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「顔パス」での決済が可能に?!米Googleが開発中の「Hands Free」を使ってみた

2016.08.04
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「Apple Pay」や「Android Pay」などモバイル決済サービスの導入が進む米国では、早くも「その次の決済サービス」を模索する動きが始まっています。同分野に米Googleが投入するのが「Google Hands Free」。顔認証技術によってデバイスを取り出さなくても決済ができるようにするサービスです。現在は、米シリコンバレーの一部店舗で実証実験が行われている段階ですが、どのように使えるのか、実際に体験してみました。

事前の不安をよそに一瞬で終了

Hands Freeは、Googleが2016年3月からシリコンバレーの限られた店舗で実証実験を展開している決済サービスです。同社は既に、Androidデバイスを使う決済サービス「Android Pay」を提供していますが、Hands Freeでは顔認証技術を使うことでスマートフォンなどのデバイスを操作しなくても決済ができるのが特徴です。米AppleのiOS用アプリケーションもあります。両手が塞がっていても鞄の中などにスマートフォンが入っていれば決済できるというわけです(動画1)。

動画1:「Google Hands Free」のメリットを紹介している動画

最近、筆者の職場近くにも実験に参加しているファストフード店舗があることが分かったので早速、試してみることにしました。午前11時半頃に店舗に立ち寄った筆者ですが、「スマートフォンをポケットに入れたまま、ちゃんと決済できるのだろうか」と若干の不安を感じていました。店頭にも「Hands Free実験中」といった類いの掲示もなかったので、なおさらです。

ファストフード店に入ると、レジには誰も並んでおらず閑散とした状態。「本当にここでHands Freeを使えるのだろうか」と、さらに不安になりました。以下、筆者と店員とのやり取りです。

筆者:Can I pay with Google here ?(Googleで支払えますか?)
店員:Sure, May I have your order please ? (はい。ご注文は?)

今回は「Hands Free」の体験が目的だったため、特に食べたいものはなかったので、とりあえずサラダとソーダを注文した。

店員:May I have your initial, please ?(イニシャルをよろしいでしょうか?)
筆者:TW. (TWです)
店員:OK, Thank you, have a nice day !(OK。ありがとうございます。良い1日を!)

これで終わりです。財布はもちろん、スマートフォンもポケットから取り出すことなく、イニシャルを伝えるだけで本当に“あっけなく”終わってしまいました。店舗を出てからスマートフォンを確認してみると、Hands Free専用アプリおよびメールで決済完了の通知が届いていました(図1)。実証実験中のHands Freeでは初めて利用した際には5ドルの割引が受けられるクーポンが用意されていますが、Hands Free初体験の筆者の場合も、請求額から5ドルが差し引かれていることも確認できました。

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図1:Google Hands Freeで支払った結果

Wi-Fi、ビーコン、位置情報、顔認識の技術を組み合わせて実現

もちろんHands Freeを利用するためには、専用アプリの事前設定が必要です。筆者は店舗を訪れる前に、次の操作/設定を済ませていました。まずGoogle Play Storeから「Hands Free」アプリケーションをダウンロードしてインストールしました。アプリを開き、Googleアカウントでサインインすると、いくつかの初期設定項目が表示されます。Googleアカウントを持っていなければ、先に作成する必要あります。

初期設定項目は、(1)利用規約への同意、(2)ロケーションサービスの利用許可、(3)氏名およびイニシャル、(4)本人特定のための顔写真のアップロード、(5)決済方法の作成もしくは選択の5つ。決済方法は、すでにGoogle Paymentを設定していれば、それを選択するだけで済みます(図2)。

s_HandsFree_2
図2:Google Hands Freeの事前設定画面など

一方、Hands Freeのサービスを提供する店舗側では、Hands Free対応システムのほかに、Wi-Fi環境、「BLE Beacon(Bluetoothローエナジー・ビーコン)と呼ぶデバイスの位置を把握する仕組みなどが必要です。顔認証のためにはカメラも設置することになります。

先に筆者の体験を通して利用者側から見たHands Freeの使い方を紹介しましたが、その裏側では、こんな手順が実行されています。

(1)店舗内のBLE BeaconがHands Freeアプリを搭載したスマートフォンを検知し「StoreID」を割り振る。
(2)Hands Freeでの支払の場合は、利用者のイニシャルを確認する。
(3)イニシャルをPOSレジなどに入力し、消費者が事前登録した写真を検索、表示する。
(4)店員は、表示された写真と,目の前にいる消費者を照合し、本人であることを確認する。
(5)本人確認ができれば決済処理を完了。消費者のHands Freeアプリに購入通知を送信する。

筆者が体験した、この手順では、本人確認は店員によるものですが、顔認識用のカメラを設置した店舗では、店頭にいる消費者を撮影した顔の画像と、事前登録した画像とを自動的に照合する仕組みが導入されています。その場合は、上記手順の(3)~(5)も不要になります。いずれの場合も店舗側のシステムでは、Hands Free対応のためのアプリケーション開発が必要です(動画2)。

動画2:Hands Free対応アプリケーションの開発者に向けた紹介動画

デジタルビジネスのための決済サービスの模索が続く

GoogleのHands Freeに先行し、既に実際のサービスとして提供されているものに、韓国のモバイル通信事業者であるSK Telecomの「T Pay」があります(動画3)。Hands Free同様に、スマートフォン向けのアプリケーションとして提供され、BLE Beaconを使っているのも同じです。ただクレジットカード情報はSK Telecomが管理し、毎月の携帯電話利用料の請求時に、店舗での利用料も合わせ請求する仕組みです。

動画3:SK Telecomの「T Pay」の紹介動画

現在、米国で主流の決済サービスは近距離無線通信技術を使ったNFC型のものです。日本の「おサイフケータイ」に相当するもので、「Apple Pay」(サービス開始は2014年10月)や「Android Pay」(同2015年9月)「Samsung Pay」「(2015年9月)の3種のサービスがあります。

ただ、米調査会社Phoenix Marketing Internationalの調査によれば、スマートフォンとクレジットカードの保有者のうち、これらの決済サービスの利用率はApple Payが17%、Android Payが10%、Samsung Payは11%であり、本格的に普及しているとはいえません。過去には、クレジットカード番号と顔写真を登録しておきレジでは写真による本人確認だけで決済する「Square Wallet」というサービスもありましたが、2014年に停止しています。

一方で、2016年5月16日には、米国最大の小売店であるWalmartが独自のモバイル決済サービスを発表しました。韓国のT Payは2016年3月15日にサービスを開始してから、わずか2週間で10万人以上の利用者を獲得。その65%が20~30代の若者だといいます。デジタルビジネスの展開において新たな決済手段は最も重要なプロセスであり、金融機関がFinTechにかける理由も、そこにあります。決済を巡る新たなサービスの開発競争が続きそうです。

執筆者:渡辺 拓郎(Digital Innovation Lab)

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