ファーストリテイリングが戦略提携した島精機、Google、ダイフクにみる共通点とは?!

2018.11.27
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「ユニクロ」や「GU」などの衣料ブランドを展開するファーストリテイリングが2018年夏から秋にかけて、戦略的パートナーシップの提携を相次いで発表しました。自動編み機メーカーの島精機製作所、米IT大手のGoogle、物流関連機器メーカーのダイフクです。これらを並べてみると、ファーストリテイリングが顧客起点の新たなサービス創出に邁進している姿が見えてきます。

島精機と縫い目のないニットウェアを生産

ファーストリテイリングが2018年、戦略的なパートナーシップとして最初に発表したのが7月の島精機製作所との提携です。両者はこれまでも協業関係にありましたが今回、その関係を強化し、包括的なニット商品の開発と技術革新への取り組みを中長期的に加速するとしました。

島精機は、コンピューター制御による横編機の大手メーカーです。「ホールガーメント」と名付けた、ニットウェア一着まるごとを立体的に編み上げる仕組みを開発し、そのための編み機や、デザイン用・制御用のソフトウェアなどを開発・販売しています。一般的なニットウェアは、前身頃と後身頃、両袖を別々のパーツとして編み上げた後、それらを縫い合わせる必要があります。

このホールガーメントを使った「ユニクロ」の商品が、女性用のワンピースとセーターにおける「3D KNIT」です(図1)。2018年の秋シーズンに投入した3D KNITでは、立体的で縫い目がないという特徴に加え、サイズのほかにワンピースの丈の長さも選べるようになりました。一般的な長さと長短の3つの違いですが、ユニクロは「サイズとレングス(長さ)の組み合わせによって、お客様の身長や体型、お好みにフィットしたシルエットを提供します」としています。


図1:縫い目のない「ホールガーメント」によるユニクロの「3D KNIT」(ユニクロのプレスリリースより)

ファーストリテイリングと島精機は2016年10月、イノベーションファクトリー」という合弁会社を設立しています。同社で、ホールガーメント商品の量産技術を蓄積してきました。その成果の1つが3D KNITです。

今回の戦略的パートナーシップでは、イノベーションファクトリーで蓄積したノウハウを活用し、アジア地域における量産体制を拡大し、生産性を高めると共に、オンデマンド型の量産システムを視野に、顧客と工場を直結した新しい商品開発・量産プロセスの開発を目指します。島精機は、本発表に先立つ2018年5月には、米MITメディアラボのコンソーシアムに参画し、新たなニット技術の開発に取り組むとも発表しています。

米Googleと機械学習などで提携

島精機に続き2018年9月に発表したのが、米Googleとの提携です。ファーストリテイリングは、「世界中のデジタルパートナーと協業し、最先端のデジタルイノベーションを活用し続ける」とながらも、Googleとの協業は「その中の重要な取り組みの1つであり、さまざまな分野でプロジェクトを始めている」としました。

プロジェクトの一例として挙げたのが、Google Cloudの「ASL(Advanced Solutions Lab)」チームとのAI(人工知能)分野での協業です。この協業は、日本企業としては初としています。具体的には、ALSが開発する機械学習や画像認識といった技術を、商品トレンドの分析や需要予測に利用します。

さらには、顧客の行動や販売実績データに、外部のデータなどを組み合わせて分析することで、「お客様をより深く理解し、お客様が求めているものだけを作る仕組みの構築を一体となって進めています」(ファーストリテイリング)と言います。

Googleとの提携発表においてファーストリテイリングが強調したのが「“情報製造小売業”へ生まれ変わる」ということです。情報製造小売業とは、「お客様を深く理解し、お客様が求めているものだけを作り、最適な形でお届けするための、情報を中心とした企業」(ファーストリテイリング)です。そのために「有明プロジェクト」と呼ぶ取り組みを進めていることを明かしました。

