店舗の人手不足を解消へ、米ウォルマートと米Targetが期待する棚卸しロボット

2018.01.25
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物流業界だけでなく、外食産業や小売業などでも人手不足の指摘が続いています。ある外食企業は人手不足から2018年のお正月の営業を取りやめました。「働き方改革」の動きもあるだけに、実店舗の運営効率をいかに高めるかが死活問題になります。そんな店舗運営にロボットを利用する動きが欧米で始まっています。今回は,店舗運営の中でも「棚卸し」のためのロボット活用を紹介しましょう。

米ウォルマート:店頭スタッフを棚卸しからカスタマーサービスへ

ロボットを使って店舗運営の効率を高めようとしている小売業の1社が、米スーパー大手のウォルマートです。陳列棚の管理を対象に、店頭でのロボット活用に向けた実験を始めると、2017年10月26日に発表しました。既にアーカンソー州とペンシルバニア州、カリフォルニア州にある少数の店舗で利用を始めています。そこでの結果に基づき、全米50カ所にまで導入店舗を広げる計画です。

ウォルマートが導入しているロボットは、店内の通路を移動して陳列棚をスキャンして、在庫切れの商品がないか、表示されている価格は正しいか、ラベルの張り間違いはないかなどを確認します。これらは通常、店舗スタッフが巡回し繰り返している業務です。ここをウォルマートはロボットに置き換え、人的資源をカスタマーサービスなどへ集中させたい考えです。

同社が使っているロボットは、米Bossa Nova Roboticsが開発した棚管理ロボットです。煙突のように伸びているのがスキャナー部分で、陳列棚の状況を一段ごと読み取って行きます(動画1)。

動画1:米Bossa Nova Robotics製の棚管理ロボットの紹介ビデオ(39秒)

このロボットは、3D(3次元)画像処理により周囲の状況を認識し、通路に積まれたダンボールや、放置されたワゴンなどの障害物は自動で避けながら移動します。通路に顧客やスタッフがいれば、スキャン作業を一時中止しますし、障害物によって通路を移動できない場合は、いったん引き返し別の通路を選ぶこともできます。日本の家庭でも使われているお掃除ロボットの「ルンバ」のように、充電が必要になれば自分で充電ドックに戻ります。

米Target:クラウド使い店頭在庫をサプライヤーとも共有

ウォルマートよりも早く、店舗でのロボット活用の検証に乗り出しているのが、総合ディスカウントストア大手の米Targetです。2016年にサンフランシスコの店舗で、在庫管理プロセスを改善するためにロボットを導入しました。

Targetが採用したロボットは、Simbe Roboticsが開発する「Tally」。小売業に特化したロボットで、ウォルマートのBossa Nova製品同様に、自走しながら陳列棚をスキャンし、商品の品切れや陳列数が少な過ぎないか、あるいは商品の配置ミスが発生していないかなどをチェックします(動画2)。1度の充電で12時間稼働し、充電が必要になれば、やはり自動的に充電ドッグへ戻って充電します。

動画2:Simbe Roboticsの「Tally」の紹介ビデオ(42秒)

Simbe Roboticsは、Tallyによる棚卸支援に加え、商品のサプライヤーやベンダーを含め在庫管理の適正化に向けたサービスも提供しています。具体的には、Tallyが取得したデータをクラウドに送信。クラウド上のデータは、タブレット端末などを使って関係者が常に確認できます。商品のカテゴリや分類の別にデータを分析することで、店頭の陳列棚の空き状況が分かり、それを小売店とサプライヤーが共有できるのです。そこから、商品の在庫状況に合わせて、次回配送時の供給量を調整することも可能になります。

Tallyは、こうした分析サービスの利用料を含めて月額で貸し出しされます。料金は、管理する商品数や店舗の広さ、棚卸業務の頻度によって変動します。コンビニエンスストア程度の店舗なら1台、広い店舗なら複数台のTallyを導入することになります。

画像認識によりバーコードやRFIDより安価に在庫を把握

小売業における店頭業務において、棚卸しや在庫管理の業務が全体の3割ほどを占めているとされています。店頭スタッフの人数をこれまで通り確保できなくなれば、棚卸や在庫管理にスタッフが占有され、本来なら人員を割り振るべき接客などの顧客サービスに人的資源を割けず、顧客満足度を下げるといったことにもなりかねません。

これまでも棚卸しや在庫管理の業務効率を高めるために、さまざまな仕組みが考えられ使用されてきました。バーコードやRFID(ICタグ)などです。これらの仕組みと比べ、棚卸しなどに対応したロボットは、自動で店内を移動することに加え、画像認識技術によって陳列棚の商品数を把握します。その結果、これまでより安価に導入できるようです。

ウォルマートもTargetも、店舗にロボットを導入することで、店頭にある商品の状況をリアルタイムかつ、より正確に把握・分析することで、スタッフを棚卸し/在庫管理の業務から顧客サービスにシフトさせることを狙っています。ロボットに任せられるところは任せ、人は、より付加価値が高いサービスに携わるというわけです。

日本でもホテル業界などがロボットの導入を始めていますが、スーパーやコンビニの店頭で、棚卸しに携わっているロボットを目にする日は、そう遠くないのかもしれません。

執筆者:小川 貴史(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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