即日配達で悲鳴を上げる物流現場、高まるベンチャー発ロボットへの期待

2017.03.14
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

即日配達はもとより1時間以内の配達まで、Eコマースの世界では配送スピード競争が激化しています。取扱商品の幅や量も急増しているだけに配送現場への負担は高まる一方だけに、配送拠点である物流センターの効率改善は喫緊の課題です。その解決策として期待が高まっているのがロボット。Eコマースサイトの運営会社や物流会社がロボットに熱い視線を向け始めています。

市場拡大に伴い配送量が急増するだけでなく、配送スピードも劇的な向上が求められているのがEコマース分野。そこで起こったのが、物流センターの建設ラッシュであり、ロボットの導入です。東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた「第2回ロボデックス」(主催:リード エグジビション ジャパン)の特別講演では、ロボットベンチャーのGROUNDの宮田 啓友 CEOと、MUJINの滝野 一征CEOが物流ロボットの最新動向について説明しました。

GROUND:商品ラックをロボットでピッキングステーションまで運ぶ

「2017年は物流ロボット元年になる」−−。こう話すのはGROUNDを率いる宮田 啓友 CEO(写真1)。大量の商品を巨大化する物流センターにおいて、人間が歩いて商品を取り出すといった方法では、即日配送の維持は困難になるばかりだからです。

logirobo_1
写真1:GROUNDの宮田 啓友 CEO

GROUNDは、インドのGreyOrangeと提携し,同社が開発する物流ロボット「Butler」を市場展開しています。Butlerとは「執事」という意味で、商品を保管しているラックの下に潜り込み、必要なラックを発送すべき商品を配送先ごとにピッキングする作業者のそばまで運ぶロボットです。Amazon.comが同社の物流センターに導入しているKivaと同様の仕組みです(関連記事)。GROUNDは、Butlerと、商品を保管する可搬式ラックや、作業者がピッキングに使う専用ステーション、これらの機器をコントロールするソフトウェアである「Warehouse Control System(WCS)」などを組み合わせ、物流センター業務の効率を高めようとしています(動画1)。

動画1:物流ロボット「Butler」を使った業務改善を紹介するビデオ

ピッキング作業の生産性を向上に向けてGROUNDが着目するのは作業者の歩行です。多くの物流センターでは作業者はセンター内を歩きながら配送すべき商品をピッキングしています。その歩行距離は「1日に10キロメートル以上」(宮田CEO)とされています。これに対しButlerなら、必要な商品が作業者の手元まで移動してくるため歩く必要はないというわけです。

加えてWCSでは、AI(人工知能)を使って商品の売れ行きを予測し、その予測に基づいて商品の保管場所をButlerがダイナミック(動的)に変更します。売れ筋商品ほど作業者の近くに置いておけば、それだけピッキングにかかる時間が短縮できることになります。こうした作業者の歩行解消と商品保管場所のダイナミックな変更によって「35人のピッキング作業者を6人にまで削減できる」(宮田CEO)と試算しています。家具小売大手のニトリは、このButlerをグループの物流会社が運営する物流センターに約80台導入すると2017年1月に発表しました。

MUJIN:商品の形や場所を自動認識してピッキング

一方、人間が担うピッキング作業そのものをロボットに置き換えようとしているのが、産業用ロボットベンチャーのMUJINです。同社のロボットは既に、自動車メーカーや電機メーカーの生産ラインで部品を振り分ける工程に導入されています。この仕組みを物流センターに適用し、自動倉庫から取り出した保管箱に入っている商品をピッキングし配送用の段ボール箱などに入れ替えれば「ピッキングに携わる人材すら不要になる」(滝野CEO)としています(写真2)。

logirobo_2
写真2:MUJINの滝野 一征CEO

MUJINは実は、ロボットメーカーではありません。ロボットの頭脳に相当する制御装置「MUJINコントローラ」のみを開発しています。ロボットメーカーが開発・製造しているロボットに接続することで「ロボットに知性を与える」(滝野CEO)ための装置です。具体的には、商品の形状や配置場所を画像から認識し、ロボットが自律的にどのように動作すれば良いかを判断し、動作させます(動画2)。

動画2:「MUJINコントローラ」によって自立化したロボットアームの例

一般的な産業用ロボットは、「ティーチング」という作業によって、どう動作するかをプログラミングする必要があります。ロボットはティーチングされた通りにしか動作せず、別の動きをさせるにはプログラミングを修正しなければなりません。例えば、「箱の中にある部品をつかんで別の箱に入れる」という動作では従来、「ティーチング作業に1年以上かかっていた」(同)といいます。これに対しMUJINコントローラは、ロボットが判断する動作計画技術を採用。同社CTO(最高技術責任者)であるDiankov Rosen(デアンコウ・ロセン)博士が2006年に開発したアルゴリズムを基に開発しました。各社のロボットに対応し、既に1000を超えるロボットに提供してきました。滝野CEOは、「ティーチングが不要なため生産ラインを3週間で立ち上げられる」と話します。MUJINの仕組みは、アスクルが採用しています。

装置産業に向かう物流オペレーション

配送量の増加と即日配送というスピードの両立が求められる物流現場では、人手による対応は限界に近づいています。GROUNDの宮田CEOは、「物流オペレーションはロボットを中心とした装置産業へ向かう」と指摘しています。既にAmazon.comは4万5000台のロボットを物流現場に投入しています。上記で紹介したGROUNDのButler/WCSと、MUJINの自律型ロボットを組み合わせれば、棚の管理からピッキングまでの一連の流れを完全にロボット化できるかもしれません。これらロボットをいかに有効に活用できるかが、これからのEコマース事業の成長を左右する時代に入ってきたと言えそうです。

執筆者:小林 秀雄(ITジャーナリスト)

EVENTイベント