外出先からスマホで家電をコントロール、レオパレス21が賃貸物件で取り組むIoT

2017.05.18
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海外からの観光客が増えホテル不足が指摘される一方で、少子高齢化の影響か賃貸業界は競争が激化しています。「敷金・礼金ゼロ」はもはや珍しくもなく、インターネット接続や内装のカスタマイズといったサービスが次々と登場しています。そうした中、大手不動産会社のレオパレス21が、備え付けの家電などを手持ちのスマートフォンでコントロールできる“スマート”な物件の提供を始めました。スマートホームは賃貸物件が先取るようです。

若い女性に向けたサービスなども強化

レオパレス21は、アパートの賃貸やアパートの建築を中核に、「土地の有効活用と良質な住宅供給の両立を目指す」不動産会社です。国内外でのホテル事業や、介護老人ホームの運営なども手がけています。同社が貸し出すアパートはワンルームが中心で、全国で約56万戸を管理しています。契約形態には、(1)賃貸契約と、(2)マンスリー契約(一括前払い)の2つがあります。賃貸契約では敷金・礼金のほか仲介手数料も無料です。マンスリー契約では、家具・家電が備え付けで、水道・光熱費も不要です(図1)。


図1:マンスリー契約で備え付けられている家具・家電の例(レオパレス21のホームページより)

かつての居住者は、単身赴任者や内装にあまりこだわらない男子学生などが中心だったようですが、今では若い女性向けの物件も増やしています。例えば、ゆっくりとメイクができるように独立型の洗面台がリビングにあったり、1Fの部屋ならバルコニーにある手すりの高さを高くして防犯性を高めたりです。壁紙の種類を自由に選べる「my DIY」というサービスもあります。ブロードバンド通信事業を手がけることで、入居者専用のインターネット接続サービス「LEONET」も提供しています。

こうした入居者向けサービスの一環として追加されたのが、スマートフォンを使って各種家電をコントロールできる無料サービス「Leo Remocon(レオリモコン)」です(図2)。例えば、暑い夏の日、無人だった家は熱がこもり入室するのもはばかられますが、Leo Remoconなら、帰宅前にスマートフォンからエアコンのスイッチを入れ、帰宅時には心地よい温度や湿度にしておけます。深夜に帰宅した際も、真っ暗な部屋ではなく、照明を事前に点灯させておけば扉を開ければ“ほっ”とすることもできます。GPSと連動し、部屋の近くまで戻ってくれば家電のスイッチが入ったり、 音声認識や登録した手順によって家電を制御したりも可能です。


図2:「Leo Remocon(レオリモコン)」の紹介ページの例(レオパレス21のホームページより)

防犯対策としては、部屋の状況をスマートフォンでモニタリングできるほか、スマホ対応の「Leo Lock」と連動させれば、施錠や解錠を遠隔から操作・確認したり、鍵の開け閉めに連動させて照明を点けたり消したりができます。コントロールできる家電は、備え付けの家電のほか、赤外線リモコンに対応していれば入居者が持っている家電も対象になります。

Leo Remoconは、ベンチャー企業のグラモが開発する家電制御機器「iRemocon」をベースに共同開発したものです。iRemoconは、学習リモコンの1種で、エアコンやテレビ、照明機器などのそれぞれが持つリモコンから発せられる操作信号を記憶することで、1台のデバイスで複数の機器を操作できるようにします。このデバイスをインターネットにつなげることで、スマートフォンによる遠隔操作が実現されているのです(動画1)。レオパレス21では、このLeo Remoconを2016年10月以降に完成する新築物件のすべてに標準装備する計画です。

