街中に広がるIoTサービスを支えるLoRaWAN、広域低消費電力な通信手段が必要な理由

2017.04.11
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色々なモノがネットにつながっていくIoTへの関心が高まる中で、新たな通信規格が注目されています。「LoRaWAN」です。海外では多くの実用例が登場しており、日本でも2016年からソフトバンクやソラコム、KDDIなどがLoRaWANを使った通信サービスを開始しています。LoRaWanは、どんなIoTシステムに利用されているのか。海外の事例から紹介します。

ソフトバンクやKDDIが日本でのサービスを開始

LoRaWANは、広い範囲をカバーしながらも消費電力が小さい「LPWAN(Low Power Wide Area Network)」に分類される規格の1つです(関連記事『IoTに照準合わせる無線通信、低消費電力うたう新規格が続々』)。通信用などの半導体メーカーである米Semtechを中心に業界団体「LoRa Alliance」を設立し、規格化や利用を推進しています。技術仕様はオープンにされています

最大の特徴は、無線通信のための免許が不要ながら、最大10kmまでの長距離通信が可能で、かつ消費電力が小さいこと。LoRaに対応した通信モジュールを組み込んだデバイスと、使用したいエリアに設置した基地局(ゲートウェイ)が、通信します。基地局から先は携帯電話網などを使って企業のシステムやインターネットに接続します(図1)。日本ではソフトバンクが2016年9月にLoRaWANの提供を開始。KDDIは2016年12月に、IoTプラットフォームを提供するソラコムのシステムを組み合わせた「LoRa PoCキット」を提供すると発表しています。


図1:LoRaWANの利用イメージ(LoRa Allianceのホワイトペーパー https://www.lora-alliance.org/portals/0/documents/whitepapers/LoRaWAN101.pdfより)

LoRaWANが注目される背景には、LoRaWANがIoTの様々な用途に適用できることに加え、既に世界の150を超える地域でLoRaWANを使った実際のサービスが開始されていることがあります。LoRaWANの特徴を生かしていると言えるサービスのいくつかをピックアップしてみました。

GPSが届かない場所でも人やモノの動きも把握:蘭Clikey

オランダのClikeyは、LoRaに対応した各種のセンサーデバイスや、そこから得られるデータを収集するためのクラウドサービスを提供するベンチャー企業です。デバイスとしては、温度センサーや、GPS(全地球測位システム)による位置センサー、種々のセンサーを接続できる汎用的な製品などを扱っています(図2)。


図2:オランダのClikeyが提供するLoRa対応の各種のセンサーデバイス(同社Webサイトより)

例えば、キーホルダー型の「clickey track & trace」は、子供や高齢者の見守り、あるいは作業者や道具の位置の把握などに利用できます。同デバイスを時計型にした製品もあります。いずれもボタン型電池で動作し、1日に5回、その時の場所を送信するといった使用方法なら1年間は電池の交換は不要だそうです。基地局の配置によっては、ビル内や地下など、GPSの電波が届かなかったり携帯電話がつながらない場所でも、同デバイスの位置を把握できます。同デバイスを時計型にした製品もあります。汎用型の「clickey Pro」は、動物の身体に埋め込み各種のデータを取得するという蘭ユトレヒト大学の研究プロジェクトにも採用されています。

ゴミの貯まり具合に合わせて回収ルートを最適化:フィンランドEnevo

フィンランドのEnevoは、ゴミ箱に捨てられたゴミの量に合わせてゴミ回収ルートの最適化を図ることで環境負荷の軽減に取り組むベンチャー企業です。2010年の設立で、既にドイツやイギリス、米国のほか日本でも2015年からサービスを展開しています。そのEnevoが、ゴミ箱に貯まったゴミの量を測定する無線センサーに採用しているのがLoRaWANです(図3)。


図3:フィンランドのEnevoは、LoRa対応センサーでゴミ箱内の様子を測定し回収ルートの最適化を図る(同社の動画より)

LoRa対応のセンサーモジュールはゴミ箱のふたなどに簡単に装着でき、ゴミの量やゴミ箱内の温度などを測っています。バッテリーで長時間稼働するLoRaの特徴を生かしているといえます。そのセンサーで取得したデータから、ゴミの溜まり具合を予測したうえで、回収用トラックの稼働状況や渋滞情報などから最適な収集スケジュールとルートを算出するのです。長崎にあるテーマパーク、ハウステンボスが2016年夏から実証実験に取り組んでいます。

電気やガス、水道の使用量を測定するスマートメーター:中国ZTEなど

LoRa採用が進んでいる分野の代表例に、電気やガス、水道などの使用量を測定するスマートメーターがあります。中国のZTE(中興通訊)や、ノルウェーのNAS(Nordic Automation Systems )独Zennerなどが製品化を進めています。また中国では、例えばEasylinkinなどが、LoRa対応のスマートメーターをネットワークにつなぐための通信サービスを提供し始めています(図4)。


図4:スマートメーター対応サービスを紹介するEasylinkinのWebサイトの例

スマートメーターにLoRaWANの採用が進むのは、オープンであることに加え、通信できる範囲が15kmと広いことと、外壁などの障害物がある場所でもつながりやすいことがあります。多くの家庭あるいはビル内のいずれに設置する場合でも、基地局の設置コストなどを軽減できるというわけです。米国の調査会社ABIresearchによれば、スマートメーターは中国の IoT 市場の45%を占め、今後も成長すると予測されています(発表記事)。米コンサルティング会社のNavigant Consultingは、中国では 2020年に4億台を超えるスマートメーターが設置されるとしています。

暮らしに関わるIoTサービスのインフラに

ほかにも様々な活用例があります。ベルギーやイタリアでは地方自治体が駐車場問題を解決するためにLoRaWANを使って駐車場の空き状況や駐車時間を把握するサービスを開始していたり、ホテルやビルの設備を管理するためのサービスなども始まっていたりします(図5)。いずれのサービスも都市や街の課題を解決しようとするもので、いずれも日本でも共通の課題でしょう。


図5:ドイツテレコムがイタリアのpisaで実施しているスマートパーキングの概念(出所:ドイツテレコム)

日本でIoTといえば、スマートファクトリーなどの利用が先行していますが、今後は、今回紹介したような私たちの暮らしに関わる分野でも適用が広がると考えられます。その際の通信インフラとして、LoRaWANをはじめとするLPWAの使用も広がることでしょう。

<本記事で紹介した動画>

Waste Collection for Smart Cities (Japanese) from Enevo on Vimeo.
動画1:フィンランドEnevoのゴミ回収の解決策を紹介するビデオ

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)

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