PARCOが取り組む“オムニチャネルな接客”、IoTやロボットなどデジタルをここまで活用

2017.12.07
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ファッションビル「PARCO」を展開するパルコが、事業の拡大に向けて、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)といったデジタルテクノロジーの活用に積極的に取り組んでいます。実際の店舗とデジタルな店舗との境界をなくすオムニチャネルを実現するのが狙いです。さまざまな施策に2013年から取り組んでいるというパルコ。どこまでデジタルを活用しているのでしょうか。

パルコは“ショッピング”という行動を開発している

PARCOのスタートは1969年、東京・池袋に「池袋PARCO」から始まります。現在は全国18カ所で「PARCO」を、8カ所で「ZERO GATE/Pedi」を展開しています。そして2017年11月4日、東京・上野にオープンした『PARCO_ya』は「大人のPARCO」がコンセプトに掲げています。

これらの店舗におけるデジタルテクノロジーの活用状況について、パルコのグループICT戦略室 事業部長の野中 賢司 氏から聞く機会がありました(写真1)。千葉・幕張メッセで11月に開かれた「第2回店舗ITソリューション展秋」における特別講演がそれです。同氏の講演内容から、パルコにおけるデジタル化の最新事情を紹介します。


写真1:パルコのグループICT戦略室 事業部長の野中 賢司 氏

野中氏はパルコを「ショッピングデベロッパー」と呼びます。同社の直接的な伊顧客はテナントであり、売り上げはテナントからの家賃収入が主です。ですが野中氏は、「最終消費者の“満足度の和”がパルコの売り上げではあるが、それはテナントスタッフによる“接客結果の和”でもある」と言います。つまりパルコでは、「テナントスタッフの接客機会を増やし、最終消費者の満足度を高めることが売上拡大につながる」(同)と考えているのです。

パルコがテクノロジーを使って販売環境を整備・拡大し、接客機械を増やし始めたのは2013年のこと。最初に投入したのが「24時間PARCO」です。テナントスタッフと消費者が、いつでも、どこでもコミュニケーションできる「オムニチャネルプラットフォームを目指した」(野中氏)取り組みです。基本は、ショップのブログページを基点に、商品・接客情報を拡充した「Webによる接客」(同)でした。2014年11月には、24時間PARCOのスマートフォン用アプリケーション「POCKET PARCO」を福岡PARCOの新館オープンに合わせてリリース。2015年3月から全国展開しました。

この間に、2014年からはオムニチャネル施策の「カエルパルコ」を開始しました。Webで注文したり取り置きを予約できたりする仕組みです。POCKET PARCOと連動し、いつでも・どこでもショップの商品に触れ、購入できるというわけです。パルコでは、これら3つのツールと並行して、テナントに接客研修や英会話研修といったリアルな支援策を用意して店頭での接客機会も整備しています。

24時間PARCOが切り拓いたデータ活用への道

24時間PARCOというプラットフォームが構築できたことで、パルコが取り組んでいるのがデータ活用です。現在では、「来店前、来店中、来店後に分けて消費者の行動を分析している」と野中氏は明かします。

来店前の情報活用例の1つに、池袋PARCO近くで実施したGPS(全地球測位システム)を利用したエリアターゲティングプロモーションであります。池袋駅の東口と西口から半径500メートル圏内にいるPOCKET PARCOの利用者に、パルコカード優待セールのバナー広告を配信し、その反応を確かめたところ、「PARCOがある東口エリアの利用者は、広告接触と非広告接触の来店率の差が6%だったのに対し、PARCOがない西口では、その差が30%にもなった」と言います。

来店中の施策として注力しているのがIoTへの取り組みです。たとえば、上野のPARCO_yaでは、ディープラーニングに特化したベンチャー企業のABEJAが提供する「属性認証カメラソリューション」を導入し、時間帯ごとに性別や年代別に来店者数をカウントしています。同データはテナントにも提供すれば、「スタッフのシフト調整にも活用できるようになる」と野中氏は語ります。

