ベンチャー企業が協業する企業を選ぶ?! 米Plug and Playの「Winter Summit Demo Day」

2017.01.12
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AppleやGoogle、Facebookといった企業を生み出した米シリコンバレーには、多数のベンチャー企業がひしめき合っています。彼らとテクノロジーを必要とする企業のマッチングを図ることで、ベンチャー企業の成長をうながしているのが米Plug and Playです。同社は季節ごとに大型のマッチングイベントを開催しています。今回は2016年12月14日と15日に開かれた「Winter Summit Demo Day」の様子を紹介しましょう。

ベンチャー企業と企業のマッチングを図るPlug and Play

Plug and Playは、シリコンバレーに拠点を置くVC(ベンチャーキャピタル)ファームでありインキュベーターです。単に投資するだけでなく、新たなテクノロジーやサービスを持つベンチャー企業と、イノベーションに取り組む企業のマッチングをうながすことで、テクノロジーの浸透を図っているのが特徴の1つです。シリコンバレーにいる180人の主要なVCパートナーと共に投資を実行し、300社の会員企業との間でライセンシング契約を結びながらパイロットプロジェクトの立ち上げを支援しています。そのために年間4000のベンチャー企業をレビューし、実際の投資先は100を超えます(動画1)。ベンチャー企業を中心としたネットワーキングイベントは毎週のように開催されています

動画1:Plug and Playのコンセプトの紹介ビデオ

インキュベーターとして業界別にアクセラレーションプログラムを実施しているのもPlug and Playの特徴でしょう。2016年末時点では、IoT(モノのインターネット)、Fintech(金融向けテクノロジー)、Insurance(保険)、Travel and Hospitality(旅行/接客)といった業界を取り上げています(図1)。「アンカーパートナー」と呼ぶ会員企業や投資家に選出されたベンチャー企業は、6カ月間のアクセラレーションプログラムに参加できます。同プログラムを通じて会員企業と共にプロダクトやサービスをブラシュアップしていきます。大手の会員企業の中には、彼らへの投資を自社の研究開発投資に位置づけ、協業する企業も少なくありません。

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図1:IoT分野のアクセラレーションプログラムの例(出所:米Plag and Play)

アクセラレーションプログラムに参加したベンチャー企業は、プログラムの最後に行われる「Expo」で成果を発表しなければなりません。基本的には業界別に開かれますが、2016年末は、Health and Wellness、Insurance、Travel and Hospitality、Mobility、IoTの5分野をまとめた「Winter Summit Demo Day」として、12月14日と15日にまたがって開かれました。登壇したベンチャー企業は、Health and Wellnessが19社、Insuranceが23社、Travel and Hospitalityが16社、Mobilityが13社、IoTの19社、合計90社がプレゼンテーションに臨みました。ステージ以外にもデモブースが設けられ、ベンチャー企業と参加者のネットワーキングの場にもなっています。

ベンチャー支援策の成果を分野別に発表・評価

今回のWinter Summit Demo Dayでは、前半に各分野に知見を持つ大企業や投資家が基調講演やパネルディスカッションに登壇し、業界トレンドや今後を予測。その後にアクセラレーションプログラムに参加したベンチャー企業がショートプレゼンを実施します(写真2、3)。プレゼンを聞いた後に、会員企業や投資家、そして一般の参加者がWebシステムを使って投票し、優秀なベンチャーを選ぶという仕組みです。

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写真2:プレゼンに先立ち開かれたパネルディスカッションの様子

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写真3:アクセラレーションプログラムに参加したベンチャー企業が最後の成果発表に臨む

ベンチャー企業のプレゼンテーションでは、全体を通して、スマートフォンの位置情報を利用したサービスと、サブスクリプション(購読)型のビジネスモデルを採用するケースが多いという印象です。中でも注目を集めたのがHealthcare分野で登壇したFitspotです。同社は、ワークアウト(自発的なトレーニング)に取り組みたい人と、そのためのトレーナーのマッチングを図るサービスを提供しています。

Fitspotが提供するモバイルアプリケーションの利用者は、例えば「90分後に、街を見下ろせる丘の上で、トレーナーにヨガを習いたい」といった形で自身がやってみたいワークアウトのスタイルをリクエストします。すると、90分後に、丘の上でヨガを教えてくれるトレーナーを見つけ出せるのです(動画2)。Fitspotの利用形態もサブスクリプション型で、法人サブスクリプションと個人サブスクリプションがあります。期間限定ですが、法人サブスクリプションで利用した会員が個人で利用することも可能です。

Fitspot – Workouts That Fit In from Fitspot on Vimeo.
動画2:Fitspotの利用ケースを紹介するイメージビデオ

創業者のジョナサン・コーン(Jonathan Cohn)氏は、「ユーザーの“体験“価値をより高められるよう、Fitspotのプラットフォームで得たデータを保険企業やテクノロジー企業に提供し、サービスの向上を図る」と発表しており、将来的には、トレーニングに取り組んでいれば保険料が安くなったり、ソーシャルメディア上で共通の趣向を持つ人とつながったり健康的な食事メニューのお薦めを見たりといった関連サービスの発展が期待されます。

一方で最先端の技術開発に取り組むベンチャー企業も登場しました。Konikuが、その1社です。脳の仕組みを参考にしたニューロコンピューティングのための技術を開発しています。具体的には、人間の300倍の臭気を感受できるという犬の嗅覚の仕組みに着目し、犬が受容器官で臭気を感受し知覚するプロセスを応用した、学習が可能な仕組みを目指しています。適用例として、空港での爆発物や薬物の検査を挙げています。これらの検査のために米国の空港では長い列ができ、搭乗便への乗り遅れや運航の遅延などを引き起こしています。Konikuの技術を用いれば、人が発する臭いだけで検査できるため、検査に伴う課題の解決が図れます。ですのでKonikuの受賞分野はTravel and Hospitalityでした。

このようにWinter Summit Demo Dayの流れを説明すると、このイベントは大企業がベンチャー企業を選ぶための場と理解されるかと思います。しかし、ここシリコンバレーの優れたベンチャー企業の間では、彼らが企業や投資家を選ぶ立場にあるという考え方が一般的です。実際、Demo Dayに参加してみると、ベンチャー企業の発表からは、新しい技術やサービスの動向を知るきっかけになるだけでなく、それらを発想の起点に、既存ビジネスのロードマップを検討し直したり、彼らと協業した際のパイロットプロジェクトを検討したりが可能になります。

ベンチャー企業は、独自の技術や知見、ネットワークを活かして新しいビジネスやサービスを生み出し続けています。彼らに選ばれる企業になるためには、新しい技術や人材を社内に迎え入れられる組織に変革していく必要もありそうです。それができる企業こそが、最新技術を取り込んだイノベーションを加速できるのでしょう。

執筆者:今村 俊亮(Digital Innovation Lab)

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