コニカミノルタのIoT戦略、固有の技術やノウハウを見える化し競争力に変える

2018.02.20
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「コニカ」と「ミノルタ」というカメラ大手が合併して誕生したコニカミノルタ。合併時に存在したB2C(企業対個人)の事業はほぼ消滅した今は、複写機や医療関連などB2B(企業間)ビジネスに完全に舵を切っています。そんなコニカミノルタが製造業としての自己改革を続けています。IoT(モノのインターネット)活用のその1つ。どんな姿勢で取り組んでいるのでしょうか。

どんな会社も固有の技術やノウハウは持っている

コニカミノルタが自社の製造現場で実施しているIoTへの取り組みについて、同社の常務執行役で全社の生産を担当する生産本部長の浅井 真吾 氏が説明しました(写真1)。東京ビッグサイトで2018年1月17日に開かれた「スマート工場EXPO」での特別公演でのことです。浅井氏の講演内容から、コニカミノルタのIoTへの取り組みを紹介します。


写真1:コニカミノルタの常務執行役 全社生産担当 生産本部長の浅井 真吾 氏

まず浅井氏は、「どんな会社でも企業が固有技術やノウハウを持っている」と断言します。そのうえで、企業に差が出るのは、「その技術やノウハウを“見える化”しているかどうか。そして改善に向けて基礎データを活用できているかどうか」だと指摘します。

具体的には、旋盤加工の現場であれば、刃物の当たり具合や回転速度を確認するのは当たり前なことですし、熟練者であれば機械の動作音や癖に合わせて調整するといったノウハウを持っています。そうしたノウハウをQC(品質管理)活動として横展開したり教育を続けたりしているわけですが、ここの“見える化”と“データ活用”が重要だというわけです。

コニカミノルタは、ここにIoTを適用しています。浅井氏は自社でのIoTについて「今は『IfT』、すなわちInformation from Things(インフォメーション・フロム・シングス)の時代」だと語ります。

ロボットとデータで人や場所に依存しない製造現場を作る

IfTにおいてコニカミノルタは、(1)人にしかできないことを人がやり、人でもできることはロボットがやる、(2)デジタルデータが取れているものをつないでいく、の2つの考え方を基本にしています。

(1)の人にしかできないことを人がやり、人でもできることはロボットがやるということは、「人や場所、変動に依存しない」(浅井氏)という意味です(図1)。人に依存していると、「行き着く先は、人件費が安い国での製造」(同)ということになるからです。


図1:コニカミノルタはIoTで“人・場所・変動”に依存しない生産を目指す(同社講演資料より)

そこでコニカミノルタでは、現場にロボットを導入し、人に依存しない生産を目指しています。ロボットやIoTを活用し、できる限り人や場所から脱却しようというのです。浅井氏は、「我々ができることは“決める”こと。ロボットを入れよう、データを取ろう。見える化しようといったことを決めていけば、品質は上がり人件費は下がる」と強調します。

(2)のデジタルデータが取れているものをつないでいくとは、現場の意識改革を図るには、「ただ感情に訴えても人は動いてくれない」(浅井氏)からです。さまざまな状況をきちんと測定し、デジタルデータとして“見える化”することで、部品の品質や機械の故障状況を確認しながら、ダウンタイムの最小化や生産工程の効率化を図る必要があるとの指摘です。

たとえば、採寸につかうノギスもデジタルノギスに切り替えれば、採寸という行為は同じでもデータを自動的に取得できます。プラスチック部品の製造においても、そうやって採取できるデータを管理すれば、温度の変化や時間の経過に伴い数値が変わるため、不具合の発生を予知できるようになり「そろそろ金型をメンテナンスしよう」という判断が可能になります。

「数値の確認は、品質保証の革新につながる。検査値の上限・下限を決め、オンライン検査で不良品が減ることが分かれば、現場は邁進し、生産性向上につながる」と浅井氏は強調します。

間接業務(文書作成、閲覧、管理)における取り組み

こうした考え方は、工場のライン業務などに限りません。「会議に『とりあえず初期から携わっている人を呼ぼう』という考え方はだめだ」と指摘する浅井氏からみれば、「「ペーパーワークなど間接業務にも改善のネタが落ちている」といいます(図2)。


図2:コニカミノルタの間接業務におけるIoTの取り組み(同社講演資料より)

たとえば、文書の削減に向けては、「『本当に文書がいるか考えよう』と言っても誰も考えない。むしろ『文書を50%減らしてください』『会議を半分にしてください』と指示すれば、みんなが考えるようになる」と浅井氏は言います。具体的な数値が実際の行動につながるというわけです。

作業手順を示すマニュアル動画なども、完成した動画を見ても、それが必要かどうかの判断はなかなか難しいもの。ですが、そういった状況も「閲覧状況のログを取れば、どこをどれだけ見ているかが分かり、要不要の判断がつく」(浅井氏)のです。

IoTは製造業にとって生産のための“道具”にすぎない

直接業務、間接業務を問わず、さまざまな動きをデジタルでつなげていくのが、コニカミノルタのIoT戦略です。生産性の向上には、(1)品質の安定、(2)リードタイムの短縮、(3)競争力の強化が必要ですが、浅井氏は「そのためのデジタル化は黙っていても加速していく。そのうえで、どうやって他社と差別化するかの段階にきている」と指摘します。

コニカミノルタは、その差別化方法として、次の3つを挙げます。

・デジタルデータをどのようにつなぎ新しい価値を見いだしていくか
・働き手のマインドをどうかえていくか(人材の育成)
・ITやデジタルの技術者の採用はますます困難になるため、今いる人材をどうIT/デジタルに切り替えさせるか

浅井氏は「IoT、IoTといって難しく考える必要はない。製造業にとっては生産のための道具を変えることに過ぎず、道具を変えて自動化を図ることだととらえれば、気持ちが楽になるかもしれない」とアドバイスします。いずれにしても、その大前提だと浅井氏が指摘する、各社の固有技術やノウハウを今一度、棚卸しし、競争力に変える土台を築くことが重要でしょう。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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