支払いは電子マネーのみが中国の最新スーパー、アリババも出資する盒馬鮮生

2017.01.10
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eコマースの拡大が止まらない一方で、米Amazon.comがリアルな店舗を出店するというニュースが話題になっています。そんな動きを先取りするかのような生鮮食品スーパーが中国では既に多店舗化を始めています。中国Alibaba(アリババ、阿里巴巴)も出資する盒馬鮮生(Hema Xiansheng:ヘマーセンシェン)が、それです。デジタルテクノロジーを最大限に活用しているようです。

盒馬鮮生は、中国・上海で2016年1月15日に最初の店舗を立ち上がった生鮮食品の専門スーパーで、2016年12月までに6店舗を展開しています。2016年3月にはAラウンドでAlibabaから1億5000万ドル(約170億円)の出資を受け、同グループの子会社になりました。Alibabaは盒馬鮮生を生鮮食品ビジネスに参入するための重要企業の位置づけです。Alibabaのジャック・マー(馬 雲)会長が提唱する「新流通(リテール)形態」を模索するためのモルモットだとも言われています(関連記事『Eコマースが消える、中国アリババのマー会長が予測する5つの新産業とは』)。

支払いは電子マネーの「Alipay」のみ、商品価格は実店舗とeコマースで同じ

マー会長も期待する盒馬鮮生の最大の特徴は、eコマースとリアル店舗の融合を図るO2O(Online to Offline)戦略を実践していること。しかも支払いは、リアル店舗もスマホアプリも、アリババが展開する電子マネーの「Alipay(支付宝)」しか受け付けません。Alipayは世界30カ国で利用できる電子マネーで、2015年6月時点で既に実名登録のユーザ数が4億人を越えています。

このAlipayに、支払いを一本化することで、全顧客の購買データをオンライン/オフラインを問わず一元的管理すると同時に、会社のキャッシュフローも統一して管理しているのです。リアル店舗を訪れた顧客に対しては、店員がスマートフォン向けに提供している自社アプリケーションをインストールするよう、うながしてもいます。来店客をeコマースに誘導しながら、データの獲得に拍車をかけるというわけです。

スマホアプリで注文した商品は、店舗から5キロメートルまでは30分以内に届きます(図1)。もちろん顧客は、店舗と宅配を組み合わせても構いません。店舗で購入した商品は持ち帰るほか自宅まで届けてもらえますし、スマホアプリで注文した商品は配送のほかリアル店舗の店頭で受け取ることも可能です。リアル店舗にはシーフードレストランが併設され、店内で購入した魚介類をその場で調理してもらって食べることもできます。

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図1:盒馬鮮生が提供するスマホ用アプリの画面例

盒馬鮮生が扱う生鮮食品の価格は、リアル店舗でもオンラインでも同じです。在庫数も、それぞれを個別に管理しているのではなく、共通で管理しているからです。それを可能にしている仕組みの1つが電子値札システムです(写真1)。商品の価格は、在庫状況やキャンペーンの有無によって頻繁に変更されますが、データの一元管理と電子値札システムにより、オンオフ両方の表示価格を変更しているのです。値札には価格のほかに、在庫数や陳列情報なども表示することで、棚を管理するための人件費や手作業によるミスの削減にもつなげています。

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写真1:盒馬鮮生の店頭に設置されている電子値札

在庫データはオンとオフで一元管理

在庫データは、実はリアル店舗の在庫データしかありません。スマホアプリで参照できる在庫数は、近隣店舗の在庫数です。スマホアプリを立ち上げると、GPS(全地球測位システム)により配送サービスを提供できる範囲にある店舗だけが表示され、その店舗にある商品だけが購入対象になります。逆に、リアル店舗で販売できる商品数は、オンラインでの販売数の影響を受けることになります。

スマホアプリで注文を受けた商品は、店頭に並べている商品などをピッキングして配送しますが、30分以内に届けるための工夫もあります。店舗そのものが高速に作業できるように設計され、自動化・機械化が図られているのです(写真2)。例えば天井からつり下げられている配送用のレールが、その1つ。受注した商品は商品保温バッグに入り、このレールでバックエンドにある広さ300平方メートル弱の荷さばき所に届き、専用の配送箱に入ります。ここまでを10分以内に完了します。さらに、配送経路の選択には機械学習を取り入れ、より効率良く配送できるように改善しているのだそうです。

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写真2:書品を短時間で届けるための店内の仕掛け。左から、天井を這うレール、棚近くのレール、搬送用のバッグ

リアル店舗の役割を明確にする必要も

こうしたデジタルを使った取り組みにより、盒馬鮮生は従来の生鮮食品スーパーとの差異化に成功しています。CEOである侯 毅 氏はそれまで、中国eコマース大手、京東(Jingdong)の物流部門の幹部でした。同氏が2016年中旬、メディアの取材に答えたところによれば、上海にある1号店の取引件数は1日に約1万件に上り、うち約4000件がスマホアプリからの注文だそうです。取引1件当たりの客単価は70元(約1300円)で、粗利20%前後あるとしています。2017年には首都・北京への出店を予定しています。

O2O戦略自体については日本でも話題になった時期がありましたが、まだまだ本格的に実践できているというまでには至っていません。どうしてもデジタル先行になりがちなO2Oですが、リアル店舗の比率が高い日本企業にすれば、改めてリアル店舗の役割を明確にする必要があるのかもしれません。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)

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