誕生から50年を迎えるコンビニエンスストア、ローソンがテクノロジーで描く次世代像とは

2017.04.18
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コンビニエンスストア(コンビニ)は今や、私たちの生活に欠かせない存在になっています。1970年代に産声をあげて以来、店舗数は増え、規制緩和を味方に酒やタバコ、米や切手など取扱商品も拡充し、売上高も伸びてきました。そうした中で業界大手のローソンがデジタルを活用したイノベーションに取り組んでいます。一体、どんなコンビニ像を描いているのでしょうか。

ローソンは「社会変化対応業」

ローソンのデジタル戦略について、同社の執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼 次世代 CVS 推進本部 副本部長であり、ローソンデジタルイノベーションの代表取締役社長でもある白石 卓也 氏が2017年3月、「リテールテックJAPAN」(主催:日本経済新聞社)の「スマーター・リテイリング・フォーラム2017」に登壇し、『ローソン次世代コンビニを実現するテクノロジー活用 ~AI、ロボティックス、カメラ・センサー、RFID~』と題して講演しました(写真1)。


写真1:ローソンの執行役員 業務システム統括本部 副本部長 兼 次世代 CVS 推進本部 副本部長であり、ローソンデジタルイノベーションの代表取締役社長でもある白石 卓也 氏

白石氏はローソンを「社会変化対応業」と呼びます。すなわち「時代の変化、顧客ニーズの変化に対応し続けるビジネス」(同)という位置付けです。現時点で優先度が高い取り組みは、(1)地域ごとのニーズに、どう対応するか、(2)人口不足によるアルバイト店員をどう確保するか、の2つです。特にアルバイト店員の不足は、経営層も一番の課題だと認識しており、「学生やシニア、外国人の方々に、いかに気持ちよく働いてもらえるかに腐心している」(白石氏)ところです。

ただ目前の課題だけでなくローソンの将来を見据えるとき、白石氏が注目企業として挙げるのは、Apple、Google、Microsoft、Amazon.com、Facebookの米国企業5社。その理由を白石氏は、「いずれも『プラットフォーマー』です。ローソンは、いかにして『社会のプラットフォーマー』になり得るかを常に考えている」からだと説明します。社会のプラットフォーマーとは、「顧客にとって“なくてはならない存在”」(同)のこと。その実現に向けてローソンは、次世代の業務プロセスや情報システムの実証実験などに取り組んでいます。

ロボットやRFIDの活用でサプライチェーンを最適化

その1つが、レジの無人化実験です(発表資料)。2016年12月には、顧客自身が商品のバーコードを読み取れば、袋詰めと精算を実行する完全自動のセルフレジ「レジロボ」の実証を開始。2017年2月からはRFID(ICタグ)を商品に付けることでバーコードの読み取り自体を不要にすることも実証しています。RFIDの実証実験では、「1つ10円のチョコレートにも「価格が同じくらいのRFIDを手貼りするなど、約2万点ある全商品にRFIDを添付し陳列した」(白石氏)といいます。

RFIDについて白石氏は「関連する様々な事業者と情報を共有すれば大きな可能性が広がる」とみています。「商品の一個一個を管理できるプラットフォームが実現すれば、すべてのステータスを一個一個把握できる」からです。それにより解決できる課題として白石氏は以下の項目を挙げます。

●製造
・異物が混入したロットから何個売れたか、在庫はどこにあるかを瞬時の把握することによる品質の補償
●物流
・棚卸しの効率化
・個品状況のリアルタイム把握
・配送の効率化
・誤配の防止
●販売
・廃棄ロスの削減

これらの課題はローソン単体で解決できるわけではありません。「取引先などを巻き込み、標準化を進めることでイノベーションが起こせる」と白石氏は断言します。

AIチャットボットで新たなコミュニケーションが可能に

もう1つの実験が、AIチャットボットの「AIあきこちゃん」です。既に、ソーシャルメディア「LINE」でローソンの顔として実際に動作しており、新商品を勧めたり、近くのローソンを紹介したりします(写真2)。ローソンのLINEアカウントは「ともだち」の数が2000万を超え「アクティブなユーザーも50万~70万人」(白石氏)を抱えます。

写真2:ローソンのAIチャットボット「AIあきこちゃん」の画面例

AIあきこちゃんの効果として白石氏は(1)学習による精度の向上、(2)同時に大勢とのやり取り、(3)昼夜を問わない応答可能時間、(4)本音のやり取り、を挙げます。AIにより、AIあきこちゃん雑談精度は高まっており、「将来は店舗の近くにある病院やイベント、もしかすると金融商品まで教えてくれるかもしれない」(同)と言います。AIゆえに、10万人でも100万人でも同時に相手ができますし、朝・昼・晩を問わず会話ができます。ユーザーの利用時間を見ると「朝の通勤時間帯に会話している会社員や、夜中におそらくベッドに入りながら話しているユーザーもいる」(同)ようです。

そして何より重要なのが、「顧客の本音が聞ける」(白石氏)ことです。コールセンターでオペレーターが実際に対応するケースの「ほとんどはクレームに関するやり取り」(同)です。これがAIあきこちゃんになると利用者は会話を楽しみながら本音を織り交ぜてくるようになるようです。白石氏は「ポジティブなこととネガティブなことの両方の意見が得られることは、マーケティングの側面からとても有効だ」と話します。

2020年の消費者ニーズに対応するためにシステム全体を見直す

こうした実証実験の前提としてローソンは、「2020年に消費者ニーズは、どのように多様化しているか」を考えています。現時点は次の4つのパターンに分類しています。

(1)こだわり派=自分だけのオリジナルを求める
(2)効率派=レジなし・自動決済・即時宅配などの効率を求める
(3)エンジョイ派=新商品や新サービスをいち早く購入・体験したい
(4)ふれあい派=対面、コミュニケーションを大切にする

このうち、レジの自動化やチャットボットなどを利用しても、(4)ふれあい派には対応ができません。無人レジと有人レジなら有人レジに並ぶ、試食などを勧められたら食べてみるなど、かつての実店舗では当たり前だったスタイルが多様化するニーズの1つになると同時に、テクノロジーの活用だけでは単純に解決しない課題にもなるわけです。

結果として「これからはシステム全体をアーキテクチャーから見直すことが不可欠になる」と白石氏は指摘します。「一部のシステムだけを切り替えても効果は小さい。複数の企業間でデータやシステムを共有する必要があるだろう」(同)からです。例えばRFIDによって解決できる課題にしても、「企業間でのデータのやり取りが必要であり、そのためには全体の整合性を取りつつ、密な関係、密なコミュニケーションが必要になる」(同)とみています。

仕組みそのものの見直しに向けローソンは今、人材採用を強化しています。プログラマーやデータサイエンティスト、AIエンジニア、UI(ユーザーインタフェース)/UX(顧客体験)デザイナーなどです。理想は「データ分析ができ、それを業務に結びつけ、改善につながる提案ができる人材を社内に育成する」(白石氏)ことです。そこでは、「テクノロジーに踊らされない眼を持つことも重要だ」」(同)と言います。企業間連携に向けては、「オープンイノベーション(共創)によりパートナーシップの推進力を高めたい」(同)考えです。

品揃えや、サービスの提供など「いつでも、何でも」を特徴にしてきたのがコンビニエンスストア。その店舗を支えるために最新技術も多種多様なものが導入されていくようです。「現在ある1万3000店舗が社会インフラになることがゴール」(白石氏)だというローソンが、どのように変わっていくのか。一利用者としても興味は尽きません。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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