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あなたが知らないDomino’s Pizzaのデジタル活用、米では新興企業並みに急成長中

2016.07.15
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日本でもお馴染みの宅配ピザチェーンのDomino’s Pizza(ドミノピザ)。1度は利用したことがあるという読者は多いのではないでしょうか。そのDomino’s Pizzaの米国での株価は、まるで新興企業のような急成長を続けています。2008年の金融危機時代の株価と比べると今は50倍にもなっているのです(図1)。

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図1:Domino’s Pizzaの5年間の株価推移(出所:ycharts.com/)

Domino’s Pizzaは、株価50倍をどのように実現しているのでしょうか。この成長を支えているのが、株価が低迷した2008年頃から取り組んできた様々なデジタル活用だと言われています。同社でのピザの注文は今では、Webサイトとモバイルアプリケーションの両プラットフォームからが実に全体の5割にも上っていると言います。

日本でも利用できるモバイルアプリの1つに「DOMINO’S PIZZA TRACKER」があります。注文後、配送までの状態がリアルタイムでわかるコンテンツサービスです。他にも地図をみてGPS連携し、配送要員がどこまで来ているのかがわかる「GPS DRIVER TRACKER」もあります(動画1)。配送情報がリアルタイムに提供できない時代には、娯楽的なコンテンツサービス「EXCELLENT TRACKING QUIZ SHOW」を提供していました。ピザが届くまでの待ち時間をクイズで楽しく過ごせるようにとの考えです。

動画1:「GPS DRIVER TRACKER」の紹介ビデオ

しかし、単にこれらのアプリだけで株価50倍を実現しているわけではありません。米国市場では、より様々なアプリケーションを提供したり、新たな実証実験に取り組んだりしているのです。最新の取り組みでは、ロボットによる配達の実験をオーストラリアとニュージーランドで始めています。世界初の自動走行ロボット「Domino’s Robotic Unit(DRU:ドリュー)」がそれで、6カ月にわたってピザのデリバリーを実験し、2年以内の全国展開を目指しています(動画2)。

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動画2:ピザ配達ロボット「DRU(ドリュー)」の紹介ビデオ

このDRUは、小型で頑丈な素材で作られており、内部は保温庫と保冷庫に分かれています。アツアツのピザと冷たいドリンクを同時に届けるためです。バッテリー駆動式で最大20km先まで、衝突センサーLIDAR とGoogleマップのGPS(全地球測位システム)を使って配達します。いたずらや破壊、泥棒といった行為に備え、複数のIPカメラを搭載し周囲の様子をクラウドに常時送っています。顧客はDRUが到着すればモバイルアプリで支払いを済ませ、注文時に発行された番号をDRUに入力して商品を受け取ります。

他にもデリバリー関連では、ドローンによるピザ配達「DomiCopter」も実験しています。ドローンによる配達では、米Amazonが2013年に実施した例が良く知られていますが、Domino’s Pizzaの実験はAmazonのそれより先に始まっています。

こうした顧客が注文をしやすくするための取り組みには、枚挙に暇がありません。海外市場でのみ実施された、いくつかの例を紹介しましょう。

2015年には、ボタンを押すだけでピザが配達される「easy order」を始めています。このボタンはBluetoothでアプリと連携していて、実際にはアプリ経由で注文しているのですが、このボタンを押せば顧客がアプリを起動させる必要がありません。アプリを起動させる手間を省くことで、より注文しやすくした仕組みです。

同サービスは2016年には、アプリを起動すればクリックなしで注文できる「zero」へと発展しています。専用のアプリである「Zero Click」をインストールし初回利用時に必要な情報とデフォルトのピザを設定しておけば、2回目からはアプリを起動するだけ、ゼロクリックでピザが注文できます。アプリを起動してから10秒の間にタイマーを止めれば発注されないという、誤った注文を防ぐ機能もあります(動画3)。

動画3:「Zero Click」の紹介ビデオ

また2015年には、外部API(プログラミングインタフェース)と連携し様々なシーンでの注文を可能にしています。Amazonの家庭用音声認識端末「Amazon echo」や韓国サムソンのスマートTV、あるいは米Fordの自動車からも注文ができるのです。さらにSiriのような音声のみで注文できる「Dom」や、「Tummy Translator」といったアプリもあります。「Tummy Translator」はお腹の音でピザを注文できるアプリです。スマートフォンをお腹に当てて音を聞かせると、その音を分析してお薦めのピザを自動で注文してくれます(動画4)。

動画4:「Tummy Translator」の紹介ビデオ

オリジナルビザを創作してオーダーできるアプリ「Domino’s Pizza USA」も米国限定で提供しています。生地のほか、チーズやソース、トッピングの具材までを好きなようにカスタマイズしてオーダーできます。これに先立ち2011年からは、「Domino’s Pizza Hero」や「It’s My Wonderful Pizza!」など、ピザを自由にデザインして、それが実際に注文できるというゲームアプリも提供しています。

Domino’s Pizzaが、これほど多様なアプリを提供できるのは、2007年頃からオンラインやモバイルでの注文を筆頭に、様々なデジタル化の取り組みを試行錯誤してきたからでしょう。その過程では、オープンイノベーション(共創)への取り組みも展開しています。「Think Oven」というFacebook上のプロジェクトではDomino’s Pizzaをより良くするために店舗運営に関わるアイデアを顧客から集めています。

こうした取り組みを通して様々なチャネルでデータは、もちろん分析し活用しています。同社のデータ管理基盤「Domino’s Information Management Framework」では毎日、データが蓄積され、それを細分化して分析することで、顧客ニーズを追求しているといいます。同データ基盤にはオープンソースのビッグデータ用ソフトウェア「Talend’s Big Data Integration platform」を使っています。

ピザという商品そのものの開発は当然ながら、顧客との接点を増やし、その利便性を高めたり、デリバリーの効率を高めたりするためにDomino’s Pizzaはテクノロジーの活用を積み重ねてきました。その過程では、もちろん失敗もあったことでしょう。しかし彼らの取り組みは、テクノロジーの活用においても積み重ねが重要であることを示しています。だからこそDomino’s Pizzaは今、テクノロジー企業同様に評価されるほどになっているのではないでしょうか。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、漆畑 慶将(OKメディア)

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