病人をAIで助けたい、中国の画像解析ベンチャーInfervisionが医療をテーマに選んだ理由

2018.02.13
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中国・深圳で2015年に創業した医療系ベンチャーInfervision(推想科技)が投資家やメディアの注目を集めています。AI(人工知能)を使ってX線やCTの画像を読み取り病変の存在を指摘します。2017年には、ベンチャーキャピタルのQiming Venture PartnersがBラウンドで1億2000万元(約20億円)を出資しました。Sequoia Chinaなども参加しています。これは同年のヘルスケア分野の投資では最大級でした。2017年9月には日本にも上陸しています。同社の設立経緯やこれからの取り組みなどを国際部に属し日本事業を担当する周 暁姸さんと郭 暁㬢さんに聞きました(聞き手は丁 晟彦=Digital Innovation Lab)。

――どんなサービスを提供していますか。

周 当社のサービスは、AIを使った医療画像の診断支援です。レントゲン写真やCT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影法)画像を読み取り、腫瘍や癌といった病変が発生している部分をマーキングし医師に診断が必要なことを伝えます(写真1)。


写真1:InfervisionのAIを使った医療画像診断の例(同社資料より)

現在、AIによる読み取りが対応しているのは、肺のX線画像とCT画像です。腫瘍の可能性がある結線や骨折の有無などをAIで自動的に判断します。同じ仕組みを心臓に対しても実現できるよう研究開発を進めていますし、MRI(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像法)画像も対象にしようとしています。さらに中国では、脳の画像診断の研究も始めました。

病変の存在は一般に、放射線科医が画像を読み取り判断していますが、診察数が増える中で大量の画像を見て小さな病変を見つけることは医師への負担も大きいですし、時間がかかります。当社のサービスを利用すれば、人の目では見逃しがちな小さな病変も見逃しませんので、癌などの早期発見にもつながります。

郭 CT画像の検査にかかる時間を大幅に短縮でき、その精度も高いので、医師は、その結果を参考にしながら治療方法の検討や治療そのものに集中できるようになります。早期発見による治療に大いに貢献できるはずです。

――放射線科医には大きな負担が掛かっているわけですね。

郭 中国は人口が多いので、1人の放射線科医が診察しなければならない患者数も多いのです。13億人の人口に対し、放射線科医の人数は8万人で、毎日70〜100人分の画像を見ていると言われています。

周 米国は人口2億5000万人に対し放射線科医は4万人です。これに対し日本は1億人に対し5000人の放射線科医しかいません。毎日20〜50人分の画像をみています。ただ日本はCTスキャナーの設置台数は世界一です。欧州全体と同等、米国の倍の台数が導入されています。こうした数字だけをみれば、高齢化が進むなかで日本は、AIによる画像診断ニーズが高まっても不思議はありません。当社が中国の次に日本に進出したのは、このためです。

――創業者でありCEO(最高経営責任者)のCHEN Kuan(陳 寛)氏は、なぜ医療分野で起業したのですか。

郭CEOのCHEN Kuan(陳 寛)は、米国のシカゴ大学で人工知能のDeep Learningを研究していました。いくつかの応用先を模索していたのですが、中国にいた親戚が病気になったのをきっかけに「病人を助けるために自分の専門技術であるAIを活用したい」「AIを医療画像分野で活用したい」と考えたようです。そこから医師の協力を得て、現在のサービスの元になる仕組みを開発しました。

周 当社がこのサービスで考えているのは、医師をAIで代替しようという考えではなく、医師の作業負荷を減らすことです。現在、医療判断の80%は医療画像に基づいていますが、AIは画像解析との相性が良く、その特徴を医療分野で十分に生かせると考えています。

今でこそ、画像診断にAIを適用しようというベンチャー企業は多数存在していますが、当社が創業した2015年には、そうした会社はほとんどなく、この分野でのパイオニアだと自負しています。実際、中国では当社のサービスは既に50以上の大病院が採用し、25万人分の患者画像を扱ってきました。これは中国で最大規模です。

――画像を診断するAIは、どのようにして学習させているのでしょう。

周 中国トップクラスの病院が持っていた数十万人分のデータを使って学習させています。認識結果が正しいかどうかは、複数人のトップクラスの医師に判断してもらっています。そのうえで、いくつかの学習モデルを構築し、そのモデルを実際に画像を診断する病院に置くサーバー上で稼働させています(写真2)。


写真2:病院に設置するInfervisionのサーバー

こうした形を採っているのは、CT画像などは、それを撮影するCTスキャナーのメーカーやソフトウェアのバーションなどによって得られる結果がかなり違ってきます。ですので、より高い精度を出すためには、導入する病院の状況を調査し、最適化を図る必要があるのです。

――日本では今後、どのようにビジネスを展開していきますか。

周 2017年末に、画像診断に特化した医療法人CVICおよびCVイメージングサイエンスと、心臓を対象にした画像診断へのAI適用と、市場への早期導入を図るために提携しました。すでに東京・飯田橋にある「CVIC心臓画像クリニック飯田橋」において試験導入を始めています。

東京都の「アジアヘッドクォーター特区」の対象にも選ばれており、2018年春から新宿に事務所を構える予定です。そこを拠点に、大規模病院との学習モデル開発にも近く取りかかります。日本では遠隔診断に向けたニーズが強いので、「読影センター」といった場所への導入についても話し合いを始めています。

また医療機器としての認証を得るために米国の食品医薬品局(FDA)などに申請していますが、日本でも医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請しています。


写真5:Infervisionの周 暁姸さんと郭 暁㬢さん、およびインタビューにお邪魔した富士通のメンバー(村尾 晃平、宮川 武、丁 晟彦)

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)、志度 昌宏(DIGITAL X)

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