中国発ベンチャーが世界展開する物流ロボット「EVE」、アリババグループでも稼働中

2018.03.27
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ネットビジネスの急拡大に伴い、逆に課題として浮上してきたのが物流業務です。取り扱う商品量が増え、配送の仕組みも多様化する一方で、少子高齢化による労働力不足が物流現場を直撃しているからです。その解決策として期待されるテクノロジーの1つがロボット。物流向けロボットは多数提供されていますが、中国アリババグループが採用するロボットは中国発のベンチャー企業ギークプラスが開発する「EVE(イヴ)」です。どんな効果を得られるというのでしょうか。

ギークプラスは、中国・北京に本社を置き、2018年2月時点の従業員数は約230人です。中国アリババグループが展開するネットモールの「Tmall」のほか「VIPShop」や「Suning」といった大手サイトなど30社以上を顧客に持ち、全世界では約2000台のEVEが稼働しています。それらのEVEがカバーする倉庫の総面積は10万平方メートルに上るといいます。日本では2017年、フルフィルメントセンターを運営するアッカー・インターナショナルが採用しました。

日本での販売とサポートは、日本法人のギークプラスが担っています。日本法人社長の佐藤 智裕 氏が「EVE」の導入効果を、「イーコマースフェア2018東京」(主催:UMBジャパン)説明しました(写真1)。同氏の講演内容から、EVEの概要と、その導入効果を紹介しましょう。


写真1:中国の物流ロボットベンチャー、ギークプラスの日本法人社長を務める佐藤 智裕 氏

ピッキングの作業効率を3〜6倍に向上

物流倉庫における業務の基本的な流れは、(1)入荷、(2)保管、(3)在庫管理、(4)ピッキング、(5)パッキング、(6)出荷といったものです。そのうち、実際に人が倉庫内を歩き回らなければならないのは、次のような作業です。

入荷作業:商品が入ってきてから倉庫内の棚に配置するまでの作業
ピッキング作業:商品を棚から作業場(ワーキングステーション)まで運んでくる作業
棚卸し作業:すべての商品在庫数を確認するために倉庫全体を一周する作業
検品・返品作業:入荷商品の良/不良を判別し、それを棚に戻す作業

これら作業の多くが“人海戦術”で、やりくりされてきたわけです。そこに物流ロボットに切り替えることで、効率化を高める取り組みが従来に増して進んでいるのです。佐藤氏は、「EVEへ切り替えれば、およそ3〜6倍の効率化が期待できる」と言います。

ネットビジネスのための倉庫で、ロボットへの切り替えが最も進んでいるのはピッキング作業です。ロボットがピッキングすることで、人が棚まで歩いて商品を取り出す作業を軽減できます。「1人が1時間あたり40〜50件こなしていた現場で、180〜240件までスピードアップできたケースがある」(佐藤氏)そうです。

ギークプラスのピッキング用ロボットは、お掃除ロボットを大きくしたような丸い形をしています。ピンキング作業では、在庫保管エリアにある棚の下に潜って棚を持ち上げ、作業者が待つ作業スペースまで運びます(動画1)。作業者は手元まで来た棚から商品を取り出し、それをスキャンすれば、インジケーターに数量や場所などが表示されます。作業が終わればロボットが棚を元の場所に戻します。

動画1:アッカ・インターナショナルでの「EVE」の稼働状況を紹介するビデオ(1分10秒)

佐藤氏によれば、アリババグループのTmallは3000平方メートルの倉庫にロボット50台を導入。アッカー・インターナショナルは2700平方メートルの倉庫に30台のロボットを導入しています。

ビッグデータを活用し在庫管理を最適に

ギークプラスが提供するロボットは、ピッキングを含め、3種があります。

(1)ピッキング用:商品棚を保管場所から作業ステーションに運ぶ
(2)ムービング用:A地点からB地点まで搬送する
(3)ソーティング用:荷物をサイズ別に仕分けする

それぞれ運べる重量によって大小があります。「3種類のシステムと大小のロボットを組み合わせることで、様々な物流ソリューションに対応できる」と佐藤氏は語ります。

ここで佐藤氏が「ソリューション」と呼んでいることの1つに、システムが取得するビッグデータ活用による在庫管理の最適化があります。ロボットの制御システムは、モノを運ぶ過程で生まれる各種データを蓄積しています。これを分析することで、出荷能力を高めたり、出荷先を管理したり、あるいは出荷までのリードタイム短縮が図れるというわけです。出荷傾向の予測や、出荷時の商品の関連性(どのような商品が同時に出荷されているか)の把握などにより、在庫数や棚のレイアウトなどの最適化が可能になります。

さらに「荷主シェアリング」と呼ぶサービスも提供しています。荷主シェアリングとは、複数の荷主が、それまで別々のエリアに保管していた商品を、同一エリア内の同じ棚に保管し、ロボットも共有化する仕組みです。保管棚のキャパシティやロボットの稼働率の最大化を図ります。

在庫数が多く出荷頻度が低い商品で最も効果が出る

多くの効果を提供する物流ロボットですが、どんな現場に導入するのが、より高い効果を期待できるのでしょうか。佐藤氏は「広い倉庫で多くの人手を要している現場」と言います。「倉庫面積が400坪以上で15人以上が歩き回る現場」(同)が1つの目安だそうです。

「出荷効率が悪い倉庫もお薦め」(佐藤氏)です。例えばSKU(Stock Keep Unit:在庫管理に使われる単位)が多かったり、通販のように1件あたりの出荷個数が少なかったりする場合です。

導入範囲はどうでしょうか。佐藤氏の答えは「出荷頻度に合わせ商品別の運用を考えるのが一つの手」というものです。物流ロボットは在庫数が多く出荷頻度が低い商品に対する効果が最も大きくなります。出荷頻度が高い商品は「狭いエリアに集約すれば、手作業でも十分効率の高い結果が得られる」(同)といいます。

在庫数が非常に多い場合は、すべてをロボットで運用する方法のほかに、ロボットと人手の混在が有効なことがあります。出荷頻度の別に「ストック在庫」と「アクティブ在庫」に分けて、「ストック在庫はロボット、アクティブ在庫は人手で対応するといった運用が考えられる」(佐藤氏)からです。ベルトコンベアや自動梱包機、自動倉庫などを導入済みであれば、これらとの連携も考慮して最適化を図ります。

ロボットを導入している倉庫は、まだ少ないのが実情です。これに対し佐藤氏は、「早いタイミングでのロボットの導入を勧める」と言います。「EVEの投資回収は平均にして約3年。省人化により人材をコア業務に配置し競争力を高めながら、投資回収後は物流料金を下げることで差別化が図れる」(同)というのが、その理由です。またロボット導入は、「新規顧客開拓の宣伝材料にもなり得るため営業ツールにもなる」という理由も挙げます。

ロボットと聞くと「人の仕事を奪う存在」との見方が出てきますが、働き手不足を前提に、物流のサービスレベルを高めていくためには、ロボットを含めたデジタルの力を利用せざるを得ないのが実状ではないでしょうか。そこでは現状維持に留まらない利用方法を考えることも不可欠でしょう。

執筆者:水野 雪(C.C.Design)

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