中国で伸びるスキマ時間学習、700万人が学習する「得到(デタオ)」アプリとは

2019.05.21
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

義務教育や基礎教育を終えれば、もう学習は終わりといった時代は終わりました。レカレント教育などを含め“生涯学習”の時代が始まっています。一方で、ネット時代になり、ソーシャルアプリやゲームなど、いつでも・どこでもコミュニケーションや遊びができ、なかなか腰を据えて学ぶということも難しくなっています。そうした中、中国で700万人以上が利用しているという学習用スマホアプリがあります。「得到(デタオ)」です。一体、どんな学習アプリなのでしょうか。

スマホ上で利用できるコンテンツのほとんどは文字情報です。最近は動画コンテンツも増えていますが、長い記事や長時間の講演や講義を見続けるのは、みなさんにしても、なかなかに厳しいのではないでしょうか。ところが得到は700万人以上が使い続けているスマホアプリです。スキマ時間でも学べるような工夫が凝らされているからです。

年越し講演イベントには8000人が参加

アプリの工夫を見る前に、創業者の罗振宇 氏を紹介しましょう。同氏は、中国テンセントが提供するメッセンジャーアプリ「微信(WeChat)」上で『罗辑思维(ロジカルシンキング)』というトークショーを運営する、中国では著名なスピーカーです。1年365日休むことなく毎日、10分程度のトークショーを発信し続けています。

2015年に得到(デタオ)をリリースして以降は、毎年12月31日に「時間的朋友(時間の友達)」と題した年越し講演を開いています。2015年は北京の国家水泳センターで、2016年が深センの春繭スタジアム、2017年は上海のメルセデス・ベンツアリーナ、そして2018年は再び深センの春繭スタジアムで開きました。それぞれの受け入れ人数は、6000人、8000人、1万人、8000人です。同講演のチケットはプレミアム価格がつくほどの人気で、なかなか手に入りません(動画1)。同氏は第20回まで開催するとファンには約束しています。

動画1:「時間的朋友(時間の友達) 」での罗振宇 氏の講演の様子。動画が2017年末のもの(3時間53分27秒)

そんな罗氏が開発・提供するのが得到(デタオ)です。得到は利用者を引きつけるために大きく3つの工夫をしていると筆者は考えます。(1)講師の顔が見える講座を展開、(2)短い講座を繰り返すことで習慣化をうながす、(3)学校に通っているような雰囲気を作り出す、です。以下で3つの特徴を具体的に見てみましょう。

特徴1:講師の顔が見える講座を展開

得到の講座数は合計103個(2018年12月時点)あり、それらが6つの「学院(カテゴリ)」に分類されています(図1)。講座一覧には、その講座の購読者=受講者数と購読料金=受講料が表示されています。さらに得到では、講師の個人名が前面に押し出され、タレント性が強調されています。


図1:「得到(デタオ)」のトップ画面と講座一覧など

講師には知名度が高い文化人や専門家などを多数ラインアップし、コースの選択肢を広げています。日本人でたとえれば「今でしょ!」で有名になった林 修 氏が源氏物語の講座を担当しているようなイメージです。人気の講座になれば、34万人弱が受講する講座もあります。

受講者にすれば、講座内容(質)に信頼が持て安心して購読できます。講師の側にしても、より多くの受講者数を獲得できる可能性が広がります。これを前提に、いずれの講座も受講料は安価に設定されています。

たとえば、ある講座の年間購読料金は199元。日本円にすれば3200円弱(1元16円で換算)で1日10円も掛かりません。なので受講者の多くが、複数の講座を選択しています。「そんな安くて講師料はどうなるのか」との疑問が湧くかもしれませんが、10万人規模の受講生を抱える人気講座であれば年間3億円を超える売り上げが得られます。

特徴2:短い講座を繰り返すことで習慣化をうながす

得到の講座は基本、年単位ですが、毎日新しい内容が届きます。文字やオーディオによる勉強ができます(図2)。読んだり聞いたりが繰り返せるので理解も深まります。すでに終了した講座の内容も、料金を支払えば、いつでも読めます。


図2:講座内容の例とアプリ内仮想通貨「得到貝」

米Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏はかつて「アプリには“歯ブラシ機能”が必要だ」と語っています。毎日繰り返し使うことが習慣化につながっていくからです。Googleの検索機能も毎日使っているうちにデフォルトになりました。

得到でも、受講者の学習意欲を維持するためにテーマを定期的に変更したり、受講者のコメントをピックアップして掲載したりもしています。ライブ中継される講座もあります。あの手この手で受講者を飽きさせないようにしているのです。

受講料もアプリ内の仮想通貨「得到貝」にチャージしておけば、より簡単に支払えます。クレジットカードのほか、「Alipay(支付宝)」や「WeChatPay(微信支付)」とも連携しています。

さらに、毎日のスキマ時間で利用できるコンテンツにオーディオブックがあります(図3)。数百ページの本を読んだ解説者が内容をダイジェストして教えてくれます。そのオーディオブックが毎日1冊届くというコースもあります。オーディオブックの受講料は年間365元(6000円弱)、1日当たり1元(16円)です。


図3:オーディオブックや関連商品も販売している

電子書籍を購入し得到上で読むこともできます。オンラインストア機能もあり、紙の書籍や、本以外も関連商品も購入できます。得到は利用者数が多いだけに、出版社の期待も大きいようです。多くの人の目に触れることは有効なプロモーションになりますし、利用者自体の購入のほか、友人へのギフトといった商流も見込めます。

特徴3:学校に通っているような雰囲気を作り出す

講座を修了できれば「卒業証書」が提供される例は少なくないと思いますが、得到では受講中も種々の「勲章(メダル)」が授与されます(図4)。各コースのステップごとのほか、受講生のランク別や学習時間数によっても授与されます。賞金が出る勲章もあります。


図4:学校に通っているかのように感じさせる工夫の例

教室にいるように感じられるように、ノート機能や、他の受講生をフォローする機能やコメント機能などもあります(図5)。ノートには、参照履歴や読んでいた記事、自身の学習内容などを記録できます。その内容はアプリ内で公開でき、他の受講生から「いいね!」が送られたりします。


図5:講師や他の受講者とのコミュニケーションが可能

フォロー機能では、自身がフォローしている人数と、フォローされている人数が表示され、コメント機能を使えば講師ともコミュニケーションが図れます。講座の内容についてコメントしたり感想を書き込んだりすれば、それに対して他の購読者からコメントを得ることも可能です。これはノートに対しても同様にコメントが得られます。

いかがでしたでしょうか。中国のスマホ利用と言えば、本サイトでも、独身の日の信じられないほどの量のEC(電子商取引)や自治体による市民向けアプリなどを紹介してきました(関連記事1、関連記事2)。同様に教育分野でも、さまざまな工夫が凝らされたスマホアプリが提供されており、何百万人が毎日、勉強しているのです。皆さんはスマホで、どれだけ教育用コンテンツを見ているでしょうか。

執筆者:彭 聨凱(Digital Innovation Lab)

EVENTイベント