PLY(PLY)、HAB-YU platform(HAB-YU)、TechShop、みなとみらいイノベーション&フューチャーセンター、CO☆PIT、FUJITSU Digital Transformation Centerである。さらに2017年4月には、富士通九州システムサービスがQubeを福岡市の本社に開設した。ここではPLYとHAB-YUを中心に紹介する。

想像力を刺激することを目指したPLY

富士通のエンジニアが集積する東京・大田区にあるソリューション・スクエア。その一角に2016年5月に開設したのがPLY(プライ)だ(写真1)。PLYには【撚り合わせる、積み重ねる】という意味がある。はじめは点でしかなかった人やナレッジが、共感や体験を通して線でつながり、意思や情熱から発する創造性により、線が面に、面が立体へと形づくられていく──そんな想いが込められている。


写真1:(1)FUJITSU Knowledge Integration Base PLYの全景と(2)利用シーン。(3)異形のテーブルが特徴的だ。(4)一角には工作室(FAB Space)もある

エンジニアや来訪者をあの手この手で刺激し、何かを生み出せるオープンな場として設計した。一例が、様々な形状での組合せができるように異なる角度を持たせた台形テーブル。参加者同士の距離を近づけたり、作業スペースを広くとったりできる。仕切り板も含めてすべて可動式にし、講師の位置、参加者の配置を自由にした。

椅子は硬めにした。「ゆったりしたソファがいい」という意見もあったが、どんどん動いていろんな人と会話するには、座り心地は良すぎない方がいい。それが効果を生むとは限らないが、固定的な配置に比べれば、ポテンシャルは上がるはずだし、実際、これまでの参加者からも「今まで体験したことのない集まりだった」といった評価を得ている。他社からの見学も多い。

PLYには「FAB Space」と呼ぶ空間を作り、3Dプリンタやレーザースキャナ、レーザーカッターなどを設置した。東京・六本木にある本格的な施設「TechShop」には及びもつかないが、ちょっとした工作やプロトタイプなら可能だ。ドローンやロボットも、使ったことがない人たちに体感してもらうために置いている。 PLYは2016年度のグッドデザイン賞を受賞した。「共創の場は数多く作られているが、場を作ることが目的となってしまうことも多い。(PLYの)価値は、既に数多くのハッカソンやアイデアソンが実施され、オープンなコミュニティが育ちつつあるなか、その活動を加速させるために自ら場を作った点にある」(審査委員)と評価して頂いた。

デザイン思考の場、HAB-YU

PLYに先立つこと2 年、デザインの専門家集団である富士通デザインが「HAB-YU」を2014年9月にオープンした(写真2)。見た目の美しさはもちろん、デザインを突き詰めるにふさわしい空間を追求した。ネーミングは、人(Human)、地域(Area)、企業(Business)を「結う(YU)」からきている。


写真2:(1)HAB-YUの全景と(2)利用シーン。(3)(4)デスクは自在に組み合わせできるよう工夫した

デザイナーが運営する共創の場であり、6人を1テーブルとする6テーブルによるワークショップや、最大60名程度のイベントやセッションを行える。什器を組み替えれば展示スペースになる。

メインの用途はワークショップ。そのためにテーブルの天板は、ペンで自由に書いたり消したりできる。周囲の壁もすべて黒板であり、思いついたらすぐ描いたり張ったりできる。テーブルの脚部は高さを変えられるようボックスを用い、チェアは軽量で積み上げが簡単だ。付箋紙や筆記具などを収納したツールボックスも当然ある。開設から2年以上が経ち、不自由なくワークショップを実施できる環境を整えている。HAB-YUがあるビルの運営会社(森ビル)や地域と連携し、フィールドワークやテストなども行っている。

執筆者:日高 豪一(富士通 サービステクノロジー本部 先端技術統括部 マネージャー)
平野 隆(富士通 マーケティング戦略本部 ブランド・デザイン戦略統括部 エクスペリエンスデザイン部 部長)
高嶋 大介(富士通 マーケティング戦略本部 ブランド・デザイン戦略統括部 エクスペリエンスデザイン部)

この記事は、IT Leaders特別編集版『Knowledge Integration in Action 2017 in Summer』からの抜粋です。

トップ写真:Ilyabolotov/Getty Images

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