センサーからIoTプラットフォームまで 富士通のIoTにおける取り組みの全貌

2017.08.31
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企業は今、IoTにどう取り組んでいるのか?それを示す材料の1つが、2016年1月以降に富士通が実施してきた新規案件を分類した図1である。情報収集段階(どう取り組むべきかを理解するために情報を集めている段階)は10%に留まった。2015年の同じ分類では50%以上だったことを考えると、急ピッチで企業の取り組みが進んでいることが浮かび上がる。


図1:IoT活用用途分類

しかし先は長い。IoTに関するデジタルジャーニーの道程を、4ステージに分けて図2に示した。図1から推察できるように、現時点ではStage1に留まる企業が多いのだ。理由は大きく3つあると考える。(1)投資対効果が明らかではない、(2)Stage2以降となると取り組み方法が見えにくい、(3)これまでの業務で得たノウハウをデジタル技術を活用して新しい知見に進化させることに慣れていない企業が多い、である。多くの場合、製品を担当する事業部門とITを担当するIT部門が密に連携する関係にないことも、理由の1つかも知れない。


図2:IoTの4つのステージ

富士通は共創のためのサービス体系を通じて、企業がStageの歩みを進めるのをサポートする。その一助として、ここではIoTに関して富士通が蓄積する知見やノウハウの一端を解説したい。

IoTシステムの構成

まずはIoTシステムの全体像から(図3)。構成要素は非常に広範囲にわたる。大きな構成要素だけでもセンサーデバイス、ネットワーク、クラウドがある。見過ごされがちだが、我々の経験上、既存・基幹システムとの接続・連携は非常に重要である。例えばウェアラブルデバイスを使ってバイタルデータと運動量をセンシングし、作業の状況を管理するアプリケーションを作る場合は、人事管理システムのデータを連携させないと業務が成り立たない。セキュリティも含めてCIO/情報システム部門が積極的に取り組み、関与する必要がある理由である。以下ではセンサーデバイス、ネットワーク、IoTプラットフォーム(データ活用基盤)の3分野に焦点を当てる。


図3:IoTシステムを構成する要素

センサーデバイス

IoTに取り組むに当たって、まず検討課題になることの一つが必要なデータを収集するためのセンサーデバイスである。現在、多種多様のものが存在し、しかも日進月歩で進化している(表1)。大きさや消費電力、耐久性など考慮するべきことも多く、その動向を把握することは容易ではないが、富士通では研究所を中心にセンサーをカテゴライズし、仕様、原理、想定される用途を継続的に調査している。


表1:センサー種類別用途(表中、背景色が緑色のものは主にセンサー単体で、青色のものは主にスマートデバイスに組み込まれて動作)

採用を検討するにあたり、計測対象や精度、形状、価格、環境条件、寿命などの仕様を考慮することは当然だが、それだけではない。センサーの設置方法、各センサーの接続方法も重要になる。1つのセンサーデータだけで有意な情報が得られる場合は多くなく、通常は複数のセンサーデータを組み合わせないと事象を判別できない。となればセンサーデータを処理しやすい形に変換するアルゴリズムも必要になる。人の動きに関わる例を挙げると、人が自分の意思で横になったのか、何かしらのアクシデントが起きて倒れたのかを複数のセンサーデータから判断し、検知する。この種のアルゴリズムは想定以上に手間と時間がかかるため、富士通では携帯電話やスマートデバイスに内蔵されているセンサーデータの分析ノウハウを集大成したアルゴリズム「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」を提供している。

デバイス・ネットワーク

IoTではデバイスを結ぶネットワークも重要である。有線接続もあるが、ここでは無線技術を中心に説明しよう。なおデバイスとセンター側を直接つなげるケースより、デバイスの通信を親機で集約して中継する形が現実には多いので、ここではデバイス─親機を想定する。まず工場の機器監視などのゲートウェイ、自動車や建機などへの車載器といった、いわゆる”リッチデバイス”の通信は双方向かつ通信量が多く、一般に携帯電話ネットワークであるLTE/3Gが適合する。