動画1:「iRemocon」の機能を紹介するビデオ

ネットTVの試聴環境やクラウド型防犯カメラなども導入済み

レオパレス21がアパートのデジタル化に取り組むのは、Leo Remoconが最初ではありません。先のブロードバンド事業のように、デジタルテクノロジーの導入においては業界内でも至って積極的です。インターネット接続サービス「LEONET」では単にネットに接続できるだけでなく、「Life Stick」と呼ぶAndroid TV搭載のスティック型デバイスを使えば、テレビでCS放送や「YouTube」「Android TV」などを見たり、契約内容の変更や各種の問い合わせができる「LEONET マイルーム」を利用したりが可能です(図3)。部屋で見ていた映画の続きを外出後にスマートフォンで視聴することもできます。


図3:「LEONET」で利用できるサービスの例(レオパレス21のホームページより)

クラウド型の防犯カメラを業界で初めて導入したのもレオパレス21です。アパートのエントランスやゴミ捨て場、駐車場などに設置された防犯カメラの映像をクラウド経由で遠隔地からリアルタイムに確認できます。事前に設定した範囲内であれば、特定の大きさの物体が動けば、その動きを検知し、管理者にアラートを通知する「モーション検知機能」も搭載しています。

アパートの屋根を“発電所”に変える「仮想メガソーラー」事業も手がけています。2016年末時点で全国4281棟のアパートの屋根に太陽光発電設備を設置し、総出力63メガワット弱を発電しています。当初、太陽光発電に対してアパートのオーナーは、導入費や運用費などの追加投資が必要なことから消極的でした。ですがレオパレス21(実際には子会社のレオパレス・パワー)が設備投資し、発電した電力を全量、大手電力会社に固定価格で販売することで、収入の一部を屋根の賃料としてオーナーに支払う形にしたことで、設置数が増えていったようです。各地のアパートでの発電状況はデータセンターに1分単位で集約し可視化しています。

契約に伴う事務作業のデジタル化も推進

住環境だけでなく、レオパレス21では、賃貸契約時に発生する事務作業のデジタル化も進めています。賃貸の手続きには必要な書類が複数あり、その作成・管理には手間がかかります。そこで同社では、新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)が提供する電子契約サービス「CONTRACTHUB@absonne」を用いた賃貸契約の電子化サービス「Leo-sign(レオサイン)」を2015年から提供しています。

まず法人向けに開始し、その後、個人向けに拡大しました。個人の場合、店頭での受付から入居審査の申し込み、賃貸契約の確認や署名までがタブレット上で完了します。紙の書類はなく、契約書の控えはインターネット上の専用サイトに保管・閲覧できる仕組みです。個人契約の8割近くが電子契約になっていると言います。

賃貸物件のオーナーに向けては、クラウド型の確定申告サービス「MFクラウド確定申告forレオパレス21」をオーナー専用サイト「クラス エル」上で提供しています。家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードと共同で開発しました。クラス エルでは、不動産収入や支出をサイト上で確認できるだけでなく、連携する金融機関などからの入出金明細や利用履歴を取得できるため、売り上げや費用を確定申告ソフトへ入力する手間が軽減できます。クラウドサービスなので、家族や税理士との情報共有の容易とのことです。

リーマンショックによる落ち込みから回復基調へ

レオパレス21の売上高は、2008年のリーマンショックを契機に、それまでの拡大基調が一転し減少傾向に落ち込んでいました。アパート建設の請負数や賃貸需要が低下したからです。そこで同社は2011年度(3月期)から構造改革に取り組み、今回紹介したようなテクノロジーを活用して対顧客サービスの多様化を図ることでの入居率の向上や、事業コストの削減に取り組みました。結果、売上高は2013年度に底を打ち、拡大基調に戻っています。

最新のLeo Remoconも、単身赴任者や学生を対象にしたワンルームマンションが中心であるが故に生まれたであろう家具・家電付きのサービスを展開していた同社だったからこそ、早期に実現できたと言えるでしょう。IoT(モノのインターネット)が注目される中、スマートホームへの関心も高まっていますが、スマート化が進むのは、分譲物件よりも賃貸物件なのかもしれません。

執筆者:古川 達也(Digital Innovation Lab)、高橋ちさ(ジャーナリスト)

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