返品大国アメリカには返品専門会社Optoroがあった、商品の破棄やCO2排出量の削減にも貢献

2019.06.25
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不要品はヤフオク!やメルカリなどのフリマアプリで販売するケースが増えてきています。ですが「返品大国」とも呼ばれる米国に進出したメルカリは現地では苦戦しているようです。その米国では返品に特化したベンチャー企業があります。ワシントンで2010年に創業した米Optoroがそれです。Optoroは返品をどのようにさばいているのでしょうか。

ネットビジネスの拡大が返品も増やしている

アメリカでは返品は、それほど特別なことではありません。全商品の10〜20%が返品されるとの数字もあります。プレゼントされた商品を返品するケースが多いことから、プレゼント用だと言えば返品用のレシートを発行してくれる店舗もあります。明らかに使用済みの商品を返品するような人もいるそうです。スーパーマーケット最大手の米Walmartなどは、独自の返品システムを構築しています。

返品量は、ネットビジネスの拡大に伴い増加しているとの指摘もあります。実物を確認できないことやオンラインで容易に決済できることなどが、一時の感情に任せた購買を後押しするものの、商品が実際に届いてみれば、イメージが異なったりサイズが合わなかったりすることが少ないくないからです。

ある調査によれば、米国内の小売業者が年間に受け取る返品総額は約4000億円、その重さは約227万トン弱にも上ります。その半数以上がゴミとして埋め立てられているとも言います。返品にも人手や処理コストのほか、輸送などに伴うCO2排出など、経営的にも環境的にも、それなりの負担がかかります。結果、「数ドルや数十ドル程度の商品に多額のコストをかけて返品処理するくらいなら廃棄したほうが良い」という悪循環すら生まれます。

返品の受付から倉庫での管理を代行

この返品処理を小売業者に代わって一手に引き受けるサービスを提供するのがOptoroです(動画1)。同社が提供する基本サービスには「Store Returns」と「Reverse Supply Chain」の2つがあります。

動画1:Optoroの紹介ビデオ(1分48秒)

Store Returnsは、店頭での返品処理を支援する仕組みです。バーコードリーダー付きの端末を使って、顧客が持ち込んだ商品を良い込み、返金に必要な処理をガイドします。お店の従業員は最小限の負荷で返品処理ができるため、商品を販売するための接客などに専念できるとしています。また、読み込んだ商品情報から危険物など特別な扱いが必要な場合は、その処理手順を示すといった機能もあります。

一方のReverse Supply Chainは、店頭で返品された商品を再流通させるための倉庫機能や物流機能を提供するサービスです。従来は、小売り各社が担ってきた機能を集約することで、商品回収などの物流の重複をなし、各社のコスト負担や環境負荷を軽減します。

Optoroの物流センターに集められた商品は、可能な限り再販し、破棄しなくて済むようにしますが、この「可能な限り商品として再販する」ところにOptoroの仕掛けが、いくつかあります。

まずOptoroの倉庫では、返品された商品はすべて「OptiTune」というシステムで一元管理されます。このOptiTuneには、各種商品の“人気度”あるいは“賞味期限”に関連するような情報が格納されており、それと照らし合わせることで、ネットで再販するのか、チャリティーなどに寄付するのかなどが即時に判断できます。

その際、家電製品などは実際に稼働状況を確認し、必要があれば修理して商品価値を高めます。外箱に問題があれば別の箱に詰め直すこともします。

小売店の在庫補充やOptoro自身のECサイトでも販売

再販方法の1つは、その商品を販売した小売業者自身のEC(電子商取引)サイトでの販売です。小売業者にすれば、一旦商品を販売すれば在庫が減少しているわけですが、そのうちの何割かは返品の可能性を秘めています。ただ実際の返品数が分かるまでに時間がかかれば、その間は在庫切れになり販売機会を逃すかもしれません。

Optoroは、この期間を短縮することで、返品された商品による在庫補充を実現しているのです。さらに、Optoroの倉庫情報と小売業者のECサイトを接続することで、商品はOptoroの倉庫に置いたまま小売業者は在庫の総数を管理することができます。「Smart RTS」という名称でサービスしています(図1)。


図1:「Store Returns」と「Reverse Supply Chain」を基本にした再販サービスの構成

もう1つの再販方法は、Amazon.comやebayといった多くの見込み客が集まるサイトでの販売で「Remarketing」と呼びます。Optoroによれば、返品された商品でも、その商品を必要としている顧客がネット上にはいるかもしれないし、値付けによっては売れるかもしれないということです。事業者向けでは、個人などから返品された商品の中から同じ商品を集めたセット商品を構成し、まとめて販売するケースもあるようです。

さらにOptoro自身が「BLINQ」「BULQ」というサイトを運営しており、こちらでも再販します(図2)。BLINQは一般消費者を、BULQは事業者をそれぞれ対象にしたサイトです。外箱がオリジナルではない商品などを販売するための仕掛けだとも言えます。いずれのサイトに対しても、販売価格を需要状況の変化に合わせて動的に変えられます。


図2:Optoro自身が運営する「BLINQ」(左)と「BULQ」のトップページの例

ほかに「Smart RTV」というサービスもあります。これは、仕入れた商品が返品されたら、それをベンダーに返品できる権利を持つ小売業を対象にしたもので、ベンダーへの返品業務を代行します。ただ、SmartRTSやRemarketingと組み合わせることで、再販によって収益に代えられない量だけをベンダーに返品するのです。

従来の返品処理では6カ月もかかり商品の“旬”を逃してしまう

ここまでOptoroのサービスを紹介してきましたが、改めて、Optoroのサービスを使わない場合の返品の流れをみてみましょう。

小売業者にすれば、返品された商品は処理コストが掛かるだけで、何ら収益につながりません。そのため、できるだけ返品処理にかかわらず、コストもかけたくはありません。結果、物流センターに送る際も、ある程度、まとまった量になるまで倉庫に保管してしまいます。

物流センターに届いた商品は、再販業者などに販売するのですが、そのための仕分けにも時間がかかります。一般には、店頭で返品を受け付けてから再販業者の手に渡るまでに、およそ半年が掛かります。何度も配送される過程で商品がダメージを受けるリスクも高まるだけに、商品価値は、どんどん下がります。返品は、金銭的にも環境的にもムダが多いのです。

そこにOptoroは、物流・倉庫機能の集約という物理的なムダを排除すると同時に、複数の企業や販売チャネルをまたがって返品された商品を一元管理する仕組みを確立しました。最新の消費者ニーズを加味しながら、最適な販売チャネルで、できるだけ高く売れる値付けをすることで、再販率を45%にまで高めています。

結果、物流コストや環境汚染のそれぞれを15~20%削減し、CO2排出量も1500万トン分を削減できていると言います。返品処理で困っていた小売業者の負荷を軽減し、商品を求める消費者に購入できる機会を増やしたうえで、地球環境にも貢献できる。Optoroのビジネスモデルは、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まる中、1つの方向性を示しているのかもしれません。

執筆者:福田 洋一郎(Digital Innovation Lab)

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