池袋PARCOでは、屋上に気温・降雨センサーを設置し、POCKET PARCOの利用者の行動分析に利用しています。この気温・降雨センサーは同店スタッフの手作りなのだそうです。店内にはWi-Fiのアクセスポイントを設置し、そのログデータと購買情報を組み合わせることで、店内での導線把握にも挑戦しています野中氏は「Wi-Fiのログデータ活用は模索中だが、消費者の満足度向上につなげたい」としています。

来店後の施策になるのが、POCKET PARCOやカエルパルコのけるショップ別の接客サービス評価です。「購買客の接客満足度を可視化するだけでなく、その評価をショップにフィードバックすることで、接客レベルの向上を図るためのシステム」(野中氏)に位置付けられています。

次世代を見据えVRやブロックチェーン、ロボットにも挑戦中

パルコは次世代を見据えて最新テクノロジーへの挑戦も始めています。その1つが、VR(仮想現実)技術を採り入れた「VR PARCO」。野中氏は、「VR技術を使って実際に買い物ができる取り組みは、まだ少ない。今後はVRやAR(拡張現実)を購買サービスに活用していきたい」と話します(図1)。


図1:「VR PARCO」の利用手順(同社リリースより、http://www.parco.co.jp/pdf/jp/cname_20170322133859.pdf

カエルパルコでは、宅配ボックスの導入を検討しています。すでに、ブロックチェーンを活用した宅配ボックスの機能と利便性に関する実証実験を始めています。オフィスやビルに設置する宅配ボックスにブロックチェーンの技術を使うことで、「配送にまつわる、さまざまな障害やトラブルをサポートできるのではないか」と野中氏は期待します。

ロボットの活用にも積極的です。2016年7月にオープンした仙台PARCO2では、米Fellow Robots製の完全自律型ロボット「ナビー」と、ソフトバンクの「Pepper」を導入し、消費者をショップまで案内する仕組みを導入しています。大阪大学の石黒 浩 教授とドワンゴと連携したアンドロイドル育成プロジェクト「U」では、「ニコニコ生放送に登場したり、池袋PARCO店頭で消費者の案内に立つなどにより学習・成長させ、完全自律なアイドルを目指す」(野中氏)としています。

ほかにもハタプロ・ロボティクス製の小型AIロボット「ZUKKU」を使った実証実験も進めています。浦和PARCOでは、ZUKKUに搭載されている画像認証センサーで消費者の属性を取得し、その属性に従って店舗などを勧めることを実験(図2)。さらに、東京都都立産業技術センターと日本ユニシスとは、案内用と在庫棚卸し用のロボットを開発しています。いずれも「精度を検証し、さらに改良を進め実運用したい」(野中氏)考えです。


図2:小型ロボット「ZUKKU」と、ZUKKUで取得したデータの集計例(ハタプロのリリースより、http://hatapro.co.jp/news/170801zukku/

人がいないショッピングセンターは作らない

さまざまロボットの導入を積極的に取り組んでいるパルコですが、野中氏は「ボットの活用は、あくまでも人ができない業務や時間がかかる業務を代行するため」と断言します。そのような業務をロボットに代行させることで、接客や消費者への情報発信のための時間を増やし、「人と人がつながって幸せになれる実空間の実現を目指す」(同)のが目標です。

「当社は、人がいなくなるショッピングセンターを作ることは考えていない。ショッピングセンターは人で成り立っていることを実感しているからだ。だからこそ、ショップスタッフに対する取り組みも強化している」と野中氏は強調します。その一環として最近「パルコスター」とを展開しています。「一芸に秀でたスタッフを世の中に披露していく」(同)プロジェクトです。

パルコがこだわるのは「『あなたから買って良かった』『次もあなたから買いたい』を最大化すること」(野中氏)です。これは営業や接客の基本と言えるでしょう。パルコのデジタル分野の取り組みは、これからの営業/接客の1つの姿なのかもしれません。

執筆者:中村 仁美(ITジャーナリスト)

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