2020年の東京オリンピックの安全を守れ! セコムとALSOKが備える次世代警備の姿

2017.10.10
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2020年に東京で開催される東京オリンピック/パラリンピック。アスリートたちがどんな活躍を見せてくれるのか、期待が高まります。一方で、気になるのがセキュリティ対策。世界中が注目するビッグイベントであり、各国の要人も参集します。不測の事態に備え、最大級の警戒態勢を敷くことが求められます。どんな警備を実施しようとしているのか。警備業界大手のセコムと綜合警備保障(ALSOK)の取り組みから紹介しましょう。

空間情報を活用したセキュリティサービスが登場

まず警備会社の仕事を概観しておきましょう。日本における警備業務は大きく次の4つに分類されています。

1号警備:施設警備(警備員による常駐警備および異常検知センサーを用いた機械警備)
2号警備:交通誘導と雑踏誘導
3号警備:輸送警備(現金・貴金属など貴重品の輸送)
4号警備:身辺警備、見守りなどの緊急通報サービス

2号警備の代表例が、道路などの工事現場における誘導ですが、不特定多数の人々が参集するイベントの警備も含みます。つまり、東京オリンピック/パラリンピックの警備は2号警備に当たります。2号警備はこれまで、デジタル化が遅れていました。それが近年、急速にウェアラブル端末やドローン、AI(人工知能)の導入が進んでいます。

そして日本の警備会社といえば、セコムとALSOKです。両社とも特徴的なテレビCMで知られています。警備保障タイムズ紙の『2016年警備業売上高ランキング』によると、売上高ランキングの1位は3760億4463万円のセコム、2位が2209億円のALSOKです。両社は企業規模もダントツで3位以下を大きく引き離しています。両社は2020年に向けて、デジタルを活用したセキュリティサービスの開発を進めています。

セコム:空間情報を活用し“立体的”なセキュリティに

セコムは2017年3月、「立体セキュリティ」という考え方を発表しました。立体セキュリティのポイントは空間情報の活用です。イベントが開かれている建物や会場の上空にカメラを搭載した飛行船や気球を配備し警備対象の空間情報を取得することで、警備計画の立案や、イベントの安全な運営に役立てることを狙っています(図1)。


図1:セコムの「立体セキュリティ」の概念(同社プレスリリースより)

監視カメラや警備員の配置場所を決める警備計画がこれまで、平面の図面をもとに立案されてきました。しかし、イベント会場は平面ではなく3次元空間に存在します。そこで担当者は平面図から立体的に想像しなければなりませんでしたが、会場および、その周辺を立体的に想像できる担当者は当然、ごく一握りしかいません。そこでセコムは、上空のカメラで撮影した空間情報から3次元の空間情報を入手できれば、警備計画の立案プロセスを効率化できると考えたのです。

空間情報は、イベント開催中に見守りにも利用します。上空からのカメラ映像に加え、地上の監視カメラや警備員が装着しているウェアラブルカメラで撮影した画像も中央のコントロールセンターにリアルタイムに集約します。コントロールセンターでは、それら画像を画像認識技術やAIを用いて状況を判断し、その結果を元にコントロールンターが警備員に指示を出します。

この立体セキュリティはこれまで、いくつかの重要イベントで段階的に利用されていきました。2016年10月12日の「G7長野県・軽井沢交通大臣会合」では、気球とドローン検知システムによる警備を実施しています。気球に搭載したカメラで会場周辺を警戒(図2)。ドローン検知システムでは、監視エリア内にドローンが侵入してこないかをレーダーで察知しました。不審なドローンはカメラで自動追跡し監視本部のモニターで確認できます。セコムは「ドローン検知システムが不審なドローンの早期発見・対処を支援した」としています。


図2:セコムの気球カメラ(同社プレスリリースより)

2016年5月の「G7 伊勢志摩サミット」の警備では、飛行船による画像監視を導入しました。飛行船に搭載したカメラを地上から遠隔操作しながら、地上の警備本部で不審者や不審船を監視しました。さらに2017年2月24日の「東京マラソン2017」では、マラソンの参加者にセキュリティQRコード付きのリストバンドを装着してもらい、より厳密な本人確認によって不審者の侵入を防止しました。

