動き始めた「空の産業革命」、改正航空法がドローンの商業利用を加速?!

2016.02.24
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ドローン(無人航空機)への関心は、一般個人だけでなく、企業の業務利用においても高まる一方です。2016年1月に米ラスベガスで開かれたデジタルテクノロジーの展示会CESにおいても、複数の回転翼を持つマルチコプターに加え、一般的な飛行機型のドローンなども登場しました。日本でもドローンの商用利用拡大に向け、航空改正法が2015年12月1日に施行されるなど、法制度面での環境整備が進み始めています。

首相官邸を含め、各地でドローンが落下する事件が起きていることは記憶に新しいところですが、無用な混乱を起こし、ドローン活用に水を差さないためにも、まずは改正航空法のポイントを抑えておきましょう。

航空機の運航と地上の人命を守る

航空法改正のポイントは2つあります。1つは、国土交通省の許可が必要な飛行空域を規定したことです(図1)。具体的には、(1)航空機の航空の安全に影響を及ぼすおそれがある空域、(2)地表または水面から150メートル以上の高さの空域、(3)人家密集地域の上空、です。

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図1.航空改正法が規定する申請なしにドローンを飛ばせる範囲(出典:国土交通省)

(1)と(2)は、航空機の安全を確保するための規定です。(3)は一般生活上の安全を確保するための規定になります。人家が密集しているかどうかは、2010年(平成22年)の国勢調査の結果が基準で、同調査の人口集中地域の上空が対象になります。このほか、祭礼や縁日、スポーツ大会などの催しが行われている場所の上空もドローンの飛行は原則禁止になっています。

もう1つのポイントは、ドローンの飛行方法を規定したことです。具体的には次の5つを守ることが求められています。

(1)日の出から日没までの間に飛行させること、(2)ドローンとその周囲を常時目視による監視で飛行させること、(3)人または建物、車両などとの間に30メートルを保って飛行させること、(4)爆発物など危険物(火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質など)を輸送しないこと、(5)物を投下しないこと、です。(4)の危険物には、ドローンの飛行のために必要な燃料や電池、およびカメラなどの業務用機器は含みません。一方で(5)の投下できない「物」には、水や農薬などの液体や霧状の物も該当します。

ざっくりと言えば、日中に操縦者が見える範囲の場所で、人や物に近づきすぎないように注意してドローンを飛ばそうということです。夜間飛行や目視外飛行、人や建物などからの距離が30メートル未満の飛行、イベント会場上空の飛行、危険物の輸送、物の投下については、国交省に申請し承認されればドローンを飛ばすことができます。

飛行禁止領域だけをみれば「飛ばす場所がない」ように映るかもしれません。ですが、改正航空法が示しているは、いずれも国交省の許可が不要な領域です。逆に言えば、国交省に申請し承認を得られれば、様々な飛行が可能になります。

安倍首相は、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能にすることを目指す」と発言しています。今回の改正航空法も、安全性を担保しつつ、国交省の許可または承認によって輸送や警備、点検といった業務に対し、ドローンの商業利用を後押しする役割を果たすと期待できます。

ライセンス制度など検討すべき課題は多い

とはいえ、ドローンをめぐる規制・制度は発展途上の段階です。まだまだ検討すべき事柄が控えており、米国をはじめ多くの国が、安全と活用の間で模索しています(表1)。例えば、米国では商用利用はかなり制限が厳しい許可制ですし、個人用のドローンに対しても登録制を導入しました。

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表1:ドローンに対する法規制の各国の対応状況(作成:Digtal Innovation Lab)

今後の検討課題で特に重要だと考えられている項目の1つが、ドローンを操縦する人に対し、ライセンス制度が必要かどうかです。例えばカナダでは、一定規模以上のドローンを操縦するためには「SFOC(Special Flight Operating Certificate)」というライセンスが必要です。ただ、同じライセンス制度を採るオーストラリアでは、書籍の配送サービスを手がけるベンチャー企業Flirteyが誕生するなど、ライセンス制度が商業利用を後押しする側面もあります。

現時点でドローンのライセンス制度を創設している国は、まだ少数派です。こうした課題を含め、日本では2016年1月に官民による協議会が立ち上がり、ドローンの安全確保と利用促進に関する制度設計に向けた議論が始まりました。

ドローンが利用できる業務領域は多彩

既に利用現場では「操縦技能を学びたい」というニーズが高まっているのも事実です。そうした声に呼応する形で、民間企業による資格制度などが動き出しています。ドローン世界最大手の中国DJIの技能資格制度がその1つ。同社は今後3年間で1万人の操縦者を育成するという計画を発表しています。

国内では、ドローンメーカーなどがメンバーになっている日本UAS産業振興協議会が、ドローンの飛行練習ができる場として、茨城県つくば市と京都府精華町に試験飛行場を開設していますし、産学官が連携しドローンの研究開発・実証実験に取り組むミニサーベイヤーコンソーシアムは2016年1月、広島県福山市にトレーニングスクールを開校しました。

ドローンの商業利用では、日本企業も負けてはいません。建機メーカーのコマツは、建設用地の測量期間を短縮するためのツールとしてドローンに搭載した空中撮影システムを開発しています。セコムは、不審車を追尾してカーナンバーを撮影するなど、警備業務へのドローン適用を研究中です。橋梁や高速道路など、高い場所にあるインフラ設備の点検業務にもドローンの利用が進み始めています。

検討すべき課題は多いものの、改正航空法によって日本はドローンのビジネス利用へ向けてスタートを切ったといえます。「空の産業革命」の実現に向けた環境整備がさらに進展することを期待したいところです。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、小林 秀雄(ITジャーナリスト)

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