中国アパレルRed Collarが挑む完全オーダーメード、型紙のデジタル化で脱OEMを図る

2017.02.07
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青島ビールや沿岸リゾートで有名な中国・山東省の青島。近代的な製造業やハイテク産業の拠点でもあります。その青島に今、中国の大手IT企業のトップが引きも切らずに訪れているアパレルメーカーが存在します。紅領集団(Red Collar)です。同社はビッグデータとスマート工場等を駆使して完全なオーダーメードに対応しており、中国の商務部(日本の経済産業省に相当)の公式ページではEコマースのリファレンスとして紹介されています。一体、どんな仕組みなのでしょうか。

1000兆種類の組み合わせから選択、1週間で手元に

Red CollarのEコマースサイトでオーダーできるのは、3歳以上の男女を対象にしたスーツと、コート、シャツ、ベスト、ズボン。3万種類以上ある素材のほか、襟やポケットの形、ボタンの縫い付け方などが細かく選べ、その組み合わせでできるデザインの数は1000兆にも上ります。オーダーメードのサービスは「Magic Manufactory(魔幻工場)」ブランドで展開し、中国国内に展開する実店舗のほか、スマートフォンやタブレット用に提供されているアプリケーション「Cotte(酷特)」を使って24時間、どこからでもオーダーが出せます(図1)。

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図1:Red Collarのオーダー用スマホアプリ「Cotte(酷特)」の画面例

サイトに身体の19カ所22種類のサイズを登録すると、自分専用に用意されたWebページ上で自身の3D(3次元)モデルを確認できます。このモデルに、選択したデザインや色の衣装が着せ替えのように表示されます。ネット上の“試着室”で、質感や細部の作りなどを確認しながら“お気に入り”の一着を選べるというわけです。Red Collarは移動式の試着室も用意しています(写真1)。大型バスを改造した試着室には、身体のサイズを3Dで採寸する設備を搭載し、1秒で採寸します。この採寸設備には、ロケットに搭載されている測量技術を採用しているとのことです。

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写真1:大型バスを改造したRed Collarの移動式試着室。3Dでの採寸設備も搭載する(出所:中国Red Collar)

お気に入りの一着が決まれば、決済もオンラインで終了。Red Collarは顧客からの発注が確定してから縫製を始め、7営業日で完成させます(動画1)。結果、流通在庫は一切なく、卸や小売店に対するマージンや販売支援費なども発生しません。そのため同社の製品は、オーダーメードにもかかわらず安価だと好評を博しているようです。ここまでの過程で発生したデータはデータベースに登録され、次回の発注時に参照できます。

動画1:Red Collarの受注から出荷までの流れ

顧客データを直接製造ラインに流すC2Mの仕組みを実現

では、オーダーメードの衣料を7日間で完成させる工場側では、どのような仕組みで衣類を作っているのでしょうか。その根底にあるのは、3Dプリンティング(印刷)の考え方です。スーツやパンツといった衣類は一般に、襟やポケット、袖といったパーツごとの型紙を使って生地を切り出し、それを縫い合わせて一着の衣類に仕立て上げます。Red Collarでは、この型紙をデジタル化することで、生地の切り出しから縫製の指示まで工場内で発生する作業のすべてをデータに基づいて実行できるようにしているのです。

型紙のデータベースは、これまでに作成した数百万件のオーダーから構築。ここに人間の採寸データ(3D)と生地上に展開すべき型紙データ(2D)の対応関係を登録することで、あるデザインの服を作るのに必要な生地の消費量や縫製の順序、各パーツの作り方までも標準化しました。そこに顧客の採寸情報や選択されたデザイン、材料などの条件と設定すれば、顧客のオーダーは自動的に制作現場向けの指示データに変換されます。この指示データは、オーダーごとに用意するICカードに登録。生産ラインの縫製担当者が、そのICカードを自席の端末にかざすと、縫製作業に必要な情報がディスプレイに表示されるので、縫製担当者は、その表示に従って作業を進めれば良いというわけです。

この消費者と製造現場を結ぶC2M(Consumer to Manufacturing)のプラットフォームを実現したことで、Red Collarは1つの生産ライン当たり1日に3000種類の衣類を生産しています。同社によれば、この仕組みにより、製造コストはロット生産より10%ほど高くなるものの、利益は倍以上に伸び、全体としては生産効率や資産や資金の回転率も高まっています。

大量生産のOEMアパレル工場からの転身

デジタルビジネスの最先端を行くようなRed Collarですが、新進のベンチャー企業というわけではありません。同社の創業は1995年。OEM(相手先ブランドによる生産/ODM(相手先ブランドによる設計と生産)に向けた大ロットの受託型縫製工場としてスタートしました。ところが2000年ごろから、似通った製品が過剰に流通するようになってきたのです。そのままでは価格を叩き合うだけの“負のスパイラル”に陥ってしまうとの危機感から、Red Collarは2003年からオーダーメード衣料の生産へとシフトを始めます。数億元(数十億円)の資金と3000人のスタッフを抱える工場を元に試行錯誤した結果、2013年ごろに、ようやく現在のような、データで工場を駆動するという生産方式にメドが立ったとしています。

現在のRed Collarは、C2Mプラットフォームや移動式試着室などオーダーメードの仕組みの運営は別会社のKutesmart(青岛酷特智能股份有限公司)が運営しています(動画2、外部サイトの関連動画)。今後は、このオーダーメード受注の仕組みをオープンにし、衣料業界だけでなく他業界とも共有しようと考えています。世界中から受けた注文を、その仕様やロット数などから複数の生産拠点に割り振ることで、業界や企業をまたがって一体化されたC2Mモデルが実現できるとのヨミです。そのためなのか、2017年に入ってからはスマホアプリの名称である「Cotte」をオーダーメード事業全体のブランドとして全面に押し出すようにもなりました。

動画2:C2Mプラットフォームなどを運営するKutesmartの紹介ビデオ

日本にもRed Collar同様に、これまでの生産経験から大量の顧客情報や生産ノウハウ/パターンを保有している企業は少なくないはずです。そうした企業がデジタル化に取り組めば、Red Collarに勝るとも劣らない新たなビジネスモデルが確立できるかもしれません。Red Collarの取り組みは、それが決して不可能ではないことを示しています。

執筆者:丁 晟彦(Digital Innovation Lab)

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