ロボット・AIの「夢と現実」 今を見据えて、未来に繋げるために

2015.12.02
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最近、ロボットや人工知能(AI)のニュースが新聞やテレビなどを賑わしている。たとえばソフトバンクが発売した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」、あるいは最先端AIとして知られる「Deep Learning(ディープラーニング)」や、質疑応答に特化したIBM「Watson(ワトソン)」などだ。
しかし人型ロボットでは、以前からホンダ「ASIMO(アシモ)」などが有名だし、そもそもAIは半世紀以上も前から既にあるテクノロジーだ。では、なぜ今改めて、これらが注目されているのだろうか? また、専門家から見て、将来的にどこまで発達するのだろうか? ロボットやAIに詳しいKDDI総研の小林雅一さんに伺った。

なぜ今、人型ロボットへの期待が高まるのか

子どもの頃に、SF映画やマンガで夢を膨らませた未来の世界。そこに登場するロボットやAIは、私達の憧れや恐怖の対象であると同時に、ともすれば期待と現実との落差が激しい分野でもある。そんなロボットやAIが今、史上3度目のブームを迎えているという。『AIの衝撃 人工知能は人類の敵か』(講談社現代新書)などの著書があるKDDI総研の小林雅一さんは、現在のロボット・AIブームについて、こう話す。

「これまでロボットと言えば、主に産業用ロボットのことを指しました。たとえば自動車や家電製品などの製造工場で、溶接や塗装など定型作業を行うロボットがそうです。しかし最近、注目されているのは『サービス・ロボット』と呼ばれる新種のロボットです。これは、たとえば家で食器を洗うとか、洗濯物を畳むといった家事をしてくれるロボット、あるいは病院などで、患者や高齢者の介護のような各種サービスに従事するロボットです」

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それらのサービス・ロボットは、その多くが、まだ商品化されていない。それなのに、どうして近年話題に上ることが多いのだろうか?

「一つの理由として、社会の構造的な変化があります。特に日本のような先進国では高齢化が進むと共に、看護・介護師の方たちが不足して、彼らへの負担が増しています。また昔のように家事を専業主婦が行うということも少なくなりました。ですから、高齢者の介護や家事などをしてくれるサービス・ロボットに関心が集まっているのです。
また、それとは別の要因もあります。3.11の福島第一原発の事故をきっかけに、放射能が充満して、人が入れなくなった場所でも作業できる災害対策ロボット(サービス・ロボットの一種)への期待が高まりました。これを受け、アメリカの国防高等研究計画局(DARPA)が、原発事故現場での作業を想定したロボット競技会を開催したのです。2013年に開催された予選競技会では、『シャフト』という東大発のベンチャー企業が首位で通過しました。その直前に、この会社がGoogleに買収されたことも相まって、この種の新型ロボットへの関心が一気に高まったのです」

確かに高齢化が進む、これからの社会にはサービス・ロボットが欠かせない。また原子力発電所は、人がメンテナンスすることを想定して作られているため、ロボットもヒト型の「ヒューマノイド」であるほうが作業し易いはずだ。

サービス・ロボットの実力と将来性

DARPAが主催したロボットの競技会は、「原発建屋のドアを開ける」、「瓦礫(がれき)を除去する」「梯子を上る」など8種目を競うもの。これまでに予選と本選の2回が開催されているが、どれくらいのレベルなのだろうか?

「まず2013年の予選では、折角競技に参戦しても、途中で立ち止まったまま動かなくなるロボットが続出するなど、散々な結果でした。それから1年半を経て、本戦が2015年6月に開催されましたが、劇的な進化があったとは言い難いように思います。
たとえば、予選ではロボットの背中に命綱をつけ、人間が支えることが許されていましたが、本選ではこれを取り払ったため、二足歩行ができずに途中で転倒してしまうロボットが続出しました。優勝したのは韓国のロボットですが、それはちょっとした工夫が功を奏したからです。つまりロボットが移動する際には跪(ひざまず)いて、膝と踵(かかと)から車輪を出すことによって、ちょうど四輪車のような形で進むようにしたのです。これだと二足歩行しなくて済むので、転倒する心配がありません。
別の見方をすれば、『ロボットに臨機応変の判断力や対応力を備えたAIを搭載することによって、転倒しないようにする』といった、ハイレベルの技術革新があったわけではないのです。また、優勝した韓国のロボットですら、私達人間なら10分足らずで終わってしまう8種類の競技を、40分以上もかけて漸くクリアするなど、動きの遅さは相変わらずでした」

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「いえ、そうではありません。いずれ、それらの新型ロボットが私達の社会で重要な役割を果たすことは、まず間違いないでしょう。ただし、その実用化には、相応の時間がかかるということです。最近、話題に上る『高度なAIを搭載したロボットが人間の仕事を次々と奪う』といった事態は、当面、心配する必要はないでしょう。
ですが、一方で部屋の掃除をしてくれるロボットは既に製品化されていますし、地震や洪水など被災地の上空から被害状況を撮影するドローンなども既に実用化されています。このように、限定的なサービスを行うロボットは、今後、徐々に社会へと広がっていくでしょう」

人々の生活が便利になるように、単純な作業をするロボットなら確かにニーズはあるだろう。一方で、SF小説に登場するような、自らの意志を持ったり、人と自由に話したりするようなスーパー・ロボットを実現するには、AIテクノロジーの進歩が必須だ。今のロボットには、どの程度のAIが搭載されているのだろうか?

「AIの定義として、どこまでを指すのかは意見の分かれるところです。仮にビデオ・カメラで撮影した外界映像をおおまかに認識する程度の能力でもAIと呼ぶなら、その程度の技術はDARPAのロボット競技会に出場したヒューマノイド達にも搭載されています。しかし逆に意志を持って、自由に人と会話できるほど高度なAIを搭載したロボットは今のところ存在しないし、将来的にも、そう易々と実現されるとは思いません」

確かに外界を認識するお掃除ロボットや自動運転車など、ロボットに搭載されたAIテクノロジーは、ここ数年で私たちの身の回りに続々と活用され始めている。

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