これに対しデバイスの設置条件が厳しく簡素にしなければならない場合、LTE/3Gは消費電力の面でもコストの面でもオーバースペックになる。この厳しい条件こそがIoT技術の主戦場の1つであり、多様な無線技術が登場している。特に注目するべきはLPWA(Low Power、Wide Area)と呼ばれる、IoTに適した新しい通信技術である。その名の通り消費電力量が非常に少なく、通信エリアも広い特徴がある。

LPWAの代表格であるSIGFOXの伝送速度はわずか100bpsと極めて低速だが、通信距離は見通しの良いところでは50kmと非常に広く、消費電力も少ない。例えば水道、ガスといった公共料金メーターは電源設備がなく、ネットワークで接続する際の課題となっていたが、バッテリの寿命が数年から10年以上と言われるLPWAであれば対応できる。

では各種あるLPWAから何を選択すればいいのか。結論を言えば一長一短であり、無線LANのWi-Fiのようなデファクトが存在するわけではない。したがって当面は用途を睨んで方式を選択する必要がある。富士通でも常に技術動向をウォッチし、また実際の適用現場での検証や富士通のクラウドサービスとの接続検証を行っている。

IoTプラットフォーム

次にIoTプラットフォームについて説明する。従来のシステムは用途や利用者、プロセスなどが規定されているため、プラットフォームに対する要件は明確に決めやすかった。これに対しIoTシステムは人、モノ、環境などの状態をデジタル化するため、要件を定義することは難しく、むしろ要件変更が前提になる。

データ種別やデータ量の変化も考慮する必要がある。当初は装置の死活監視を遠隔から行う目的でIoTシステムを構築した場合を想定しよう。正常時のデータは間隔を空けて取得すればいいが、故障の兆候が表れたら密に取得する必要が出てくる。監視対象の装置やセンサーの種類は日々変化するので、デバイスの種類やデータの規模や種類、さらに分析ツールも変わる。今後はIoTデータを1つの部門や企業が分析するだけでなく、複数の部門やサプライチェーンを構成する複数の企業がデータを共有することも進むと予想される。セキュリティも含めて適切なデータマネジメントが必要になる。これらがIoTプラットフォームを必要とする理由である(図4)。


図4:IoTプラットフォームの必要性

その代表的な機能としては(1)IoTデバイス管理、(2)IoTデータ活用基盤、(3)IoTアプリ・分析基盤の3つがある。(1)に関してはセンサーやIoTデバイスにディペンドされているものが多く、(3)はIoTに限定せず、幅広い用途で利用できるデータ分析や可視化ツールが商品化されている。すなわち(1)、(3)は要件に応じて、最適なものを選択する方法が適している。

一方、(2)のIoTデータ活用基盤は共通的なプラットフォームとして利用することが望ましい。要件が変化しても、このデータ活用基盤の機能は普遍的であるからだ。実際IoTデータ活用基盤については、2015年あたりからIBMやAmazon、Microsoftがクラウドでサービスを提供し、富士通もFUJITSU Cloud Service K5 IoT Platformを2015年にリリースしている。

IoTデータ活用基盤が備えるべき機能としては、(1)IoT向けの標準プロトコルHTTP(REST)/SやMQTT/Sのサポート、(2)データ蓄積のためのNoSQLDB機能、(3)バイナリデータの蓄積、参照機能、(4)データ利用のための設定が行えるサービスポータル/管理系APIの提供、が挙げられる。

少し補足すると(1)に関してはプロトコルに依存しない共通データモデルを利用できることがポイントである。例えばセンサーデバイスからのデータをMQTTで受信し、アプリケーションからはRESTを使ってアクセスする。(2)はビジネス進展にあわせて多様なセンサー情報を後から追加・変更できるようにNo-SQLが適しており、またJSON形式のメッセージを読み取り、クエリーやイベント処理をサポートする、(3)はセンサーデータ、画像データなどのバイナリデータを蓄積、参照するニーズに対応するために必須である。

