“起業しやすい国”と注目されるルワンダ、ベンチャー企業が発展途上国の社会課題を解決

2017.10.19
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ベンチャー企業と言えば、米シリコンバレー。あるいはイスラエルや中国といった国々を思い浮かべる読者もいるかもしれません。そうした中で「今、最も企業しやすい国」と注目されているのが、アフリカのルワンダ共和国。同国内ではベンチャー企業が次々と生まれているといいます。どのような企業が、どのようなビジネスを手がけているのでしょうか。

ルワンダは「ICTの活用促進に最も成功した政府」

ルワンダは1962年に独立したアフリカ中部にある小国です。国土面積は2万6338平方キロメートルで、日本の中国地方(3万1922平方キロメートル)よりも一回り小さいくらいだと言えます。1990年台までは内戦や虐殺で疲弊していた国ですが、“アフリカの奇跡”と呼ばれるほどに急激な経済成長を遂げています。

そのルワンダは2000年、2020年に向けた成長戦略「VISION2020」を策定し「IT立国」を宣言しました。そこでは、小学校でのインターネット環境の整備や、「国民の50%以上をインターネットユーザーにする」といった数値目標も掲げています。ダボス会議などで知られる世界経済フォーラムが発表した『グローバル・インフォメーション・テクノロジー・レポート2015』において、ルワンダは、「ICTの活用促進に最も成功した政府」に選出されています。

IT立国を果たすための施策の1つにベンチャー企業への優遇策があります。インフラ整備のほか、国外からも人や資源を呼び込み、ベンチャー企業の活力を借りながら、国の経済成長を加速しようというわけです。どんなベンチャー企業が台頭しているか。代表例を紹介しましょう。

オートバイ版“Uber”を手がけるSafeMotos

破壊的サービスの代名詞にもなった米国発のタクシー配車サービス「Uber」。そのバイク版とも言えるサービスを提供するのがSafeMotosです。利用者はスマートフォン用アプリを使ってバイクを呼び出せ、乗車距離に応じた料金は、現金のほか電子マネーやクレジットカードと連携した「SafeMotosウォレット」から支払います。

動画1:SafeMotosのサービスの紹介ビデオ(40秒)

さらにSafeMotosでは、オートバイに装着したスマートフォンを使って、加速度や最高速度、ブレーキ操作などの情報を取得しています。そのデータを分析することで、ドライバーの安全運転度合いを評価することで、ドライバーの質的向上を図り、より良い乗車体験につなげようとしています。

ルワンダのタクシーは、自動車よりもオートバイが中心です。ただ、運転技術やモラルは決して高いとは言えないようです。アフリカでは死因のトップはHIVですが、それに次ぐのが交通事故死です。ルワンダも例外ではなく、国内の交通事故の80%がタクシーモトによると言います。

国際協力機構(JICA)が2014年に発行した「ルワンダ短期滞在者の手引き」は、「運転手の技術とモラルは低く、道路の整備状況も悪く、交通事故が増えている。オートバイタクシー(タクシーモトと呼ばれている)の利用は禁止している」とあります。

こうした社会課題を解決するためにSafeMotosはデータ分析のほか、ヘルメットを被ることを推奨するといった活動を展開しているのです。SaMotosのYouTube動画では、運転者も同乗者もヘルメットを着用し、安全に運転している様子がみられます。

ドローンを用いて衣料品や輸血用血液を運ぶZipline

Ziplineはカリフォルニアを拠点とするドローンを医療分野に活用しようとしているベンチャー企業です。そのZiplineが世界初となる同社の輸血用血液の配送サービスを最初に投入したのがルワンダです。

ルワンダでは、妊婦の死因の第1位は出産後の出血です。ところが発展途上国にあっては、道路といった社会インフラやサプライチェーンは、まだまだ整備が十分ではありません。雨期には道路が洗い流されることもあります。輸血用血液の配送においても、適切な温度管理が求められるにもかかわらず輸血ができる診療所へ速やかに運ぶことは難しい状態でした。

Ziplineの配送サービスでは、ルワンダ西部に点在する輸血ができる診療所から携帯電話のテキストメッセージを受信すると、ドローンに輸血用血液を搭載し、配送します。Ziplineが採用しているドローンは一般の飛行機のような固定翼型で、天候にかかわらず1.5キログラムの血液を搭載し往復150キロメートルの距離を飛行できます。

動画2:ルワンダでのドローン配送を紹介するビデオ(1分37秒)

創業者兼CEOのケラー・リナウド氏がWebメディア『Wired』のインタビューで次のように答えています。

「ルワンダを選んだ最大の理由は、政府がヘルスケアをはじめとするすべての新しい挑戦に協力的だということ。この小さな丘だらけでインフラの整っていない国では、ドローンは従来のように道路を使うより10倍も速い時間でものを届けられる。少数の配送センターでも、国の広い地域をカバーできる」

ルワンダはこのドローンを利用した血液の配送サービスを早々にルワンダ東部にまで拡大する計画です。

公共交通機関向け電子決済システムを展開するAC Group

AC Groupは、公共交通機関を対象に非接触型電子決済システムを提供すベンチャー企業です。ルワンダの首都キガリの市内を走るバスに「Tap & Go」という電子決済システムを導入しました。その利用者数はすでに40万人を超えているといいます。

動画3:首都キガリに導入された「Tap&Go」の紹介ビデオ(3分24秒)

ルワンダのバス運転手は、現金による乗車料金の徴収に苦労していました。結果、本来得るべき収入の30%を損失しているとまで言われています。そこに「Tap&Go」を利用することで、効率化と正しい決済処理ができるようになりました。

AC Groupは現在、ルワンダ以外の国、あるいは交通機関以外に向けて少額決済サービスの展開を進めています。同社には日本のDMMグループが出資しています。DMMはルワンダに子会社DMM.Africaも設立しています。

SafeMotosやAC Groupはコワーキングスペース生まれ

ルワンダの日本大使館前に立つビルには、コワーキングスペース「KLab」があります。SafeMotosやAC Groupも、このKLabから生まれました。スタートアップを支援する“場”も存在するというわけです。

VISION2020で“IT立国”を宣言したルワンダでは、人口増を背景に、インフラ整備やIT活用が急ピッチで進み、スマートシティ化に向けて動き出しています。その過程では、Ziplineのドローン配送を可能にしたような規制緩和もスピーディーに進められていると言います。

テクノロジーを使って新たなサービスを立ち上げようとすれば、規制のカベは低いにこしたことはありません。Ziplineのように、規制が低い国に市場を求め、実績を作っていくという発想も必要かもしれません。

執筆者:高橋 俊一(Digital Innovation Lab)、奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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