mis

あなたのデータも取引対象、IoT関連データの流通うながす取引所が開設

2016.12.15
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

IoT(モノのインターネット)への取り組みが進めば、私たちの生活や行動に関する多くのデータが取得できるようになります。そんなIoT関連データを流通させるための「データ取引所」の検討・構築が始まりました。データを分析し活用したい企業にすれば、すべてのデータを自らが取得する必要がなくなります。

データ取引所は、データ活用に向けた取引成立を仲介するところ、あるいはそのためのオンラインサービスです。証券取引所同様に、データの提供範囲や利用方針、対価などを明示しながら、データの所有者とデータを利用したい企業・組織などを結び付けます。2016年10月27日、そんなデータ取引所の1つとなる「IoT情報流通プラットフォームEverySense」を米EverySenseの日本法人が開設しました。EverySenseは真野 浩CEO が米シリコンバレーに設立したIoT特化のベンチャー企業で、IoTデータを収集するためのセンサーやスマホアプリなども開発・提供しています。

データの仲介に徹し自らはデータを保有しない

IoT情報流通プラットフォームEverySenseでは、個人や企業などが所有するデータを、データを必要としている企業に紹介し、需給バランスによってデータの価格を決定します。データの提供範囲は、データの提供者が決めるため、個人情報など流通させたくないデータは取引対象になりません。EverySense自身はデータ流通のための仲介に徹し、自らはデータを売買したり価格を決めたりをせず、さらにはデータも保持しません(動画1)。

動画1:「IoT情報流通プラットフォームEverySense」の紹介ビデオ

データ提供者は、提供したデータの質と量に応じた対価を専用のポイントで受け取ります。ポイントはリアルワールドが運営する「Point Exchange」など、EverySenseが指定する交換サービスによって、他社が発行するポイントや電子マネーに交換できます。開設時には、ポイント発行手数料の割引きなどの優遇を受けた“ローンチカスタマー”として、大学や研究機関含め20の企業・団体が参加しています。そのうちの1社である、さくらインターネットは、同社が提供するIoTプラットフォームサービス「さくらのIoT Platform」とEverySenceを相互に接続し、さくらのIoT Platformの顧客のデータをEverySence経由で提供したり、あるいはその逆のデータ流通を検討しています。

オムロンはセンサーデータのための取引所になる「センシングデータ流通市場(SDTM)」の開設を計画しています。2016年10月に千葉市・幕張で開かれた展示会「CEATEC JAPAN 2016」では、同市場のデモを実施しています。SDTMは、センサーデータの所有者と、どのデータを必要とする者をマッチングし、必要時に必要なセンサーデータをやり取りできるようにします(図1)。

dataexchange_1
図1:「センシングデータ流通市場(SDTM)」の位置付け(出所:オムロン)

オムロンがSDTMの開設に積極的なのは、「Senseek(センシーク)」と呼ぶ、センサーデータが持つ属性データを使ってマッチングを実現するための技術で特許を取得しているからです。このSenseekを使ってSDMTを構築する考えです。センサーデータの取引に向けた研究会を発足させ、2017年春までに通信大手などとともにSDMTの開設を目指します。

取引市場型をベースに“データ協調型社会”の実現を目指す

EverySenceやSDMTといったデータ取引所の開設が始まっている背景には、IoT関連データの活用度が産業の活性度を左右するという認識が国レベルで強まっているからです。サイバーセキュリティの問題や個人情報保護の観点は重要ですが、企業の枠を越えたデータの流通がなければ、個人や社会を支える新たなサービスは創造できないというわけです。

データの共有/流通について経済産業省は、「共有財産型」「集約・加工型」「取引市場型」の3形態があるとしています(図2)。共有財産型は、業界団体などがコンソーシアムを組んで取り組むスタイル、集約・加工型はカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」などが相当します。取引市場型が、先に紹介したEverySenseやSDTMです。

dataexchange_2
図2:データの共有/流通のための3形態(出所:経済産業省)

そのうえで経産省は、取引市場型をベースにした“データ協調型社会”の実現を目指しています。データ協調型社会とは、データを囲い込まず、個人がデータを管理しながら、取引所などでのデータの共有・交換・売買によって、データを必要とする組織が必要なデータを活用でき、様々データの組み合わせによって新しい価値を創出できる社会です。

例えば米国では、旅行者のフライト情報や予約情報などが流通しており、その情報を使って企業が市場を予測したり消費者動向を分析したりしています。米ADARAが運営する「Magellan」がそれで、航空会社(例えばUnitedや Delta)やホテルチェーン(例えばHyattやMarriott)、レンタカー会社(例えばHertz)など90を越える旅行関連のブランド企業から集めた1次データと、匿名化した3億人を超えるプロファイルデータを有償で提供しています(図3)。Magellanでも、提供するデータの範囲はデータを提供する側がコントロールしています。

dataexchange_3
図3:「Magellan」が提供するデータの表示例(出所:米ADARA)

大手だけでなく、中堅・中小やベンチャーもデータ活用が可能に

データ協調型社会の実現に向けては、個人情報のプライバシー保護の観点から、本人からの同意を取得したり、データを匿名化する一定の処理を施したりといった施策も必要とされています。データの存在を網羅的に把握できる取引所そのものの管理の仕組みが必要との声もあります。

しかし、データの流通が可能になれば、自社だけでは収集できない分野の動きも把握できるようになりますし、大企業だけでなく、中堅・中小企業やベンチャー企業なども、多種多様なデータに基づくビジネス開発が可能になります。IoT自体、まだまだ始まったばかりですが、データの蓄積を前提に、データの取引ルールの明確化や流通プラットフォームの重要性が高まっていくことでしょう。

執筆者:瓶子 和幸(Digital Innovation Lab)

EVENTイベント

PARTNERパートナー