自転車はコンビニで借りる時代に?! NTTドコモが仕掛ける自転車のIoT

2016.09.23
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最近、東京の都心部では、赤い電動アシスト自転車をちょくちょく見かけるようになりました。これは、自転車のシェアリングサービスを展開するためにNTTドコモらが立ち上げたドコモ・バイクシェアが運営する「ドコモ・バイクシェア スマートシェアリング」の自転車です。同社は、自転車の管理にIoT(モノのインターネット)の概念を持ち込むことで自転車を共有するサービスの使い勝手と運用のしやすさを図っています。

コンビニで自転車の貸し借りができる

ドコモ・バイクシェアは、事前に会員登録を済ませておけば、おサイフケータイやSuicaなどのICカードを自転車についているカードリーダーにタッチするだけで利用できる自転車の貸し出しサービスです(動画1)。スマートフォンから自転車の鍵を開けるための「パスコード」を取得し、それを手入力しても使えます。現時点で米AppleのiPhoneによるタッチ操作には対応していませんが、次期iPhoneでは、おサイフケータイ機能が追加されるだけに、iPhoneユーザーの利便性も高まることでしょう。

動画1:ドコモ・バイクシェアの利用方法。動画は千代田区の「ちよくる」の例

2016年6月からは、コンビニエンスストアの店頭でも、この自転車を貸し借りできるようになりました。ファミリーマートと経営統合したサークルKサンクスが、都内3店舗で「サイクルポート」と呼ぶ駐輪場を設置し始めたのが、それです。2017年2月をメドに約20店舗にまで設置店舗を拡大する予定です。ファミリーマートとの経営統合後の方針は不明ですが、既設のサイクルポートではサービスが続いています。

ローソンは旅行者を対象にしたバイクシェアを始めています。2016年8月からは青森県内の4店舗にサイクルポートを設置。東北への外国人旅行者誘客を支援する「『新しい東北』交流拡大モデル事業」の一環です。空室情報などのシェアリングサービスを手がける、とまれると組み、岩手県の民宿やユースホステルなどにもサイクルポートを設置し始めています。

地方自治体と連携し全国各地で展開

ドコモ・バイクシェアはこれまで、地方自治体などと協力し、電車やバスなどの公共交通手段に追加する形で自転車のシェアリングサービスを提供してきました。地域に根ざした移動手段に広げることで、地域・観光の活性化や温室効果ガス排出量の削減といった環境問題の解決を図ろうというわけです。

例えば東京都心部では2016年8月時点で、千代田区・港区・中央区・江東区の隣接する4区をまたがってドコモ・バイクシェアが利用できます。当初は、千代田区の「ちよくる」、港区の「港区自転車シェアリング」、中央区の「中央区コミュニティサイクル」、江東区の「江東区臨海部コミュニティサイクル」のそれぞれが各区内限定でサービスを提供しており、他区への乗り捨てはできませんでした。今は実証実験の位置付けながら、合計1700台以上の自転車を、4区にある合計140カ所以上のサイクルポートのどこでも貸出・返却ができます。2016年2月から4月までの利用状況調査では、すべての利用のうち14%が区境を越えた利用でした。

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図1:東京都心3区での広域実証実験におけるサイクルポートを示す地図(出所:ドコモ・バイクシェア)

東京都以外では2016年8月時点で、仙台市の「DATE BIKE」、横浜市の「baybike」、神奈川県県西部の「Let’s Bike」、山梨県甲州市の「ぐるりん」、岐阜県揖斐郡の「養鉄トレクル」、神戸市の「kobelin」、広島市の「ぴーすくる」が展開されています。ただ自治体連携では、サイクルポートが役所や公共施設、商業ビルの公開空き地、あるいは観光地への設置が中心で、必ずしも日常的に使いやすい場所にあったというわけではありません。コンビニなどとの提携で「いつでも乗りたい時に乗れる」サービスに、さらに近づいていると言えるでしょう。

自転車を個々に管理するIoTでコストを3割削減

バイクシェアという考え方や取り組み自体は斬新なわけではありません。自転車の貸し出しという観点でみれば、日本でも「レンタサイクル」という名称で観光地などを中心に1980年代から提供されてきました。複数の名所・旧跡などを巡るにしても公共の交通機関が未整備な観光地などでの“移動の足”です。近年のバイクシェアは、温室効果ガス排出といった環境問題や、人の移動と交通手段のあり方といった意識からの動きが強まっています。オランダのアムステルダムやフランスのパリ、イギリスのロンドン、米国のニューヨークなどの都心部でサービスが提供されてきました。

そうした中で、ドコモ・バイクシェアが全国各地にサービスを展開したり、コンビニなどの店頭で貸し出したりを容易にしているのが、デジタル化です。具体的には、自転車の1台1台を個別に管理する仕組み、すなわち自転車のIoT(モノのインターネット)を実現することで、駐輪施設の設置コストや、自転車の貸し借りを管理するコストを従来から30%削減できていることです(図2)。従来のバイクシェアでは一般に、駐輪施設に自転車の管理機能を持たせており、専用の駐輪設備が必要なほか設置工事も大がかりになりがちで、サービス開始時の大きな負担になっていました。

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図2:ドコモ・バイクシェアにおける“自転車IoT”の仕組み(出所:NTTドコモ)

ドコモ・バイクシェアが用意する自転車は、本体に通信やGPS(全地球測位システム)、遠隔制御の機能を搭載しています。この本体は、携帯電話の通信網を使って、管理センターと通信しています。これにより、どの自転車がいつ貸し出されたのか、今どこを走っているのかに加え、電動アシストのためのバッテリー残量なども遠隔監視できます。自転車自体を管理しているため、駐輪設備は前輪を挟み込むだけの省スペースで安価なラックで済みますし、駐輪設備が満杯でラックに停められなくても問題がありません。駐輪設備側での管理では、満車時は自転車を返せず、空いている駐輪施設を探し回るといった事態も起こります。

バイクシェアのための自転車開発にも

自転車のIoTという仕組みをベースにドコモ・バイクシェアでは、電動アシスト自転車の開発にも踏み込んでいます。例えばパナソニックとは、電動アシスト自転車のための充電ステーションの検証を始めました。東京の晴海・月島・豊洲という臨海地区において、店舗や施設に設置した充電ステーションでのバッテリー交換や、駐輪場などに併設した充電ステーションでの充電がスムーズにできるかどうかを確かめています。ブリヂストンサイクルとは、同社の電動アシスト技術「DUAL DRIVE」を使う車両や折りたたみ式自転車にドコモ・バイクシェアの管理システムを融合させるほか、IoTを使った関連商品の開発を検討しています。

さらにドコモ・バイクシェアでは、利用状況のデータを分析した結果を生かした新たな付加価値サービスも生みだしたい考えです。自動車分野では“コネクテッドカー”として、ネットワークにつながった車に対する種々のサービス提供の模索が始まっています。同様に、ネットワークにつながった自転車、つまり“コネクテッドバイク”に対しても、単に「乗りたいときに乗れる」というだけにとどまらない新たなサービス創出のチャンスが広がってきたようです。

執筆者:和田 憲明/宮原 康史(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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