宅配便の“ラストワンマイル”問題、不在時にも届けられる場所を探せ!

2017.12.14
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Eコマースの拡大で物流への負荷が高まっています。なかでも、地域の配送拠点から注文者の個人宅へ届ける“ラストワンマイル”が社会的な問題として急浮上してきました。受取手が不在だと、何度も訪問したり、あるいは訪問可能な日時を確定したりしなければならないからです。国内では、コンビニでの受け取りや宅配ボックスの設置といった配達方法に期待が高まっていますが、海外では、それら以外にも、さまざまな「不在時にも届けられる場所」が検討されているようです。

米Amazon、不在ならカギを開けて届けてしまう

Eコマースといえば米Amazon.com。国内では宅配大手が同社との契約を解消するなど、物流への負担を生み出している大元です。ですが、同社は自身でも物流網の構築に乗り出すなど、物流問題を放置しているわけではありません。

このほど米国の37都市でプライム会員向けに開始したサービス「Amazon Key(アマゾン・キー)」が、その1つ。スマートキーを使って、受取手が不在でも、その家の中に荷物を置いて帰るというもの。モノの配達だけでなく、不在中のペットの散歩や室内清掃の代行といったサービスも提供します(動画1)。ベビーシッターなど家族以外の第3者に依頼する習慣がある米国などでは、抵抗感も少なく便利なサービスとして受け入れられるのかもしれません。

動画1:不在時の宅配や清掃サービスなども提供する「Amazon Key」の紹介ビデオ(1分37秒)

Amazon Keyの利用者はまず、玄関に取り付けるスマートロックとセキュリティカメラ「Cloud Cam(Key Edition)」がセットになった「Amazon Key In-Home Kit」(約250ドル)か、Cloud Cam(Key Edition)と連携できるスマートロックを購入します。これらを自宅に設置したうえで、注文時に「FREE in-home delivery」を選択すれば、配達員は玄関の鍵を開け、家の中まで荷物を届けるというわけです。

不在時に見知らぬ誰かを家の中に入れるのは不安に感じます。Amazon Keyでは、スマートロックの解錠には、その時にだけ付与される暗号化された“カギ”を利用するほか、解錠するタイミングで注文者にプッシュ通知で到着を知らせ、配送の様子をカメラで撮影し、それをスマートフォンから確認できるようになっています。

同種のサービスは、米小売り大手のWalmartが生鮮食品を対象に、先行して実験しています。Amazon key同様に、利用者はスマートロックとセキュリティカメラを設置することで、生鮮食品を自宅の冷蔵庫にまで届けるというものです。

英百貨店のJohn Lewis、お届け先は愛車のトランク

自宅外の届け先として日本では、コンビニや宅配ボックスの利用が始まっていますが、愛車のトランクを宅配ボックス的に利用するサービスが英国で始まりました。百貨店をチェーン展開するJohn Lewis(ジョン・ルイス)が、英自動車メーカーのジャガー・ランドローバー傘下のベンチャーキャピタルInMotion Venturesと提携して提供します。

John Lewisのサービスを実現可能にしているのは、自動車に設置する「toBoot」と呼ぶデバイスです。InMotionが出資するスタートアップ企業のtoBootが開発しました。最新式ではないクルマにも後付けでき、スマートフォンアプリケーションを使ったカギの開け閉めや、GPS(全地球測位システム)を使ったクルマの位置の把握などを可能にします。toBoot自身は、駐車中に社内清掃やメンテナンスを実施するサービスを提供しています。

このtoBootの仕組みを使ってJohn Lewisは、受注した商品をクルマのトランクに届けます。配達担当者には、クルマの駐車位置までのナビゲーション情報や、カギを開けるためのコードなどを提供。一方の注文者は、配送状況をリアルタイムに追跡できるほか、配達完了時にはトランクに荷物を入れた場面とトランクを閉めた場面を撮影した画像がスマホに送られてきます(動画2)。

動画2:「toBoot」を使った車のトランクへの配送の仕組みを紹介するビデオ(1分42秒)

クルマのトランクを配送先にする試みは、Amazonもドイツの自動車メーカーAudiと宅配事業者のDHL Parcleと組んで、ミュンヘンで2015年に試験運用が実施されています。DHLの配達担当者がスマホアプリを使って、届け先のクルマの正確な駐車場所を確認したり、トランクのカギを開けるのは同様ですが、このときは、配達員が近づくとトランクのカギは解除され、配送が済むとカギは自動的にロックされる仕組みも採用していました。

いずれのケースもクルマ社会であり、駐車場所がオープンスペースにあるなど、日本ではなかなか望めない条件かもしれませんが、Eコマースの利用者の近くにあるカギの掛かる空間を探すというアプローチは参考になるかもしれません。

宅配問題だけの解決にとどまる必要はない

国土交通省が2015年に発表した『宅配の再配達の発生による社会的損失の試算』によれば、受取人の不在などによる再配達にかかる労働負荷は年間9万人の労働力に相当します。再配達によって年間42万トン近いCO2(二酸化炭素)が排出されています。宅配事業者やEコマース会社にとって、再配達の削減は大きな経営課題です。

こうした課題の解決に向けて、今回紹介したスマートロックのような仕組みだけでなく、ドローンやロボット、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったデジタルテクノロジーを活用しようという動きは、さらに高まることでしょう。

今回紹介した、家の中やトランクへの配達は、先にも指摘したように、それぞれの生活習慣や慣習、安心・安全の考え方などによって、受け止め方は違うかもしれません。ただ、いずれもが「宅配」だけにとどまらず、掃除やメンテナンスといった他の関連サービスを提供しようとしている点は、見逃せない視点ではないでしょうか。

執筆者:小川 貴史/岸 亮太郎(Digital Innovation Lab)、高橋ちさ(ジャーナリスト)

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