アパレル業のプラットフォーマーを狙うLOCONDO、ネットを基準に実店舗のあり方を考える

2018.04.10
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「試着ができちゃう通販サイト」のコピーでTVコマーシャルなども展開するLOCONDO。靴とファッションのネット事業に加え、アパレルブランドを対象にしたプラットホーム事業を展開しています。最近は「試着後払い」や「急ぎません。便」といった新サービスでも注目されています。そんなLOCONDOは、ネットビジネスで、どんな“次の一手”を考えているのでしょうか。

同社のネットビジネス戦略について、代表取締役社長CEOの田中 裕輔 氏から聞く機会がありました。東京ビッグサイトで開かれた「イーコマースフェア2018」(主催:UBMジャパン)での講演です(写真1)。同氏の講演内容からLOCONODの取り組みを紹介します。


写真1:LOCONDOの代表取締役社長CEOである田中 裕輔 氏。講演会場は満席だった(提供:LOCONDO)。

ネットビジネス側から実店舗を考える時代に

2010年設立のLCONDOは現在、自社のEC(電子商取引)サイトの「LOCONDO.jp」、楽天市場やYhoo!のショッピングモールないで展開する「LOCOMALL」、アパレルブランドに提供するプラットホーム事業の3つを事業の柱にしています(図1)。


図1: LOCONDOの3つのビジネスの関係性(同社ホームページより)

そのLOCONDOが今、推進しているのが「RAOS(Real As Online Store)計画」。田中氏は、2018年1月にAmazom.comが米シアトルに1号店を開いた無人店舗「Amazon GO」を引き合いに出しながら、「ネットビジネスに基づいて実店舗を再設計しようという考え方になってきている」と説明したうえで、「これまでのECの枠を超えた総合的なサービスを提供することで、アパレル業界を改革したい」と語ります。

RAOS計画の実証の場所は、スペイン発のファストファッションブランド「MANGO」の東京・原宿店です。MANGOについては、LOCONDOが国内での独占販売権を取得しています。同店舗は2018年3月8日、同社の旗艦店舗として「LOCONDO Tokyo」にリニューアルされました(写真2)。LOCONDO.jpのリアル店舗の位置付けです。


写真2:LOCONDO.jpのリアル店舗に位置付ける「LOCONDO Tokyo」の外観(同社プレスリリースより)

ECシステムに実店舗のデータを集約する

これまでのネットビジネスでは、実店舗とECサイトのそれぞれが持つ顧客データや在庫データをどう連携し活用するかが大きな課題でした。これに対しRAOS計画では、顧客や売り上げ、在庫などをECサイトと実店舗の別を問わず一元管理します。しかも、ECのデータベースに実店舗のデータをすべて統合するという“ネットありき”の考え方です。

現在、LOCONDOがアパレルブランド向けに提供するプラットフォームサービスには、(1)e-3PL、(2)LOCOCHOC、(3)LOCOPOSなどがあります。e-3PLとLOCOCHOCは、実店舗で商品が欠品していた際に利用できるサービスです。e-3PLでは、EC用の在庫から店舗に商品配送しますが、LOCOCHOCでは店頭で支払いまでを済ませ商品は顧客の指定先に直接配送します。LOCOPOSは店舗の販売管理システムです。

店舗でのスマホ決済が可能な「LOCOPAY」のほか、バーコードを読み込めばECサイトでの購入が可能になる「LOCONDO GO」を開発中です。これらを使うことで、顧客データを活用したマーケティングコミュニケーションもリアルタイムに連携できるようになります。ここで重要なことは、「これらすべてのツールがECで創業した企業が運用していることだ」と田中氏は強調します。

田中氏は、「こうした流れを百貨店業界にも作り出したい」と言います。すでに大丸松坂屋が、同店が国内展開する米ファッションブランド「NINE WEST」の自社ECサイトをLOCONDOのEC構築サービス「BOEM」を使ってオープン。LOCONDO.jpでの販売も始めました。

