ここまでやる中国の地方行政、南京市が提供するスマホアプリ「my南京(私の南京)」の凄さ

2018.03.20
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中国ではスマートフォンの利用が想像以上に浸透しています。日本でもメッセージアプリの「Wechat((微信)」やモバイル決済の「Alipay(支付宝)」などが知られています。最近では、中国からの観光客の利便性を高めるため日本企業のAlipay導入も進んでいます。しかし日本では紹介されていないスマホアプリの中には、驚くような機能を持つものが存在します。しかも、それが行政発だったります。今回は、そんなアプリの代表例として南京市が提供する「my南京(私の南京)」を紹介します。

南京市は、中国東部にある江蘇省の省都です。その南京市が市民に向けて無償で提供しているスマートフォン用アプリケーションが「my南京」です。さまざま機関が提供しているサービスとAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を介して連携することで、南京市で生活してくために必要な、あらゆる面をカバーしています。「百聞は一見にしかず」ということで主な機能を見ていきましょう。

都市での移動を簡単かつエコロジーに

都市生活で欠かせないものの1つが市内の移動でしょう。my南京では交通関連の機能として、「道路状況」や「公衆自転車」「公共交通」「エコ交通」「駐車場」「駐車費支払」などを備えています(図1の左)。


図1:my南京の交通関連の画面例

道路状況」は、南京市内の道路の渋滞状況をリアルタイムに確認できる機能です。渋滞がない道路は緑色で、渋滞が発生している道路は赤色で表示されます。これだけだと、日本の地図アプリと大差ありません。ですが南京市は、市内に道路状況を把握するためのカメラが設置されており、その映像をスマホからみられるのです。目的地などの地図上に現れるカメラアイコンをクリックすれば、道路のリアルタイムな映像が表示されます(図1の中央と右)。

道路が混んでいればクルマをあきらめ自転車や公共交通機関で移動しましょう。「公衆自転車」は、南京市が提供するレンタル自転車(中国では、これを「公衆自転車」と呼ぶ)を利用するための機能です。今いる場所の近くにあるレンタル自転車の貸し出し場所がアイコン表示され、その1つをクリックすると、そのときに利用可能な自転車の台数などが現れます(図2の左)。


図2:my南京のレンタル自転車と公共交通機関関連の画面例(図4、図5、図6)

公共交通」は、鉄道を利用する際の乗換案内機能です。出発地と目的地を入力すれば経路が表示されます。ここでも位置情報を使い、今いるところから最も近い駅と、そこまでの距離が確認できます(図2の中央と右)。

南京市としては、環境問題と渋滞状況を改善に向けて、エコロジーな移動、つまりレンタル自転車や公共交通機関での移動を提唱しています。その推進策として「エコ点数」と呼ぶポイント制度を導入し、レンタル自転車や公共交通機関の利用者に発行しています。

エコ交通」は、このエコ点数を受け取るための機能です(図3の左)。受け取ったエコ点数は「エコモール」での商品購入に利用できます(図3の右)。


図3:my南京の「エコ点数」と「エコモール」の画面例

クルマでの移動は交通違反にご注意を

それでも道路が混んでいなければクルマで移動したいかもしれません。クルマで移動するとなれば必要になるのが目的地での駐車場。my南京では、そうしたニーズに対し、駐車場検索の「駐車場」が用意されています。今いる場所の近くにある駐車場や、目的地近くの駐車場を探せます(図4の左)。駐車場の利用料金は「駐車費の支払い」で支払えます(図4の右)。


図4:my南京の「駐車場」と「駐車費の支払い」の画面例

クルマでの移動では安全運転が不可欠です。運転免許証を携行するのはもちろん、交通ルールを守らなければなりません。南京市では交通違反に対しては、かなり厳しく取り締まっています。

my南京の「私の家」という画面からは、運転免許証の情報と、これまでに犯した交通違反の記録が参照できます(図5の左)。「私の家」の画面で「車両」をクリックすると、交通違反の内容が現れます(図5の中央)。ここで「交通違反写真を見る」をクリックすると、交通違反を犯した際の写真が表示されます(図5の右)。