ALSOK:AIを活用して映像から不審者を発見

一方のALSOKは「ALSOKゾーンセキュリティマネジメント」に取り組んでいます。人手による警備では、警備エリアが広ければ広いほど多数の警備員を配置しなければなりません。そこでALSOKは、警備員がウェアラブルカメラやスマートフォンを装着するほかに、警備ドローンや警備ロボット、監視カメラなどを投入し、そこから得られる様々な情報を活用しようと考えています(図3)。警戒可能な範囲を一気に拡大し、事故や犯罪への対処能力を向上させようというわけです。


図3:「ALSOKゾーンセキュリティマネジメント」の概念(同社プレスリリースより)

ゾーンセキュリティマネジメントもセコム同様、コントロールセンターでの一元監視・一括指示の考えは共通です。ALSOKでは、警備員や警備ドローン、警備ロボットなどが装着したカメラやセンサーがとらえた映像や信号をコントロールセンターで一元管理します。警備員に指示したり警備機器を制御したりするために、映像をAIの一種であるディープラーニング(深層学習)技術を使って分析します。

例えば、不審物を置き去りにする様子や、急病でうずくまる様子などが検知できます。不審人物や悪意を持っている人物に特有の行動パターンを検出することで、万引きや置き引きなどの犯罪を未然に防げると期待しています。異常が検知できれば、付近にいる警備員に連絡することで、できるだけ早くに現場に駆けられるからです(図4)。


図4:ALSOKがNECと組んで進めるゾーンセキュリティマネジメントの全体イメージ(同社プレスリリースより)

ALSOKは、大学生などの民間ボランティアと連携して警備に当たる「ボランティア連携警備」も検討しています。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によれば、「会場警備には1万4000人の警備員が必要」になります。しかし警備業界も他業界同様に人手不足という課題を抱えています。そこをボランティアとの連携で補おうという考えです。

ボランティア連携警備のカギになるのは、ボランティアスタッフが所有するスマートフォンです。ALSOKが開発した専用アプリをインストールさえすれば、ボランティアスタッフは会場で発見した異常を専用アプリを使ってその画像とともにコントロールセンターに報告できるようになります。警備員は第一報を受けてから現場の状況対応に専念することになります。ボランティア警備の仕組みは、人手不足解消と同時に警備コストの削減も図れると期待されています。

5Gと高精細映像を活用して犯罪を未然に防ぐ

セコムとALSOKがセキュリティの高度化に向けて次に注目するのが、次世代の無線通信規格「5G」です。2020年にサービス開始が計画されている5Gは、現在の4Gと比べ高速・大容量なことが特徴です。5Gの通信速度は現行のLTEの100倍とも言われます。そこでは、より高精細な映像を高速に伝送できるほか、遅延時間が短く、多数の端末を同時に接続することも可能です。

そこでセコムは2017年5月、KDDIと共同で5Gを利用したセキュリティシステムの実証実験を実施しました。大規模イベントや国際会議で活用される監視カメラやウェアラブルカメラを5Gでつなぐことで、これまで以上に詳細な状況把握が可能になることの確認が目的です。車両にセットした4Kカメラと警部員が装着したウェアラブルカメラから、KDDI新宿ビルに設置した基地局へと映像を送りました。多数のカメラから高精細映像が警備本部にリアルタイムに伝送できたとしています。

ALSOKは5Gを活用した警備サービスの実現に向けてNECと実証実験を実施すると発表しています。NTTドコモの5G通信インフラを使い、監視カメラの高精度ライブ映像の共有や、画像解析によって異常を検知する技術を検証します。大規模イベント会場をはじめ、多数の人でにぎわう場所でテロや事故が発生しているだけに、ALSOKは画像解析によって異常検知の精度向上を図り、事故や犯罪の未然防止につなげる考えです。

「犯罪被害の拡大防止」から「犯罪の未然防止」へ

日本において最初に警備ビジネスを立ち上げたのは日本警備保障、すなわち現在のセコムです。最初の東京オリンピック開催の2年前に当たる1962年のことでした。人手に依存する形でスタートしましたが、4年後の1966年には、センサーと通信を利用して契約先の異常を発見する機械化が始まっています。機械化は警備業務の生産性を一気に向上させたといいます。

そしていま、警備業務は従来の「犯罪被害の拡大防止」から「犯罪の未然防止」に進化しようとしています。画像解析やAIなどのテクノロジーを活用することで犯罪の予兆をとらえられるようになりつつあるからです。2020年に開催される東京オリンピック/パラリンピックでは、デジタル技術を活用した警備によって、安心してゲームを楽しみたいですね。

執筆者:西田 祐規(Digital Innovation Lab)、小林 秀雄(ITジャーナリスト)

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