眼は口程にものを言う−。センサー付きメガネ「JINS MEME」が心の動きを“見える化”

2017.06.01
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リストバンド型や時計型などウェアラブルデバイスが普及し、それらを身に付けている人を目にする機会が増えています。一方で、期待が高い割りに見かけないのがメガネ型のウェアラブルデバイスです。眼の前に各種情報を表示する機能や、その内容が普及のネックになっています。そうした中、センシングに特化したメガネ「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」をメガネチェーン店のジェイアイエヌ(JINS)が発売。MEMEを使って心の動きを測るスマホアプリが登場しています。メガネをかけるだけでなぜ、心の動きが分かるのでしょうか。

眼球と身体の動きを検出するセンサーを搭載

JINS MEMEの上位モデルである「JINS MEME ES(Eye Sensing)」は、眼球の動きと身体の動きを検出できるセンサー付きメガネです。眼球の動きを捕捉する「3点式眼電位センサー」をノーズパッド(メガネの鼻近辺の部分)に組み込んでいるほか、X・Y・Zの3軸に対応した加速度センサーと、同じく3軸に対応したジャイロ(傾き)センサーを搭載しています。JINS MEMEにはスポーツ用の「MEME MT(Motion Tracking)」がありますが、こちらは眼電位センサーを搭載していません。

動画1:「JINS MEME」の紹介ビデオ

眼電位センサーで分かるのは、視線や瞬きです。人間の眼球は、黒目の部分にある角膜がプラスの電位を帯びています。視線を動かしたり瞬きをしたりすると、この角膜近くの皮膚の電位に変化が生じるため、その電位の変化を測ることで眼の動きが分かるのです。一方、加速度センサーとジャイロセンサーからは身体の動きが分かります。人間の頭は体軸線上にありますが、メガネはその頭部に掛けます。つまり、両センサーを体軸上に取り付けたことになるため、身体の動きを検出できるのです。JINSは両センサーを合わせて「6軸センサー」と呼んでいます。

このMEMEを使ってJINSは、オフィスの生産性向上サービス「JINS MEME BUSINESS SOLUTIONS」の提供を始めました。MEMEに対応した専用のスマホ用アプリを使うことで、オフィスワーカーの“集中力”を可視化。その集中力に基づいて、電話やメールといったコミュニケーション手段を自動で切り替えたり、組織の生産性を高める働き方を提案したりします。JINSはオフィスワーカーの生産性を改善するメガネとして、液晶画面から出るブルーライトを軽減する「JINS SCREEN」や、ドライアイ対策用の「JINS Moisture」、花粉症対策用の「JINS 花粉Cut」を販売していますが、MEME BUSINESS SOLUTIONSは、デジタルの力を借りた生産性改善策というわけです。

JINSでは、“集中力”のほかに、MEMEで測定したデータから心の動きなどを可視化するスマホ用アプリを提供しています。そのいくつかを紹介しましょう。

集中力を測る「JINS MEME OFFICE」

MEME BUSINESS SOLUTIONSが前提にする“集中力”を測るためのスマホ用アプリが「JINS MEME OFFICE」です。MEME OFFICEでは“集中力”を「頭」「心」「身体」の3つのパラメーターで可視化するとしています。眼球や身体の動きから、これらを導き出しています。「心」については、眼球の動きや瞬きの回数や間隔などから、計算しているとみられます。緊張すると眼を見開くとか眠くなるとまぶたの動きもゆっくりになるといった現象が起こるからです。

3つのパラメーターについてOFFICEは、「今」「量」「質」の3つに分類し記録します(動画2)。「今」は集中状態をリアルタイムに表示するもの、「量」は集中できた時間の総和、「質」は1日のうち、いつ集中できたかを可視化するものです。いつが分かれば、その時の作業状態と照らし合わせることで、集中できる状態などを把握できるようになります。

動画2:「JINS MEME OFFICE」の紹介ビデオ

MEME OFFICEにはApple Watch用のアプリもあり、集中力が低下してくると休憩のサインを送ることができます。集中力を維持する方法には、「25分集中して作業したら5分休む」という「ポモドーロテクニック」などがありますが、これは作業時間を管理しているに過ぎません。MEME OFFICEなら、センサーで得られた情報を基に、実際に集中力が低下しているとみられる時にアラートを出しリフレッシュを促せます。

心と身体の状態やバランスを記録する「JINS MEME」

メガネと同名の「JINS MEME」は、心と身体の状態を記録するためのスマホ用アプリです。それぞれを「アタマ年齢」「カラダ年齢」という2つの指標で表示します。アタマ年齢は、眼の動きの情報を元に「集中」「活力」「落ち着き」という3つの状態を、年齢に換算して可視化したもの。アタマ年齢が若ければ生産性や創造性に優れ」、アタマ年齢が老いていれば生産性・創造性が低いということだそうです。

一方のカラダ年齢は、頭の動きに基づくもので、「活動量」「姿勢」「安定性」といった状態を、やはり年齢に換算して可視化します。実際には、歩行時の動きや姿勢、座っているときの姿勢などを数値化するもので、身体年齢が若ければ、姿勢よく安定して歩行できており、そうでない場合はカラダ年齢が老いて表示されます。

マインドフルネスに対応した「JINS MEME ZEN」

最近話題の「マインドフルネス」に対応したスマホ用アプリもあります。「JINS MEME ZEN」です。予防医学研究者の石川 善樹 博士が監修しています。マインドフルネスは、今起こっている内面的あるいは外面的な経験に注意を向ける心の動きのことで、瞑想のようなエクササイズによって開発できるとされています。最近はマインドフルネスが身体や心に良い結果をもたらすとう科学的な検証結果の発表も増えています。

MEME ZENは、日常生活においてマインドフルネスを開発するためのエクササイズのためのアプリになります。眼の動きが自律神経の変化を反映するとの考えから、眼電位センサーによる計測結果を心の動きに換算。この心の動きが安定するようにトレーニングします。トレーニングには、集中力を高めるトレーニングと想像力を高めるトレーニングの2種類があります。MEME ZENで集中力を高められれば、例えば周囲の雑音に負けずに作業を続けられるようになるかもしれません。集中力が高まってくれば、常にクリエイティビティを求められる創造力を高めるトレーニングの効果も出てくることでしょう。

米Appleのスティーブ・ジョブズ氏が禅から大きな影響を受けたことは有名ですが、最近では米Googleが、最新の脳科学に基づいて開発したリーダーシップ能力を高めるプログラム「Search Inside Yourself(SIY)」にも禅の要素が採り入れられています。日本でも、京都府にある春光院の川上 全龍 副住職がMEME ZENを使ったマインドフルネスプログラムを開催しています。

心の状態と仕事の効率のつながりを図る

いかがでしたでしょうか。「眼は口程にものを言う」という諺(ことわざ)もあるように、眼の動きを測ることで、心の状態など様々なことが分かるのですね。

ウェアラブルデバイスの市場はジワジワと伸びており、日本での2016年の出荷台数は前年比25%増の1億240万台になりました(IDC Japan調べ、発表資料)。JINS MEMEが示すように、ウェアラブルデバイスが持つ種々のセンサーで取得したデータを活用することで、私たちの行動や心の動きが可視化されます。そうした結果と、実際の活動状況などを照らし合わせれば、新しい働き方が見えてくるかもしれません。

実際、JINSが実施したOFFICEの検証レポートは、「自分のオフィスだけではなく場所を変更することで集中力が高まっているのではないか」という調査結果を報告しています。ウェアラブルデバイスの普及は、これからの働き方に大きな変革をもたらすかもしれません。

執筆者:福永 渉(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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