デジタルジャーニーを歩む羅針盤 「共創のためのサービス体系」のすべて

2017.08.02
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先の読めない”VUCA”ワールド時代へ突入──。最近、よく聞くフレーズの1つである。VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字。ある種の秩序があり、安定していた社会のあり様が、不確実で不透明な方向に変わったことを示す。

しかし多くの企業にとって、これは難題である。デジタルジャーニーの旅路をどのように歩めばいいのか、そもそも何から着手すればいいのかが、分かりにくいことがその1つ。先人(先進企業)が歩んだ道を踏襲するわけにはいかない。常に後塵を拝することになり、デジタルの世界ではそれは負け組になることを意味するからだ。必ずしも本業とは関係しないデジタル技術にどう取り組むかという問題もある。やはり優秀で信頼できるパートナーを獲得することが不可欠だろう。

OODAを範にする共創のためのサービス体系

富士通は2年前に「Knowledge Integration(KI)」という概念を提唱した。ユーザー企業の内外にある知恵/知見を結集してビジネスイノベーションを実現することを、富士通の目標とすることをうたった宣言である。そして2016年5月、KIを進化させた「Knowledge Integration in Action」および「共創のためのサービス体系」を発表した。ユーザー企業のパートナーとして事業革新や事業創出を共同で行うべく、そのアプローチをまとめている。

それからの1年、富士通は共創のためのサービス体系をさらに具体化し、実践的なものにするべく試行錯誤を重ねてきた。比喩的に言えば「デジタルジャーニーを歩むためのガイドブックが必要である」という仮説のもと、何から着手し、どうイノベーションの種を発見し、どう育てるのかを、実行可能なレベルに具体化したものだ。それが本連載で解説している、新しい「共創のためのサービス体系」である。したがって決して特殊でも突飛なものでもなく、むしろオーソドックスである。

体系のベースとしたのは「OODAループ」だ(図1)。これは時々刻々と状況が変わる中で最善手を打つための、意思決定に関するプロセスを示した理論である。一橋大学の野中郁次郎名誉教授が論文「知識機動力経営」で取り上げ、最近ではサイバーセキュリティ領域でも参照されるようになって高い関心を集めている。


図1:OODAループの流れ。図はジョン・ボイド氏による機動戦理論の「OODAループ」

ご存じかもしれないが、簡単に説明すると、まずObserve(監視)し、それをもとにOrient(情勢判断)とDecide(意思決定)を行い、Act(行動)に移す。これら4つをできるだけ迅速に、時には同時並行でこなすのが骨子だ。PDCA(計画、実行、チェック、アクション)と比較すると、Observeを最優先する点が異なる。ビジネス環境が目まぐるしく変化する中で変化に対応し、また先回りするために、この理論が適切であることは明らかだろう。

我々富士通も2013年頃からOODAループに着目し、議論を重ねてきた。デジタルジャーニーのガイドのベースに、OODAループを据えるのも自然に辿り着いた。結果、「共創のためのサービス体系」は、

 1.新しいデジタル技術の動向や先進事例などに関する情報をできるだけ広く深く収集する
 2.それを元に事業革新や事業創出のアイデアを検討する
 3.アイデアを迅速に、試行錯誤的に実行する

の3フェーズから成り、それぞれに必要な事項や手法を集大成している。OODAと同じく、この3フェーズは順番ではなく、同時並行的で順番も入れ替わったり飛ばしたりするものであることを付記しておく。

共創を実践する3つのフェーズ

もう少し具体的に説明しよう。図2に共創の取り組みの全体像を示した。最初の「情報収集・問題発見」フェーズでは、デジタルジャーニーを進むためのテーマを決めるため、できるだけ幅広く、深く情報や知見を収集する。世界に拠点を展開し、人的なネットワークを有するグローバル企業である利点を活かし、それを共に実施するのが富士通の役割である。具体的には海外視察の実施や専門技術者やリサーチャによる調査などを通して、先進事例やデジタル技術動向の収集を支援する。


図2:共創の取り組み全体像

繰り返しになるが、不十分な情報を元に何らかの新たな取り組みをするのは、無駄やリスクが多い。どんな技術のR&Dが進み、何が可能になるのか、どんな企業が何を変革しようとしているのか、各国政府の施策やレギュレーションはどうか、など、最新かつ具体的な情報に基づかないと成功はおぼつかない。このフェーズはとても重要だと考えている。

「アイデア創出」フェーズでは、集めた情報や自社を取り巻く客観状況などを元に定めたテーマから、何を行うべきかという具体的なアイデアを生み出す。これはOODAループにおける情勢判断と意思決定に該当する。その手法は古くはKJ法、最近ではフューチャーセンターやデザイン思考など実に様々あるが、共創のためのサービス体系では「アイデアソン」を基軸に置く。富士通はアイデアソン(ハッカソン)に関して多くの実績/経験を積んでおり、それを通じて様々なステークホルダーを巻き込む点で非常に有益な手法であることを確認しているからだ。

最後の「サービスの実装」フェーズでは、必要なアプリケーションを開発して実際に試してみる。OODAループにおける行動に該当し、PoC(Proof of Concept=新しい技術や概念の実証)/PoB(Proof of Business=事業の実証)を通じて、実現性を検証する。

このフェーズの鍵を握るのは、最新のソフトウェア開発プロセスやクラウド上の開発・実行環境である。率直に言ってこれらについて富士通が後発であることは認識しており、それゆえ富士通のクラウド環境に固執する考えはない。AWS、Azure、あるいはIBM Bluemixも必要に応じて使っていく。ただし日本のクラウド環境であるMetaArc(K5)はやはり必要であり、その強化・拡充を着実に進めていることもお伝えしておきたい。

加えてデジタルトランスフォーメーションが成果を上げる段階では、新システム/サービスと、既存システムとの連携が必須になる。この点に関しては高い優位性を持つと自負している。本連載の他の記事で、これらのフェーズにおける具体的な取り組みを解説していく。

執筆者:長田 豊(富士通 ビジネスマネジメント本部 事業推進統括部 戦略企画部 マネージャー )
吉田 年邦(富士通 ビジネスマネジメント本部 事業推進統括部 戦略企画部)

この記事は、IT Leaders特別編集版『Knowledge Integration in Action 2017 in Summer』からの抜粋です。

トップ写真:Creativeye99/Getty Images

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