Amazonも課題解決で“共創”、倉庫の自動化競う「Picking Challenge」を実施

2016.08.19
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ドローンやロボットなど最新技術の活用でも知られる米Amazon。同社が、物流拠点でのロボット活用をテーマにしたコンテストを2015年から実施しているのをご存じでしょうか。課題解決に向け“共創(オープンイノベーション)”のスタイルを採る同社主催のコンテスト「Amazon Picking Challenge」が、それです(動画1)。どんな競技だったのか紹介しましょう。

動画1:Amazon Picking Challengeの紹介ビデオ。競技場面は2015年のもの

競技テーマは商品のピッキング、1位賞金は約250万円

Amazonが主催するロボットコンテスト「Amazon Picking Challenge」が開かれるのは今回が2回目。今回は日本発で始まったサーカーをテーマにした国際的なロボット大会である「RoboCup2016」と連携し、ドイツのライプツィヒで2016年6月から7月にかけて最終戦が開催されました。Amazon Picking Challengeでは上位3チームには賞金が贈られます。両競技それぞれ、1位には2万5000ドル(約260万円)、2位は1万ドル(約100万円)、3位は5000ドル(約50万円)です。

Amazonといえば、膨大な商品を扱う物流拠点である「フルフィルメントセンター」におけるロボット活用など、自動化への取り組みには余念がありません(関連記事)。同社の取扱商品数は北米だけでも1200万点以上、マーケットプレイスへの出品まで含めると3億5000万点を超えると言われます。それほど多くの商品を扱うフルフィルメントセンターでは、「フリーロケーション」と呼ばれる方法で商品を保管しています。空きスペースがあれば、そこに商品を収納するというものです。

出荷時には、倉庫ロボットの「Kiva」が、棚から出荷作業を担う従業員の作業場所まで自動的に商品が納まっている箱を自動的に運び出します。従業員は、手元に届いた箱から、必要な個数だけを取り出し(ピッキングし)配送先別に梱包します(動画2)。そうです、「Amazon Picking Challenge」のテーマは、この従業員によるピッキング作業を、いかにロボットにうまく処理させるかです(動画)。

動画2:kivaによる物流拠点でのピッキング作業の様子

Amazon Picking Challenge 2016の競技種目は、2種類ありました。(1)「Stow(収納)」と(2)「Pick(取り出し/ピッキング)」です。Stowは、箱の中から目的の商品を選び出し棚に置くこと、Pickは、棚にある商品を選び、それ取り出して箱に入れることです。いずれもロボットアームが「自ら判断・行動してタスクを達成」できることを競います。そこでは、ロボットアームの操作を自動化するプログラミングだけでなく、ロボットアームの形状に対する工夫なども求められています。

もう少し競技内容を詳細にみてみましょう。まずStowは、2016年に追加された新しい競技です。商品が入った箱から15分以内に、対象となる12個の商品を選び出し、すでに合計34個の商品が入っている棚に収納するまでのタイムと正確性を競います。目的の棚に既に入っている商品の数によって難易度が異なるため、それに応じて10点から20点が与えられるほか、商品の形状による難易度によって0~3点が加点されます。

一方のPickは、約50個の商品が入った棚から15分以内に、対象となる12個の商品を取り出し、箱に入れるまでのタイムと正確性を競います。ここでも取り出す棚に入っている商品の数に応じて10点から20点が与えられます。商品の形状によって0~3点が加点されるのは、Stowと共通です。

棚と商品は両競技に共通です(図1)。棚は、床から78cmの高さにあり、縦4×横3のマス状に区切られています。扱う商品は40種類あり、本や立方体の箱、衣類など、その大きさも形状も様々です。表面の加工状況も異なっており、その掴み方はもとおり、商品の選別能力にも影響します。商品に衣類などが追加されたり、より多くの商品が同じマスに配置されたり、難易度は2015年より高まっています。これら商品や棚の扱いにはペナルティもあります。商品やそのパッケージ、あるいは棚を破損させたり、商品を30cm以上の高さから落としたり棚から0.5cm以上はみ出させたりすると減点されます。

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図1:Amazon Picking challengeにおける棚と商品の条件

参加チームには、商品の種類や移動の指示が入ったデータが5分前に渡され、その情報をロボットアームにアップロードします。いったん、ロボットアームをスタートさせれば、後は人間が操作することは認められません。すべてをロボットアームが判断し、自律的に最適な操作を実行しなければなりません。

オランダチームが両競技で1位、日本のPFNも上位に

Amazon Picking Challenge 2016では、2016年1月から募集が始まり、2月までに書類審査などで最終戦参加チームが絞り込まれます。最終戦に参加したのは、Stow競技が14チーム、Pick競技が16チームでした。Pick競技だけだった2015年は30チームが最終戦で戦い、チームRBO(独ベルリン工科大)が優勝しています。

2016年6月30日に行われた最終戦の結果、Stow競技ではオランダのDelftが12アイテム中11アイテムを収納し214点を獲得して優勝しました(動画3)。2位はNimbRo Picking(独ボン大学)の186点、3位は米MIT(マサチューセッツ工科大学)の164点、そして4位に日本から参加したPFNの161点が続きました。PFNは、IoT(モノのインターネット)に特化して機械学習技術のビジネス利用に取り組むPreferred Networksのメンバーで構成されたチームです。

動画3:DelftのStow競技の様子

Pick競技では、StowトップのDelftは105点で1位、2位にPFNが同じ105点で入賞しました。DelftとPFNは同スコアですが、1つ目の商品のピッキングにかかった時間が、Delftは30秒、PFNは1分7秒だったことから、Delftが1位になっています。3位はNimbRo Picking(独)の97点、4位はMITの67点でした。

両競技で1位だったDelftは、安川電機製の1本のロボットアームに吸引と保持の2つの機能を持たせ、ディープラーニングと3Dセンサーを駆使しました。日本のPFNは、FANUC製ロボットアームを2本使い、それぞれに吸引機能と保持機能の役割を持たせました。ソフトウェアは、自社開発したオープンソースソフトウェア「Chainer」を使ったディープラーニングを利用して、カメラからの画像や3Dマップから商品を認識する仕組みを作っています(動画4)。

動画4:PFNのPick競技の様子

ロボット開発の最前線では、対象の認識とモノを“掴む”ための技術は、注目ポイントの1つです。Amazon Picking Challengeの競技内容には、Amazonが物流業務の改善に向けて、ロボットアームや機械学習などのデジタルテクノロジーにどれだけ期待し、真剣に取り組んでいるのかが現れています。そして最終戦にまで進んだアイデアはKivaなどを開発しているAmazonのロボット部門であるAmazon roboticsに帰属します。コンテストで画期的なアイデアが見つかれば、実際の物流現場に進んで取り込んでいくということなのでしょう。

執筆者:岩月 大悟(Digital Innovation Lab)

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