図5:my南京の「私の家」からたどれる免許証や交通違反の情報の例

実は、この写真は、道路に設置されているカメラで撮影されたものです。実は、撮影した映像を分析しており、車線を越えるなどが感知されれば即座に交通違反だと判断され、それがmy南京に届くのです。

さらに交通違反の画面からは「案件処理」をクリックすると「罰金決定書」が生成されます(図6の左と中)。罰金決定書の画面で「支払」をクリックすると罰金の支払手続きが始まります(図6の右)。支払手続きが完了すると交通違反に伴う処理が完了します。


図6:my南京での交通違反の確認から罰金支払いまでの画面例

社会保険や市民カードの再発行もオンラインで完結

都市生活に不可欠な移動のための機能から見てきましたが、中国で市民として生活するためには社会保険への加入や市民カードが不可欠です。このためにmy南京が提供するのが「知恵人社」という機能です(図7の左)。ここでの「人社」とは、人力資源(個人のこと)と社会保障の略称です。


図7:my南京の「知恵人社」による社会保険の加入・支払い機能の画面例

社会保険などへの加入手続きでは、日本同様に、各種の資料を準備する必要があり、かつ窓口が開いている時間に申請しなければなりませんが、実際には「知恵人社」で、申し込みから保険料の支払いまでが完了してしまいます。ガイドに従って情報を正しく入力するだけです(図7の中央)。支払い状況も毎月、個人が支払っている金額と会社が支払った金額とが参照できます(図7の右)。

「市民カード」は個人を証明する重要なカードです。にもかかわらず紛失してしまうこともあるでしょう。そんな場合もオンラインで再発行が依頼できます(図8の左)。手続きが完了すれば、新しいカードがEMS便(国際スピード郵便)で届きます。「my南京」では、申し込んでから受け取るまでの処理の進み具合も確認できます。


図8:my南京による「市民カード」の再発行や家賃補助の申請画面例

市民カードの情報はさまざまな場面で利用されますが、その1つに大学?卒業生への家賃補助の審査があります。南京市では、優秀な人材を招き入れるために、大学?を卒業してから2年間は家賃を補助しています。希望者は、申込画面からデータを正しく入力すれば申し込みは完了です(図8の右)。データは、南京市と行政区それぞれの審査部門に送られ、条件を満たしていれば家賃補助が支給されます。

納税状況などから個人の信用度を算出しローン貸し出しも

家賃補助にかかわらず、お金に対しても、いろいろな機能がmy南京にはあります。「個人納税」は、税務局が持つデータから利用者本人の毎月の給料と税金を表示し増す(図9の左)。「コマ信用ポイント」は、アリババが個人のネットビジネスの取引記録と財務状況から判定するビジネスのための信用ポイントです。これもアリババがもつデータと連携し表示されます(図9の中央)。


図9:my南京では納税額や個人の信用度を確認できる

個人信用」は、南京市政府が運用する信用システムのポイントです(図9の右)。税金や、積立金、交通違反、社会保険金、家庭での公共料金の支払う状況から判定されます。

信用ローン」は、これらの信用システムが持つ情報を元に、南京市が南京銀行と連携して提供する個人向けローンで、オンラインで申請できます。このローンは、個人の信用ポイントを使って南京銀行が審査し、審査が降りれば入金されるというものです(図10の左)。


図10:個人の信用度に基づき銀行ローンが審査される

申込時はスマホのカメラで顔を撮ります。それを顔認識技術を使って公安部門が発行する身分証の写真と比較し個人を特定します(図10の中央)。審査が終わると、貸出限度額と年間利率が算出され、即時に提案が返ってきます(図10の右)。この例では、貸出額は30万元、年間利率は5.88%のローンが提案されています。

貪欲なまでに機能統合を図っている

いかがでしたでしょうか。これでもmy南京が提供する機能の一部です。最近は日本でもFinTechが注目を集め地方自治体が地域通貨を発行したり、市民向け情報のポータルサイトを強化したりしていますが、まだまだ用途別、担当部門別といった動きも目立ちます。my南京の、貪欲なまでの市民向けサービスの統合例は、多くの社会課題を抱える日本の自治体に、これからの方向性の1つを示していると言えそうです。

執筆者:朱 敏杰(Nanjing Fujitsu Nanda Software Technology)、志度 昌宏(DIGITAL X)

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