調達力の向上からDBAまで ジャーニーの前に準備すべきこと

2017.09.14
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デジタルジャーニー(デジタルエンタープライズへの旅路)に踏み出した企業はどれほどいるのだろうか?図1に米IDCが世界の大手企業317社について、デジタル化の進捗状況を調査した結果を示した(調査時期は2015年3月)。


図1:米IDCによるデジタルトランスフォーメーションの実践状況。調査時期は2015年3月、対象は世界の大手企業317社の事業部門責任者

多くを占めるのは、断片的あるいはアドホックにデジタルを使った製品、サービスを提供しているが方向性は定まっていない「Digital Explorer」、および企業レベルでデジタルを生かした製品やサービスを提供しているものの、何かを破壊的に変革しているとはいえない「Digital Player」である。道半ばであるにせよ65%が旅路に踏み出しているのだ。

逆に、ほとんど何も行っていない「Digital Resister」は14%と、意外に少数である。この調査から2年が経過した今は、さらに進んでいる可能性が高い。事実、行数の都合で詳細には触れられないが、IDCジャパンが従業員1000人以上の日本企業533社を対象に2017年1月に実施した同種の調査では、より進んだ姿を明らかにしている。

米IDCが推奨する「旅の準備」欠かせない6項目とは何か?

しかしデジタルジャーニーは、ともかく歩みを進めればいいわけではない。多かれ少なかれ何らかの変革を伴う以上、よほどの幸運に恵まれる場合を除き、困難が多いのは間違いない。したがって事前準備は不可欠である。図1の調査を指揮した米IDCのロバート・パーカー氏(グループ副社長)も、こう指摘する。「デジタルジャーニーに乗り出さなければならないCIOの皆さんには、6つのことを勧めたい」。

その6つを示したのが図2である。スケーラブルなIT基盤の構築やセキュリティポリシーの統制など、いずれも当然というか、納得感があるものだ。このうち「調達力を中核能力に据える」は、説明が必要かも知れない。「企業はベンチャーを含めて多くのベンダーと付き合う必要があり、その関係は運命を共にするパートナーにならなければならない」(パーカー氏)。そうである以上、調達力=ベンダーの能力や技術力、パフォーマンスを正しく評価できる知見、をコアの能力とする必要があるというのだ。この点を含めて6つの指摘は、IT部門に変革を迫るものである。


図2:デジタルジャーニーに乗り出す前に行うべき6項目

米ガートナーはデジタルビジネス・アーキテクチャ(DBA)を提唱

6項目を実現すれば準備万端かというと、そうではない。デジタルジャーニーでは「小さな失敗を繰り返すことが成功への早道(=Fail Fast)」と言われる。しかし何らかの仮説やガイドラインがないと、失敗かどうかを判断できないし、失敗した時に戻る場所も分からない。

そこで米ガートナーのリサーチ担当副社長であるマーカス・ブロシュ氏は「デジタルビジネス・アーキテクチャ(DBA)」の策定を推奨する。「DBAを作らずに何かを進めるのは、都市計画なしにビルを建てるようなもの。効率が悪いし、最悪、スラム街ができてしまう」(ブロシュ氏)。

同氏によるとDBAは、(1)ビジョンと戦略、(2)ケイパビリティ、(3)タッチポイント、(4)コンポーネントブロック、(5)インフラストラクチャの5要素で構成する(図3)。例えばビジョンと戦略はA)経営目標であるゴール、B)それに到達するための戦略的アクション、C)求められるビジネス成果、それにD)機会と脅威(自社の強み弱み)からなる。これらを企業個々の状況に合わせて具体化し、可視化せよ、というのである。


図3:米ガートナーが提唱する「デジタルビジネス・アーキテクチャ(DBA)」の要素

抽象的でいささか分かりにくいが、2000年代に一世を風靡した「エンタープライズアーキテクチャ(EA)」で言われたビジネス、データ、アプリケーション、テクノロジーという4レイヤーを大幅に拡張したものと捉えると、DBAをイメージしやすいかも知れない。「企業によって記述内容の深さに違いはあるが、米GE(General Electric)やDHL、Goldman Sachs、ニューヨークのAcme BankなどがDBAを策定し、拡充もしている」(ブロシュ氏)。

Technology Platformの整備が必要に

同氏はもう一つ、テクノロジーレイヤーの図を教えてくれた(図4)。DBAの5要素のうち、(4)コンポーネントブロックと(5)インフラストラクチャに焦点を当てたもので、エンゲージメントする対象ごとに4つのPlatform(システム群)がある。1)バックオフィスなど既存のシステム群であるInformation Systems Platform、2)顧客向けのWeb サイトやSNSのCustomer Experience Platform、3)物理的な資産やモノを対象にしたIoTPlatform、そして4)API連携で外部の企業やマーケットプレイスとつながるEcosystems Platformである。

すべてのPlatformの共通要素として、中央に5)Data and Analytics Platformが位置することに注意が必要だ。物理的な実装をどうするかは別にして、論理的にはデータや情報の一元化が求められることを示している。この点はIDCのパーカー氏による指摘、「3.洞察(Insight)をサポートするためのリソース」と通底するだろう。既存システム(SoR)の見直しは必須である。


図4:ガートナーの「The Digital Business Technology Platform」

執筆者:田口 潤(インプレス IT Leaders 編集主幹)

この記事は、IT Leaders特別編集版『Knowledge Integration in Action 2017 in Summer』からの抜粋です。

トップ写真:Nongkran_ch/Getty Images

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