ここまで進んでいるトラックの自動運転技術、“隊列走行”でドライバーの負荷も燃費も改善

2018.01.23
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個人が運転するクルマの自動運転が話題ですが、同様に技術開発が進んでいるのがトラックの自動運転です。トラックが自動で走行するようになれば、ドライバーの負荷や労務費を削減できるほか、輸送効率を高めながら環境負荷を軽減できると期待されています。ただトラックは、重量があり、サイズも大きく長さも様々なため、乗用車とは異なる技術が求められます。トラックの自動運転は今、どのような状況にあるのでしょうか。

世界各国で進むトラックの自動運転の実証実験

トラックの自動運転や無人走行に関する実証実験は世界各国で進められています。例えばアメリカのダイムラーは2017年9月、オレゴン州とネバダ州の高速道路で走行テストを実施すると発表しました(写真1)。ドライバーをサポートし、疲労軽減を図ることで、より安全な運転を後押しするのが狙いです。


写真1:ダイムラーはオレゴン州とネバダ州の高速道路で走行テストを実施する

英国政府も810万ポンド(12億円強、1ポンド154円換算)を投じてトラックの自動走行テストを2018年末まで主要道路で実施すると発表しています(動画1)。

動画1:トラックの自動走行への取り組みを紹介する英国政府のビデオ(34秒)

中国もトラックの自動運転技術の開発に力を入れる国の1つです。たとえば中国初の自動車メーカーである中国第一汽車集団(FAWグループ)が自走式トラックを開発しており、2017年4月に長春の研究開発拠点内で無人走行に成功したと発表しています。信号や障害物を認識し、走行中の車両の流れに沿ったり他のクルマを追い越したりするための機能を搭載しており、2018年にも商品化する計画です。

日本でも、高速道路での自動運転を2022年には商業化することを目標に、段階的に実証実験を展開される予定です。2018年1月には、異なる自動車メーカーが開発したトラックによる高速道路での実証実験を実施します。複数メーカーが開発するトラックが同時に走行するのは、日本での実証実験が初めてになります。

隊列走行により燃料費の削減と安全の向上を図る

これらトラックの自動走行実験において、乗用車の自動運転と大きく異なるのが、複数台のトラックが“かるがも”のように隊列を組んで走行することに重点が置かれている点です。先のダイムラーの実験では2台のトラックが隊列走行を、英国の実験では最大3台のトラックが隊列走行をする予定です。

後続するトラックにドライバーが乗車しているか無人かでも、その難易度が異なってきます。現状では、全車にドライバーが乗車したうえで、後続のトラックの加減速を先頭車両が制御する仕組みの実証が中心です。それが確認できれば、後続車両は無人にした実証実験に進むことになります。

縦列を組んで走行することは「プラトーン(小隊)」と呼ばれます。トラックがプラトーンを重視するのは、先導車に後続車が近づくほど後続のトラックが受ける空気抵抗が小さくなり、燃費を高められるからです。トラック同士が自動的に協調して走行できれば、ドライバーが車間距離を詰める以上に、トラック間の距離を近づけられます。北米貨物運行協議会や米国エネルギー省がそれぞれの実験では、プラトーンによる空力効果により、先導車も後続車も燃費を2ケタ節約できるという結果が出ています。

当然、安全性の向上も期待されます。米国交通安全局によると道路上で起きる衝突事故の94%が人的ミスによるものです。トラック間の距離を自動的に制御できれば、衝突事故の防止につながるわけです。

クラウドがトラックの走行データを取得してプラトーン走行をサポート

では、プラトーンは実際に、どのようなテクノロジーで実現されるのでしょうか。トラックの自動運転に特化したスタートアップ企業である米Peloton Technologyのテクノロジーを参考に、プラトーンの仕組みを見てみましょう。このPelotonには多くの大手企業が出資しており、そこには日本のデンソーや三井物産という社名も含まれています。

プラトーンに向けたPelotonのシステムは、クラウドべースのネットワークオペレーターセンター(NOC)と、トラックに搭載する各種機器から成っています(動画2)。両者は、携帯電話網およびWi-Fi通信によって接続されます。NOCは、トラックのプラトーン走行をコントロールする、いわば“司令塔”です。常時、トラックの位置や状態、トラックが走行している付近の天候や道路の交通量などをモニタリングするとともに、ドライバーにプラトーンを組ませたり解除したりを指示します。

動画2:米Peleton Technologiesのプラトーン走行の仕組みを紹介するビデオ(2分14秒)

トラックに搭載する機器は、位置情報を得るためのGPS(全地球測位システム)のほか、加減速の制御装置、レーダーシステム、ビデオカメラなどです。加減速の制御装置は、2台のトラックが一定の距離を維持するように車速をコントロールします。前のトラックと後続のトラックは車車(V2V:Vehicle to Vehicle)間通信でつながり、前後のトラックが協調しながら加減速が制動されます。

レーダーシステムは、トラック衝突を回避するために搭載しています。レーダーも前後のトラック間で、車車間通信でつながり、2台のトラックのブレーキを同期させています。Pelotonが開発したシステムでは、トラックを制動できる速度はドライバーによる運転結果を上回るとされています。自動化でトラックの運転が、より安全になると期待されるゆえんです。

ビデオカメラも車車間通信でつながっています。先頭を走るビデオカメラがとらえた映像は、後続のトラックの車載ディスプレイにも映し出せます。プラトーンでは、後続車のドライバーは、トラックの大きな“お尻”が眼の前に迫っているだけのため、前方の道路状況が分かりません。先頭車の映像を後続車に伝えることは、ドライバーに安心感をもたらす機能だと言えます。

生活を支える手段として早期実現に期待

プラトーンの仕組みは、概ねPelotonの仕組みと共通です。冒頭で紹介したように、トラックの自動運転技術の確立に向けては世界各国がしのぎを削っています。日本でも実証実験も、政府の「未来投資会議」の決定によるもので、そこでは国土交通省と経済産業省が協力しながら実験を進めています。

トラックは私たちの生活を支える物流手段として欠かせない存在です。そのトラックも、ドライバー不足という課題に直面しています。日本の高速道路を無人のトラックが一般に走行するのは現時点では早くても2022年です。ただ、昨今の物流への依存度の高まりをみれば、トラックの自動運転は。乗用車のそれ以上に緊急度は高いのかもしれません。

執筆者:小川 貴史(Digital Innovation Lab)、小林秀雄(ITジャーナリスト)

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