ロボットは遠隔制御が前提に、RaaS(Robot as a Service)が進めるロボットのソフトウェア化

2017.09.19
リスト
このエントリーをはてなブックマークに追加

少子高齢化を背景にロボットへの関心が高まっています。これまでも自動車や家電製品などの大型工場ではロボットを使って生産効率を高めてきました。しかし今後は、多様化する一方の消費者ニーズに応えるマスカスタマイゼーションの実現など、多品種少量生産にも同時に対応しなければなりません。そうした中、ロボットをサービスの形で提供する「Robot as a Service(RaaS)」というビジネスモデルが登場してきました。導入時の初期投資がゼロになるというメリットもあります。

制御用ソフトウェアをクラウドから提供

RaaS(Robot as a Service)とは、ロボットの機能を実現する制御用のソフトウェアをクラウド経由で提供するビジネスモデルです。ロボットの稼働状況などもクラウドで把握できるため、ロボット設置後の最適化も図りやすくなります。RaaSでは、多くのクラウド型サービス同様に、使用量に応じて課金するサブスクリプション(購読)モデルでも提供できるため、初期導入費なしにロボットを提供するメーカーも登場しています。

工場に導入されてきたロボットは基本、ロボット本体か、その近くに設置されたコンピューター上でソフトウェアが動作し、ロボットを制御してきました。熟練工による作業を置き換えるのが主な狙いでしたから、一工場内で閉じた仕組みでも構わなかったといえます。ただ、高価なロボットへの投資を回収するためには、それなりの生産量が必要で、結果的にロボットを利用できるのは資金力に勝る大手企業に限られがちでした。

少子高齢化が進む今後は、大企業の工場以外でもロボットの利用が不可欠になってきます。加えて、消費者一人ひとりのニーズにあった製品を多品種少量で生産していくためには、ロボットの制御方法も変えていかなければなりません。作る製品に合わせてロボットの操作を都度、熟練工が現場で設定していては間に合わないからです。そもそも熟練工は今後、枯渇する一方です。これらの解決策の1つとして注目されているのがRaaSというわけです。そんなRaaSモデルを採り入れているロボットを紹介しましょう。

人手頼みの中小物流倉庫向け搬送ロボット:米inVia Robotics

米ロサンゼルス郊外に拠点を置くinVia Roboticsは、中小の物流倉庫を対象にしたロボットをRssSモデルで提供するベンチャー企業です。「Deployed in weeks, not months. ROI in months, not years.」が同社のキャッチフレーズです。すなわち「ロボットは数カ月もかけず数週間で導入でき、ROI(Return On Investment:投資対効果)は数年でなく数カ月で改善する」というのです。これまでの実績では、約60%のコスト削減効果が期待できるとしています。

inVia Roboticsが提供するロボットは、「inVia Picker」と「同Runner」の2種類があります。Pickerが棚から荷物を取り出し、その荷物をRunnerが受け取り出荷作業場所まで運びます(動画1)。2種類のロボットは「inVia Robotics Management Software」というソフトウェアが制御します。このソフトウェアは、できるだけ短い経路でロボットが移動できる経路を算出するためのアルゴリズムを搭載しています。

inVia Products Demo from inVia Robotics on Vimeo.
動画1:「inVia Picker」が荷物を取り出し、それを「inVia Runner」が受け取って運ぶ(1分5秒)

Picker/Runnerの利用料は、ロボット1台ごとに月額で課金されます。単価はロボットの種類やカスタマイズの有無によって変動します。カスタマイズするのは運搬用のカゴの大きさなどですが、これらは、導入する倉庫の構造や棚の形、業務の進め方などに応じて、inVia Roboticsが提供するコンサルティングによって調節します。

人間と協働するロボットを遠隔操作:スイスのABB

スイスのABBは、2本の腕を持つ小型ロボット「YuMi」にRaaSモデルを採り入れています。ABBは、独KUKAや日本のファナック、安川電機と並ぶ産業向けロボット大手です。大型工場に並ぶ産業向けロボットを多数、開発・販売していますが、YuMiは同社の他ロボットとは異なり「人間と協力して作業する」ために開発されました。

YuMiが想定している作業は、スマートフォンや、おもちゃ、時計など小型のコンシューマー向け製品です。小さな部品を扱うだけでなく、製品のライフサイクルが短く、ひんぱんに組み立て工程が変わる、つまり多品種少量が共通点です。そうした工程では従来、人手に頼ってきました。それを、部品を指定の位置に配置するなど人には退屈でミスを犯しやすい作業をYuMiが担当し、それ以外の作業を人が担当するという“協働”型に変えようというのです(動画2)。

動画2:2本の腕を持つ「YuMi」は、プラハにあるABBの工場でも利用されている(2分33秒)

そのためにYuMiでは、ロボットに動作を簡単に教え込むことができます。ロボットの腕を手で持って動かしながら、付属のタブレットをタップしていけば、ロボットは記録した動作を正確に繰り返します。より細かな動きをさせたければ、プログラミングにより秒単位で動きを制御できます。さらにYuMiの動きを遠隔監視するサービス「Connected Service」を使えば、ロボットの異常をABBのサポートセンターが検知し、同センターからの指示で障害を現場で速やかに解決できるとしています。

YuMiは日本国内では、オリックス・レンテックが提供しています。国内での利用料金は月額23万4000円(税別)からです。

クラウド連携のPepperもRaaS:ソフトバンクロボティクス

工場のロボット以外で身近なロボットといえば、最近はソフトバンクロボティクスが提供する「Pepper」を思い出す方も多いかもしれません。このPepperもRaaSで利用できます。企業向けサービス「Pepper for Biz」が、それです。

Pepper for Bizの利用料金は月額5万5000円(税別、以下同)。うち2万7500円がPepper本体のレンタル料ですが、残りの2万7500円は、Pepperを動作させるアプリケーションや遠隔監視、故障時の保守メンテナンスなどのサービス利用料金です。「ロボアプリマーケット for Biz」から、接客や受付といった業務アプリケーションをダウンロードして利用します(動画3)。Pepperはクラウドと連携して動作していますが、Pepper for Bizでは、顧客との会話データをクラウドで分析し集客効果を測定したり、その会話パターンを自社用にカスタマイズできます。

動画3:Pepper for Bizの基本アプリケーション「観光コンシェルジュ」の紹介ビデオ(1分25秒)

2019年までに商用サービスロボットの30%がRaaSに

IT関連の調査会社であるIDC Japanは、「2019年までに商用サービスロボットの30%がRaaSで提供される」としています(『世界ロボティクス関連市場 2017年以降の10大予測』、2017年2月)。そこでは「工場以外でのロボット導入が拡大する」ようです。

ロボットの価値が、それを制御するソフトウェアに移行するに伴いRaaSというビジネスモデルが登場しました。このRaaSによりロボットは、工場から飛び出し、様々な場面で利用されていくのでしょう。

執筆者:松尾 昌嗣(Digital Innovation Lab)、笹田 仁(ITジャーナリスト)

EVENTイベント