警備業界最大手のセコムが取り組む医療・ヘルスケア事業、共通点は“安心”と何?

2017.11.16
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セキュリティ業界最大手のセコムが、2030年に向けたビジョンとして掲げるのが「あんしんプラットフォーム」構想。警備の“安心”に加え、健康の“安心”を目指し、医療や介護、ヘルスケアに関するサービスを展開していく考えです。デジタルテクノロジーを活用するサービス事業において、セコムは、どんな強みを持っているのでしょうか。

1980年代から医療関連サービスを開始

セコムの医療・ヘルスケア領域への取り組みについて、セコムの常務取締役で広報・渉外・マーケティング本部長であり、セコム医療システムの取締役会長でもある布施 達朗 氏から聞く機会がありました(写真1)。東京で2017年10月12日に開かれた「ITPro Expo 2017」での「超高齢社会に向けたセコムグループの取り組み -現状と今後の展開-」と題した講演がそれです。布施氏の講演から、セコムの取り組みを紹介します。


写真1:セコムの常務取締役で広報・渉外・マーケティング本部長であり、セコム医療システムの取締役会長でもある布施 達朗 氏

実は、セコムが医療関連サービスを始めたのは1980年代のこと。1982年、オプションサービスとして開始した救急通報システム「マイドクター」が、それです。民間による救急患者の搬送サービスで、当時としては珍しかったものの、「最近になって再び脚光を浴びつつある」と、布施氏は当時を振り返ります。

マイドクターの発想は、「顧客の命を守り、安心で快適な暮らしをしていただきたい」(布施氏)というところから始まりました。警備事業において外敵から人を守るだけでなく、健康に暮らすために内面からも人を守ろうというわけです。

1988年には医療事業へ参入します。米国最大の病院経営会社の救急医療部門と、在宅ヘルスケアサービス会社を買収したのです。その後も、調剤薬局の開設や、24時間受け付ける健康相談サービスなどを開始。1994年には日本初の遠隔画像診断支援サービス「ホスピネット」を始め、2001年からは電子カルテサービスも開始しています。

ホスピネットや電子カルテは現在、2002年に誕生したグループ企業のセコム医療システムが提供しています。電子カルテは開始当初からカルテ情報をセコムのデータセンターで管理する仕組みを採っており、「2011年の東日本大震災時にも情報は失われなかった」(布施氏)と言います。

住み慣れた場所で暮らし続けるためのモデルケースを推進

介護分野にも早くから着手したセコムは今、東京・世田谷区近辺に地域連携のモデルケース作りを進めています。住み慣れた地域で暮らし続けられるようにするのが目的です。

世田谷・千歳烏山にある「セコムカレア千歳烏山」が、そのモデル拠点。訪問介護から通所介護、介護予防および健康支援サービスまでをワンストップ型でのサービス提供するほか、隣の杉並区久我山にある「セコム在宅総合ケアセンター」からリハビリテーションに対応した訪問介護や在宅での介護支援を提供します。布施氏は、「こうしたサービスを各地で展開し、安心・安全な社会の実現に貢献したい」と話します。

地域連携システムとしては、患者の紹介元だけでなく紹介先からも電子カルテに書き込める「セコムLINKus」も提供しています(写真2)。


写真2:地域連携システムを支える「セコムLINKus」

既存サービスにデジタル採り入れサービスを強化

最近は、緊急通報などに最新のデジタル技術を採り入れることにも力を入れています。その1例が、緊急通報にGPS(全地球測位システム)機能を組み合わせた「マイドクタープラス」です。

マイドクタープラスは、セコムの「ホームセキュリティ」において、一人暮らしの高齢者などを対象にしたサービスです。具合が悪くなった際に、携帯電話がベースの専用端末に備わる救急用ストラップを引くだけで、救急通報が発せられ、状況に応じてセコムの担当者が駆けつけたり専門の介護事業者に連絡したり、あるいは119番に連絡します。GPSにより、利用者の居場所が特定できるため、ストラップを引っ張るだけで済むわけです。

セコムの情報センターは、利用者の、かかりつけ担当医などの情報を預かっています。救急スタッフが現場にたどり着くまでに、サービス利用者の医療に関する情報をスタッフに提供することで、救護活動がいち早く実施できるようにもなっています。

オプションですが、緊急時に自動で発信するウェアラブル端末「セコム・マイドクターウォッチ」も提供しています。突如意識を失った場合や身体を動かせなくなった場合などに、それを自動で検出しセコムに救急通報します。通報すらできない最悪の状態でも、ウェアラブル端末が検知し通報できる仕組みです。

さらに研究中のサービスとして、布施氏は次の2つを挙げます。1つは、遠隔画像診断サービスのホスピネット(写真3)。機械学習により診断精度を高める研究に取り組んでいます。現在は、最も予知・予防ができそうな領域として、心不全を対象とした予知を研究しています。


写真3:遠隔地からの画像診断サービス「ホスピネット」では、機械学習を採り入れ心不全の予知を研究中

もう1つは、訪問看護サービス分野です。モバイル端末を活用し、訪問記録の入力を容易にして看護師の負荷を軽減するほか、看護ステーションや医師とも情報共有を図り、緊急時の対処方法を指示することで現場が対応できる範囲を拡げたい考えです。

安心と、もう1つの共通点はネットワーク基盤

「安心」を出発点に、医療から介護、ヘルスケアまでに取り組むセコムですが、これらサービスの共通点は、ネットワーク基盤を活用していることです。警備システムでも重要な基盤であるネットワークは現在、グループ会社のセコムトラストシステムズが一手に担っています。

警備事業で培ったネットワーク基盤を、医療や介護、ヘルスケアのサービスに活用している姿は、ある意味、米Amazon.comに近いのかもしれません。本のインターネット販売からスタートしたAmazonは、その仕組みを使って今や、食品や薬を含め、あらゆる物を販売する巨大流通業になりました。

企業が顧客ニーズに応えながら事業領域を拡張させていくためには、セコムやAmazonが持つコアな共通基盤が重要な役割を果たすということなのでしょう。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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