K5 IoT Platform

K5 IoT Platformは、上記4つの標準的な機能に加えて、いくつかの追加機能を用意している。1つはデータを蓄積する単位であるリソースごとに、アクセスコントロールが可能なこと。複数の組織や企業間でセキュアなデータ共有を実現する。また1つのリソースに対し複数のルールを設定可能にし、自由度を高めた。例えばあるデバイスのデータを蓄積しているリソースに対し、ある部門は読み書きが可能で、ある部門は読み込みといったルールが設定できる。

ここで製造業やITベンダー中心に構成するIVI(Industrial Value Chain Initiative)という、もの作り改革を志向する団体の活動に触れたい。富士通はIVIのワーキンググループ活動として企業間連携の実証プロジェクトに参画し、サプライチェーンを構成する企業の生産情報を共有し、急な計画変更やトラブルにタイムリーに対応できるシステムを構築した。この時、データアクセスコントロールによってスムースなデータ共有を実現したのだ。第2の追加機能は、センサーデータの処理をエッジとクラウド間で動的に負荷分散するDRC(Dynamic Resource Controller)である。富士通では、通常時からすべてのデータをクラウドに送信して処理することはネットワークやクラウドのリソースを大量に必要とするので費用面から効果的ではないと考えている。一方で異常を検知した場合には、すべてのデータをクラウドに送り、詳細分析する必要がある。状況に応じて(設定に合わせて)、データ処理を動的に割り振るわけである。

このケースではデータがエッジ側とクラウド側に分散されるため、データの格納位置を管理することも重要である。DRCでは分散データ管理機能を有することにより、エッジ、クラウドそれぞれのデータ格納位置情報を登録し、必要に応じてエッジ側、クラウド側のアプリケーションからの問い合わせに応じて、データ格納位置を伝え、必要なデータを収集できる。DRCを適用した大規模IoTシステム向けテストベッドが情報通信研究機構(NICT)の「IoTテストベッド事業及び地域データセンター事業に係る助成交付対象事業」に採択され、広域での分散コンピューティング管理と分散データ管理機能を無償提供している。現在、東京大学や北海道大学の協力を得て自動車関連の実証を進めている。

Industrial Internet Consortiumにおける活動

いうまでもないが、富士通は一般企業や他のITベンダーとの連携によるエコシステム形成も重要視している。その1つの表れが、2014年3月にGEやIntel、Cisco、IBM、AT&Tなどが設立したコンソーシアム「IIC(Industrial Internet Consortium)」である。富士通も設立時から参画し、ステアリングコミッティのメンバーになっている(日本企業としては富士通のみ)。

IICは標準化ではなく、実質標準を目指すと明言している。オープンな技術に基づく共通アーキテクチャ「IIRA:Industrial Internet Reference Architecture」を策定し、それを実証するためのテストベッドを共同で作り上げ、IICがそれを承認する。2017年1月現在、IICの加盟企業は270社を超えているから、承認を得たテストベッドは実質標準に近づくわけだ。

富士通の取り組みに触れると、セキュリティ・ワーキンググループの共同リーダーを務め、関連文書の執筆を担当した。また富士通アイ・ネットワークシステムズ山梨工場において製造ラインの可視化に取り組んだプロジェクトを、Cisco社と共同でテストベッドとして応募。2015年に承認されている。IIRAではIoTシステムをEdge、Platform、Enterpriseの3つのTierに分け、それぞれのTierで有することが望ましい機能、Tier間のインタフェース機能を示しているが、それを製造現場にあてはめたシステムを富士通が検討し、山梨工場に適用したものである。

以上、IoTのステージやセンサーデバイス、ネットワーク、IoTデータ活用基盤の各技術、IICへの参画について述べてきた。企業が厳しいビジネス環境で勝ち残るには、上位のIoTステージへの移行がキーポイントの1つになる。その歩みをサポートするため、富士通はIoTに関わるR&Dを一層、強化していく。

執筆者:須賀 高明(富士通 ネットワークサービス事業本部 IoTビジネス推進室 室長)

この記事は、IT Leaders特別編集版『Knowledge Integration in Action 2017 in Summer』からの抜粋です。

トップ写真:a-image/Getty Images

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