福島・磐梯でIoTとセキュリティのハッカソン、IoT × Security Hackathon 2016から(第1日目)

2016.04.13
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「つながるものをすべてHackせよ」−−。こうしたコンセプトのもと、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とセキュリティに重点を置いたハッカソン「IoT × Security Hackathon 2016」(主催:Eyes, JAPAN)が、福島県磐梯町にある星野リゾートアルツ磐梯スキー場で2016年3月26日から27日にかけて開催されました。どんな人たちが、どんな期待を持って参加したのかを含め、同ハッカソンの模様を現地からお伝えします。今回は、初日の内容をご紹介します。

医療から防災・減災にまでハッカソンの対象を拡大

本ハッカソンが開かれるのは今回で5回目。昨年は「Medical × Security Hackathon2015~医療に革命を起こそう~」として開かれ50人強が参加しました。今回は60人強の人たちが福島に集まりました。中には家族同伴という参加者もおり、これは「福島でイベントを開くことで、参加者が次にはプライベートでも来てくれることを期待する」という主催者側の狙いにも合致する動きです。リゾート地での“おもてなし”を受けながら合宿のようなハッカソンというスタイルも参加者には魅力なのかもしれません。

2016年のテーマは、医療中心は変わりませんが、防災・減災にも対象を広げようと「IoT×Security」になりました。医療や防災・減災のためのアプリケーションやサービスを創出・提案する「アプリ・サービス部門」と、IoT機器やソフトウェアの脆弱性調査・侵入テストを行う「セキュリティ部門」の2部門が設けられ、それぞれの優勝チームには賞金10万円が授与されます。

ハッカソン競技への実質的な参加者は30人程度で、3分の2がアプリ・サービス部門へ、残り3分の1がセキュリティ部門へのエントリーです。社会人の割合がやや高く、またセキュリティ部門はさすがにエンジニア中心です。エンジニアではありませんが「医療IT分野への進出を目指しておりエンジニアの方と知り合いたい」という動機からの参加者もいました。

暖冬だったこともあり、3月末の磐梯は、さほど寒くありません。磐梯山は頂上に雲の帽子を被り、スキー場は芝生と雪面が見えている状態。東京から参加者を乗せたチャーターバスの到着が遅れるというトラブルはありましたが、予定より少し遅れた正午前に、ハッカソンは講演とトークセッションで開幕しました。

基調講演はGoogleハングアウトを使って海外から

最初の講演は、Googleハングアウト(テキストチャット)を使って行われました。東京のバイオベンチャーであるTupac BioのCEO(最高経営責任者)Eli Lyons氏と、同社CTO(最高技術責任者)Georg Tremmel氏が「Impact and Potential of Synthetic Biology and biohacking」(合成生物学とバイオハッキングの衝撃と可能性)と題して話しました。参加者はTwitterを使って質問し、それにハングアウトとTwitter上で回答するという形です。物理的な距離を超えての最新情報の講義になりました(写真1)。

写真1:Googleハングアウトを使った、バイオベンチャーTupac Bioによる遠隔講演
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次に産業技術総合研究所 健康工学研究部門 副研究部門長 セラノスティックデバイス研究グループ長の鎮西 清行氏が登壇。「医療におけるデータ、法律、安全~アルゴリズムの不気味の谷を超えて~」と題して講演しました。情報処理技術が医療と融合することが、将来の医療技術の進歩やコストダウン、稀少疾病対策に好影響を与える一方で、新たな課題のクリアが大切であることを示唆しました。

例えば、優秀な医師による医療行為の手さばきを記録し、それを元にロボットが何かしらの医療行為を実施できるようになったとします。その医療行為によって何らかの問題が発生したとき、どのような問題が起こるのか、誰が責任を取るのか。医療行為の自動化に対し、法律の観点からは多くの課題があることが分かります。

同講演の一部としてトークセッションも開かれました。登壇者は、鎮西氏に、笹原 英司氏(医薬学博士・特定非営利活動法人ヘルスケアクラウド研究会 理事)ほか、高橋 郁夫氏(ITリサーチ・アート、駒沢総合法律事務所 所長)、江渡 浩一郎氏(産業技術総合研究所主任研究員)を加えた4人です(写真2)。

写真2:トークセッションの登壇者。左から2人目が産総研の鎮西 清行 セラノスティックデバイス研究グループ長
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トークセッションでは、医療にIoTの「T:Things=もの」が関係すると安全性の大切さが大きくなることが様々な事例を通して語られました。具体的には、オランダの尊厳死に関する法律、片方の足を3Dスキャンして3Dプリンターで義足を作る事例などです。ですが登壇者らは、「失敗を恐れないでほしい」「セキュリティを逆手に取ったイノベーションを」「未来に向けてぶっとんだアイデアを」といったエールを本ハッカソンの参加者に送りました。

徹夜も可能なリゾートホテルというハッキング会場

昼食を挟んでの14時ごろから、いよいよハッカソン競技の開始です。主催者であるEyes, JAPANの山寺 純代表取締役が「徹夜でできますので、好きなだけハックしてください!」と挨拶するように、翌日の12時ごろまで丸1日を使って課題解決に向けたアプリケーション開発がスタートしました。

アプリ・サービス部門では、アイデアをハッカソンに持ち込んだ参加者がプレゼンするアイデアピッチをまず実施します。その内容に賛同する他の参加者たちが、その場でチームを結成し、成果物を作り上げていきます。話し合いの過程で、成果物となるアプリケーションやWebサービスなどは、当初のアイデアとは全く異なる場合もあります。それだけに序盤は、チームの意思統一を図るために多くの時間が取られていました(写真3)。

写真3:アイデアに賛同した参加者が集まってできたチームでは、アイデアの具体的な落とし込みに向けた議論が進む
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一方のセキュリティ部門では、あらかじめ用意された医療ソフトウェアやサービスのセキュリティに対し、参加者が脆弱性を調査したり侵入テストなどを実施したりします。過去、本イベントのセキュリティ部門では、重大な脆弱性が発見されるなどの実績も上げています。

参加者全員が参加してのブリーフィングでルールなどの説明を受けた後、主催者が準備した対象ソフトウェアを同梱した仮想環境一式を参加者が持参したPCにインストール。その環境でソフトウェアへの攻撃や、脆弱性調査を実施し、結果をプレゼンテーションします。1人で課題に挑む参加者もいましたが、最初からチームを組んでの参加が多いのがセキュリティ部門の特徴です。そのためチーム作りや意思統一の時間はさほど必要なく、競技開始直後から作業に集中していました。

地元食材が並ぶ懇親会で親交を深めた後も開発は続く

競技開始から約7時間が経った19時からは、夕食を兼ねた懇親会が開かれました。Eyes, JAPANの代表取締役である山寺 純氏の乾杯で始まった懇親会では、競技の打ち合わせを続けるチームもあれば、他のチームメンバーと文字通り懇親を深める参加者もいました。豪華な食事と福島県内でも滅多に手に入らない日本酒に、参加者はみな舌鼓を打って大満足です。しかし懇親会も一段落した21時頃には、参加者は次々とハッカソンのメイン会場に戻り、開発作業を続けていました(写真4)。

写真4:懇親会が終了した21時頃から再び開発に向けた議論が続く
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部屋に戻ろうとする姿もほとんどないままに、IoT × Security Hackathon 2016の第1日目の夜が更けていきました。第2日目の様子は別稿でお伝えします。

執筆者:奥野 大児(ライター/ブロガー、https://twitter.com/odaiji

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