顧客や配送事業者のメリットも考えた配送サービスを開発

そんなLOCONDOがもう一つ力を入れているのが配送サービスです。近年、物流業界では、「再配達」や「配送業者の労働力確保」などが大きな課題になっています。「消費者により便利に」を旗印に、当日配送や時間単位での配送など、より短時間での配送が競争点になっています。そんな流れに逆行するかのように、LOCONDOが2017年9月に開始したのが「急ぎません。便」です。

LOCONDOも即日配送する「お急ぎ便」サービスを提供していますが、急ぎません。便では、1〜3日後に発送します。その分、料金はお急ぎ便より100円安い290円で提供します。

2018年1月には歴史的な寒波が襲来し、記録的な大雪に見舞われました。その時ネット上では、配送会社への労いの声のほか「こんな日は『特に急がない』と意思表示できればいいのに」といったツイートが出回りました。その中で「急ぎません。便」は“気持ちが分かっているサービス”として話題になりました。田中氏は「日本人の心に響いたようだ。実は、それほど急がなくて良いと思っている人が潜在的にいたことが分かった出来事だった」と話します。

逆に、6時から24時までなら1〜2時間単位で配送時間を指定できる「ファーストクラス便」も2018年3月に投入しました。コンビニや駅のロッカーなどで商品を受け取るにしても面倒な大型商品や、自宅で受け取れるタイミングがなかなか調整できない一人暮らしなどを対象にしたサービスです。配送中のトラックの位置を、会員登録しなくてもマイページから確認できます。ファーストクラス便の料金は現在、キャンペーン中のため390円です。ただ、いずれの配送サービスでも「送料は全額ポイント還元するため実質無料だ」(田中氏)と言います。

2018年2月には「試着後払い」サービスも開始しています。靴や洋服のネットビジネスの課題はサイズと色味の違いです。表示サイズは同じでもメーカーやデザインによってはサイズが合わなかったり、すでに持っている服とのコーディネートが微妙に違ったりするからです。これまでのLOCONDOでは返品無料でしたが、一度は代金を支払う必要がありました。「試着後払い」では、試着後に実際に購入する場合のみ代金を支払います。

試着後払いの決済はヤマト運輸が担っています。田中氏は、「ヤマト運輸にすれば、一度は商品を届け住所が確認できているため代金を踏み倒される心配がない。顧客は購入前に試着できるし、当社にとってもLOCONDOを初めて利用する顧客が抱く心配事を解消できる。様々な顧客ニーズを読みとり、配送会社と顧客とLOCONDOのそれぞれにメリットがある“三方善し”のサービスを提供したい」と説明します。

ECで“ハッピー”を届けたい

田中氏が“三方善し”を考えるのは、「『Delivering Happiness』の影響を受けているため」(同氏)。Delivering Happinessは、米ラスベガスで創業し全世界でアパレルのネットビジネスを展開するZAPPOSの創業者、トニー・シェイ氏が提唱する考え方です。Zapposは現在、Amazon傘下にありますが、その経営は独立が保たれています。田中氏は「ECでハッピーを届けたい」と強調します。

インターネット技術の発展と共に広がってきたネットビジネスは、消費者の利便性を高めました。ですが、事業者間のサービス競争は物流など他業界にしわ寄せがいったり、あるいは消費行動の変化が歴史や文化といった側面を蝕んでいると指摘されたりもしています。それらが課題解決の取り組みよって引き起こされているのは皮肉な一面です。

課題解決に向けた発想とテクノロジーの組み合わせにより、これからも数々の新サービスが登場することでしょう。そこでは、LOCONDOの田中氏が指摘するように、提供者と利用者/消費者に加え、両者の間にあって種々のサービスを提供する事業者にとってもメリットが提供できなれば、継続的な成長はできなくなるのかもしれません。

執筆者:高橋ちさ(ジャーナリスト)

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