Googleとの提携には、Googleのグループウェア製品である「G Suite」の全社導入も含まれています。有明プロジェクトにおいては、店舗から本部、生産・物流拠点までの全社員が、同じ情報を参照し完全連動して動けることを目指しています。G Suiteは、そのための社内情報共有プラットフォーム(基盤)の位置付けです。

グローバルな物流機能をダイフクと構築へ

その有明プロジェクトと関連し、2018年10月に発表したのが、物流関連機器メーカー大手、ダイフクとの戦略的パートナーシップです。東京・有明にある「有明倉庫」の自動化を皮切りに、継続的かつ安定したグローバルな物流機能の提供を目指します(図2)。


図2:ファーストリテイリングが東京・有明の「有明倉庫」に導入した最新の物流関連機器

ダイフクとのパートナーシップでは、4つの取り組みを挙げています。(1)最新鋭の自動化設備の導入、(2)特別チームの編成、(3)一気通貫した自動化設備導入の推進、(4)物流システム開発の協働です。

つまり、ファーストリテイリンググループの物流拠点を対象に、両社スタッフによる特別チームを編成し、最新鋭かつ一気通貫型の自動化設備を導入していく。同時に、さらなる自動化や効率化など顧客サービスの向上につながる新たな物流システムも協働で開発するということです。

データに基づくオンデマンド化がゴール?

2018年夏から秋にかけての発表を時系列に紹介しました。島精機は生産現場、Googleは市場分析・創出分野、ダイフクは物流分野と適用領域は異なります。ですが、これらの発表には共通点があります。

1つは“情報”あるいは”データ”です。ファーストリテイリング自身が「情報製造小売業」を目指すと言うように、情報/データを活用することで、生産、販売、流通の各フェーズの自動化・最適化を図ります。G Suiteの導入目的をみれば、それをフェーズ単位ではなく、エンドツーエンドで最適化したいと考えていることも分かります。

もう1つの共通点は、各発表で表現こそ違っていますが、オンデマンドです。つまり、顧客が求める商品を、顧客が求めるデザインやサイズで生産し、確実に届けるということです。そこでは、現在のユニクロなどが、大量生産した製品を店頭やECサイトに並べて販売して届けるというプロセスであるのに対し、顧客の発注指示を受けてから生産し、速やかに届けるというプロセスへの変革も起こります。

その意味で、先の情報/データには、顧客の体型データなども視野に入っているのでしょう。島精機は、自動編み機だけでなく、型紙から布地を切り出す自動裁断機も生産しています。オーダー型の商品がニットウェアだけでなく、Yシャツやスーツなどへと広がる可能性は小さくありません。

アパレル業界の競争軸はデータに完全シフト

体型データを使ったオーダースーツといったサービスでは、球団取得や宇宙旅行などで世間を騒がす前澤 友作 社長率いる、ネット専業のZOZO(旧スタート・トゥデイ)が先行しました。ZOZOも体型データによるオーダースーツの発表会では、生産方法の一例として、なぜかニットウェア用の島精機の編み機を挙げました。

そのZOZOの発表会直後、ファーストリテイリングと島精機の提携強化が発表されました。そのうえ島精機のプレスリリースには、「弊社にとりまして、ファーストリテイリングを唯一無二のパートナーとして取り組んでおり、その事業を拡大していきたいと考えています」との文言まで記されています。

ネット専業のZOZOの動きは、ファーストリテイリングが言う「情報製造小売業」と完全に重なり、リアル店舗を抱えるファーストリテイリングが大きな危機感を持っているとの見方もできます。

ZOZOに代表されるようにアパレル業界では、ネットビジネスが台頭し、顧客への商品リコメンドや配送方法の多様化、サイズ測定などのデジタル化が急速に進んでいます。そのためのAI分野の開発競争やAI人材の獲得競争も激しくなっています。ファーストリテイリングが「情報製造小売業」と表現するように、アパレル業界の競争軸は、情報あるいはデータというデジタル対応に完全にシフトしてきているのです。

執筆者:志度 昌宏(DIGITAL X)

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