「置き場所指定」配送の先駆者、化粧品のファンケルが進める物流改革

2018.03.06
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無添加化粧品やサプリメントなど独自商品を企画・開発するファンケルの原点は通信販売にあります。商品を顧客に届ける物流の仕組みでも独自の方式を開発し、さまざまな工夫を凝らしてきました。その1つが「置き場所指定」での配送。昨今の不在配達問題に対応できる仕組みですが、なんとファンケルは、それを20年前から実施しています。ファンケルは、どんな考え方で物流に取り組んでいるのでしょうか。

ファンケルの創業は1980年。70年代後半に、防腐剤や香料などの添加物が原因で化粧品による深刻な肌トラブルが問題化したことを受け、同社の創業者である池森 賢二 氏が無添加化粧品を生み出し、通信販売を始めたのが原点です。

2018年3月期の売上高は連結ベースで1000億円を見込んでいます。内訳は、化粧品が6割、サプリメント3割、発芽米や青汁などその他事業が1割といったところ。販売チャネルも、通販に加え、デパートなどでの直営店やコンビニなどへの卸販売と多様化しています。

そんなファンケルの物流に対する取り組みについて、同社のカスタマーサービスセンターセンター長である斎藤 潤 氏とカスタマーサービスセンター物流部長の中澤 啓至 氏から聞く機会がありました。東京ビッグサイトで開催された「eコマースフェア2018東京」での同社取り組みついての講演です。両氏の講演から、ファンケルの物流の今と今後について紹介します。


写真1:ファンケルのカスタマーサービスセンターの斎藤 潤 センター長(左)と中澤 啓至 物流部長

20年前から取り組んできた不在再配達問題

個人宅への配達で今、問題になっているのが不在時の再配達です。ネットでの購入が広がり配達数が増える一方で、働き手の人手不足が重なり、受取手の在宅を確認しながら何度も訪問することが限界を迎えています。不在時の配達問題を解消するために、宅配ボックスの設定やコンビニでの受取が始まっていますし、海外でも種々の実証実験が繰り返されています(関連記事『宅配便の“ラストワンマイル”問題、不在時にも届けられる場所を探せ!』)。

この問題にファンケルは実は、20年以上前から取り組んできました。顧客への商品配達という「物流のラストワンマイル」を重視した結果、独自に開発した「置き場所指定お届け」サービスが、それです。1997年1月の開始以来、今も実施しています。スタート当時はファンケルも「再配達が全体の7割にのぼった」(斎藤センター長)というほど、再配達は大きな課題でした。

置き場所指定お届けは、玄関前やメーターボックス内、物置、車庫など、顧客が指定した置き場所に、商品を置いておくという配送サービスです。「受領印」を求めないのがミソで、顧客は在宅・不在にかかわらず、商品を受け取れます。

元々の発想は、商品受け取り時に顧客が感じていた“不便さ・不安さ”をどう解消するかでした。「仕事が忙しく留守がちで受け取れない」「受け取り日の行動が制約される」といった“不在”に起因する不便さだけでなく、「チャイムが鳴ると赤ちゃんが起きる」「配達ドライバーと直接合いたくない」など「“在宅”していても不便や不安を感じることは少なくない」(斎藤センター長)のです(写真2)。


写真2:「置き場所指定お届け」サービスが誕生した経緯

そこでまずファンケルがスタートさせたのが、受領印不要で郵便ポストへ商品を届ける「ポストインお届け」サービスです。ポストに投函できる縦17.5cm×横22.5cm×高さ2.5cmという「ポストサイズ」の出荷箱を作ったほか、この箱に収まらない商品は容器や包装サイズを変えました。ポストサイズは、「標準的な投函箱のサイズを知るために、ファンケルの社員が実際に出向いて測った」(斎藤センター長)といいます。

それでも、ポストサイズを超える商品については配送問題が解消されないことや、94年に郵便料金の値上げがあり、配送コストを押し上げました。そこから開発した新たな配達方式が、置き場所指定お届けというわけです。宅配各社と、受領印が不要でローコストな配達方法を検討。最終的に運送会社の日本通運と連携し、全国展開を図りました。

問題は、自宅外などに商品を置くという安全上のリスクです。ですが斎藤部長は、「宅配事業者も心配し、『保険をかけるべき』との指摘もありました。事故が起きた時はファンケルが補償することにしていますが、私が今の担当になってから2年間をみても、事故は一件もありません」と話します。現在では、「ポストインと置き場所指定を使った商品の配送が4割に上る」(同)としています。

規模の拡大、商品の多様化に合わせ試行錯誤を重ねる

ポストインや置き場所指定お届けといったラストワンマイルを支えるのが、千葉県柏市にある最新の物流センターです。中澤物流部長は、「ここに至るまでは、規模の拡大と商品の多様化、販売チャネルの増加に対応し、工夫を積み重ねてきた」と話します。

2008年に開設した「関東物流センター」は、システム化と環境に配慮した一括集約型の拠点で、6階建のビルの1階から4階を使い、総面積は4800坪あります。毎日、約100人のスタッフで運用し、全体で約1750種類の商品を、月に1000万近い荷物を取り扱っています。施設全体の運営は日立物流にアウトソーシングし、倉庫管理システムはNECが、自動立体倉庫や搬送コンベアなどはダイフクが、それぞれ担当する共同運営の体制を敷いています。

同センターでは、入荷から補充、集品までの全作業を数値として記録し改善する“運営の見える化”と、KPI(重要業績評価指標)のマネジメントシステムを構築しています。「先入れ・先出しを徹底し、適正人員を頻繁に見極めている」(中澤部長)といいます。RFID(ICタグ)を全面採用するなど、システム化によって、「安定した物流品質を確保し、熟練者に頼らない運営が可能」(同)ともしています。

物流センターへの指示が18時までであれば、基本的には本州内には翌日には配達できる体制ができています。従来と比べ当日出荷率は10%向上し、出荷ミスなどによるクレーム発生率は0.002%、10万件に2件というレベルです。物流コスト自体も年間約2億円を削減し、CO2排出量も年間約130トンを削減できています。

ロボットやAIを使った無人化・自動化も視野に

そんな関東物流センターにも、いくつかの課題があります。中澤部長は「集品ミスによる再集品や商品戻し作業の発生、トレーサビリティの精度悪化、労働力確保や一部機器の老朽化」などを挙げます。そのためファンケルでは、「新しい物流構想を検討する時期を迎えている」(同)と言います。

そのファンケルが目指すのは、次のような物流の姿です。

・ロボット技術による無人化・高機能化=ピッキングや生産のボトルネックになる梱包の自動化
・AI(人工知能)を用いた管理の無人化・自動化=受注予測による人・モノなど各種リソースの最適化
・サプライチェーンの進化=IoT(Internet of Things:モノのインターネット)による予測・計画精度の向上と生産の平準化
・配送事業者との連携強化・深化=個数・サイズ・地域・届け先といったデータの共有と再配達抑制策

これらのうち、早期に実現できそうなのが自動梱包。「シート状の段ボールをレールに載せると、段ボール箱の形成から梱包までが進む仕組みを検討したい」(中澤部長)と言います。ロボットやAIの活用は「3年後くらいがめど」(同)のようです。一般消費者が物流現場の変化を直接的に目にする機会は、なかなかありませんが、ファンケルがどんな配送サービスを実現するのかには期待したいところです。

執筆者:荒木 厚(経済ジャーナリスト)

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