mis

部品を最短1日でオンデマンド生産、マスカスタマイゼーションに取り組む米プロトラブズ

2016.12.08
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

大量生産から多品種少量生産を経た今、マスカスタマイゼーション(個別大量生産)への対応が求められています。そうした中、切削加工加や射出成形した部品を最短1日で納品することをうたう米Proto Labs(プロトラブズ)が、日本市場での事業を拡大しています。カスタム部品の試作や小ロット生産をオンデマンドで実行するプロトラブズは、それをどのようにして実現しているのでしょうか。

全世界で1カ月に290万個の射出成型部品を製造

米Proto Labs(プロトラブズ)は1999年に創業した受託製造会社で、開発工程における試作品やカスタムパーツなどを製造しています。同社のウリはオンデマンド対応。納期を射出成形では従来の4〜12週間を1〜15日に、CNC切削加工では1〜3日にまで短縮しています。2015年には全世界で2万7000社の製造業に対し1カ月当たり290万個の射出成形部品を提供しました。

日本のプロトラブズは2009年から事業展開しています。国内拠点は神奈川県座間市にある工場。そこでは、30台以上のマシニングセンターや旋盤加工機、それに大型成形機が24時間ノンストップで稼働しています(動画1)。日本の製造業は一般に、国内で開発・試作を行い東南アジアで大量生産する体制を採っているため、試作部品を受託生産するプロトラブズにとって日本は重要な市場になります。既に2000社を超える製造業が同社のサービスを利用しており、同社の日本での売上高は、2010年から2015年にかけて10倍以上に伸びています。

動画1:プロトラブズのサービスを紹介するビデオ

旺盛な試作需要を受けてプロトラブズは、7億円を投資し製造能力の強化とサービスの拡充を図っています。新サービスの1つとして2016年10月からは、射出成形に「二色成形サービス」を加えています。2種類の樹脂を組み合わせて一体成形するものです。2016年12月には、切削加工においてステンレス素材の加工サービスを開始する予定です。

高速コンピューターで見積もりと同時に設計に不備も指摘

プロトラブズの短納期のカギは、顧客が作成した3D(3次元)CADデータを基に見積りと製造の可否を解析するオンライン受注の仕組みと、大規模工場を融合した“デジタルマニュファクチャリング”を実現していることにあります。その仕掛けを詳しく見てみましょう。

まず同社のサービスは、見積りを取ることからスタートします。顧客はプロトラブズの見積りサイト「ProtoQuote」に設計した3D CADデータをアップロードするだけです。見積りに要する時間はCADデータをアップしてから平均3時間です。その際、顧客が部品の個数や素材、納期といった数値を変更するとリアルタイムに新たな見積りが表示されます。これを可能にしているのは、同社が自社開発した対話式の見積りソフトウェア。この見積もりソフトを動作させるために同社は、10テラFLOPS超、つまり1秒間に1兆以上の命令を実行できる高速コンピューターを導入しています。

さらに同社の見積りサービスには、部品の製造金額と納期に加え、CADデータを解析して設計上の問題点を指摘する機能も用意されています(動画2)。顧客が作成した設計データでは実際に、その部品を製造できないというケースは珍しいことではないと言います。リードタイムを短縮するには、設計上の不具合にいかに早く気づけるかが重要です。そのためプロトラブズの見積もりソフトウェアは、設計上の問題を指摘するとともに、設計の変更案まで提示する機能を持っています。この点は、スピードに劣らない付加価値だと言えるでしょう。

動画2:3D CADデータによる見積もりと同時に設計上の問題点も指摘する

生産プロセスの運用を自動化するソフトウェアを自社開発

短納期を実現する、もう1つ仕組みがCNC旋盤加工機と大型成形機を多数導入していることです。これらの生産設備の運用はコンピューターで自動化されています。一般に製品は、多くの部品で構成されています。そのため、部品の製造を小規模な工場に委託すると、部品の1つひとつを製造するための時間とコストがかかってきます。そこでプロトラブズは、生産機械を多数保有したうえでコンピューターを利用することで、多数の部品を並行して生産できる体制を構築しているのです。

部品の生産プロセスは、これも同社が自社開発したソフトウェアによって自動化されています。見積もりサイトで受け付けたCADデータを工場内の生産設備に受け渡すことで製造が始まります。つまり、工程管理を人ではなくソフトウェアが受け持つことで、生産機械は休むことなく稼働し部品を作り続けるというわけです。

多数の生産機器を持つことでプロトラブズでは、最終製品と同じ材料を用いた試作品の製造も可能にしています。例えば医療機器の場合など、プロトタイプといっても医療機器としての認証を得るための試験を受けるためには、最終製品と同じ材料で作られていなければなりません。そのため同社は、汎用・高機能樹脂を40種以上在庫し、800種類以上の樹脂実績と液状シリコーンゴム射出成形で顧客ニーズに対応しています。

3Dプリンティングサービスを日本でも展開予定

日本ではこれまで“品質”が、ものづくりを支えてきたとされています。ただ現代の、ものづくりでは“スピード”への対応が欠かせなくなっています。市場の変化が速いために、開発や生産のスピード向上が製造業の重要なテーマになってきたのです。独政府が進める「インダストリー4.0」などでも市場対応にフォーカスが当たっているのもそのためです。

製造業が開発スピードを高めるためには、試作品や特注部品の生産においてもリードタイムを短縮しなければなりません。そこに着目したのがプロトラブズといえるでしょう。同社は米欧では既に3Dプリンティングサービスも投入済みで、日本でも同サービスを開始する計画です(動画3)。これにより同社は、射出成形と切削加工に加え3Dプリンティングでも部品を生産できることになります。

動画3:プロトラブズの3Dプリンティングサービスの紹介ビデオ

最新の生産設備を大量にそろえるとともに、それらの稼働を自動化するためのソフトウェアや、顧客の設計データにおける製造上の問題点を発見するソフトウェアなどを自社開発するプロトラブズ。同社のサービスは、デジタルの力を借りた新しい製造業の姿の一端を示しているといえそうです。

執筆者:國井 裕司(Digital Innovation Lab)、小林 秀雄(ITジャーナリスト)

EVENTイベント

PARTNERパートナー